
IASOクラウドサービスとは

そもそも「IASO」とは、試薬※の在庫や使用履歴を管理するための「薬品管理支援システム」です。試薬瓶ごとに割り当てたバーコードを読み取ることで、在庫や持ち出し日時を登録したり、必要な情報を端末画面に表示したりすることができます。
1999年の発売以来IASOの利用者推計数は100万人を越えました。今まで一般的な導入の仕方は「オンプレミス」(サーバーやソフトウェアなどを自社で保有し運用すること)でしたが、IASOクラウドサービスは、クラウドを用いて、サブスクリプションプラン、いわゆる月額制のサービスにしています。
ユーザーは導入時に新たにサーバーを買う必要はありません。しかも、月額制ですので、初期費用も最小限に抑えられます。インターネットが利用可能な端末さえあれば、すぐに始められます。
※試薬…実験や研究、検査分析などに用いる高純度の化学薬品。毒性や危険性が高いものもあり、厳格な管理が求められる。
IASO開発のきっかけ
1997年頃「自社の棚卸業務を効率化したい」という目的と、当時の東北電力の経営管理部から新規事業の可能性について検討依頼があったことがスタートです。弊社は火力・原子力発電所構内で分析業務を行っていて、そこで試薬を使います。すると、当然保有量や使用履歴を管理しなければなりません。危険度に応じて定期的な棚卸をしていたのですが、手作業のため多大な労力を要していました。「どうにかしたい、何とか効率化したい」という声が上がり、システムを内製することとなったのです。運用開始後、外部より「このシステムいいね。ぜひ販売してほしい」という声もかかって、1999年に商品化に至ったのがIASOでした。
ただ、当時は「薬品管理システム」といっても「それは何?」という状態です。安いものだと数百円の試薬を管理するために、数百万円のシステムが必要ですか?と言われてしまう。いざ売り込む時には、まず「在庫管理のためだけでなく、化学物質を取り扱う組織として自主管理が求められる」という啓発活動が必要でした。困難が予想されましたが、当時は地下鉄サリン事件や和歌山毒物カレー事件、海外では工場からの薬害問題など、国内外で化学物質が社会的に取り上げられていた時期でIASOの普及に追い風が吹いていました。

より多くの人に、便利に使ってもらえるサービスになるために
ネットワークを介してIASOが使えるということは、当然利用規模が拡大しますから、同時にいろんな人がアクセスしても耐えられるように設計を変更する必要がありました。また、マルチOSへの対応や試薬メーカーごとに異なるデータベース(カタログ)の搭載も不可欠です。
従来のIASOで初期搭載していたのは、特定の試薬メーカー(IASO販売代理店)のカタログのみでした。しかし、現場のユーザーはそれ以外の試薬も使いますから、当然、扱っていない他のメーカーのカタログを入れて欲しいという要望が出てきます。著作権の関係で利用許諾を逐一取得する必要があり、他社カタログの追加は有償オプションとしていました。IASOクラウドサービスの開発にあたっては、サービス利用者は個別の許諾不要として、より手軽に使っていただけるよう、いくつかの国内大手メーカーと交渉しました。苦労の甲斐あって、IASOクラウドサービスでは他社のカタログも追加して標準装備されています。さらに、試薬管理に欠かせない法規情報のデータベースも、従来はオプションとなっていたものを標準搭載して、利便性を高めました。社内のプロジェクトメンバーは3人です。大変なことも多いですが、少ない人数ということを逆に活かして、かなり緻密に連携できていたと思います。

IASOクラウドサービスにかける思い
とにかく手軽に使えるサービスにしたいという想いをもって、開発に携わってきました。手軽にというのは、①初期費用が極めて小さく済む②システム更新の手間がかからない③従来版以上の情報量 といったメリットを持たせながら、導入のハードルを下げるということです。IASOは同様のサービスで国内ユーザー数1位を獲得していますので、入ってくる声がとても多く、そうしたユーザーのフィードバックを得て、改良されてきた歴史があります。お客さまの声に「より、そう」システムとなるよう、これからも更なる改良を続けていきたいです。
2021年9月の本格的な販売開始に伴い記者会見も実施しましたが、外資系の大手製薬メーカーさんや大手鉱山会社さん、公的機関でいえばJAXA相模原さんなどに、早速ご利用頂いております。そのほかにも、弊社や販売代理店に問い合わせがあり、件数は例年平均の4倍ほどになっています。一言でいうと、順調です(笑)。

記者会見の様子
今、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がありますが、例えばIASOを大学のキャンパス情報、地図情報と連動させることで、危険物がどの研究室のどの棚にどれくらいあるかを視覚的に分かりやすく表示することができます。大学さんや製薬メーカーさんからIASOを色々な基幹システムと連動させたいという話が来ていますし、私たちもそうしたビックデータを活用できないかと考えています。

IASOの画面イメージ(薬品の入庫登録画面)
今後の展開に向けて
更なる普及に向けて、大きく4つのことを考えています。
1つ目はWebやSNSの活用です。今年4月にwebサイトを刷新しますが、まずはユーザーポータルサイトを作って、システムの使い方や疑問解決、あるいはフィードバックを得られる仕組みを作る予定です。また、SNSも活用して試薬の取り扱い方やIASO活用術などの情報発信をしていきたいと考えています。
2つ目がNTTコミュニケーションズとの協業強化です。クラウド版はNTTコミュニケーションズのデータサーバーを使っているのですが、今後はハード面に加えて、営業的にもご協力いただくなど、より積極的に協議を進めていきたいです。
3つ目はとにかくユーザー数を増やすことです。オンプレミスならば、現地に赴いて1台1台インストールしてセットする必要がありますが、クラウドですと、お申込みいただきIDさえ用意すれば、お互い少ない労力と時間ですぐに使うことができます。この最大のメリットをもっと訴求して、ユーザー数の拡大を目指します。
4つ目は海外展開です。今後は海外でもこのシステムを使っていただけるよう、情報発信の強化・英語化やNTTコミュニケーションズとの連携を強化したり、既存ユーザーに対して「御社の国外拠点で使っていただけませんか?」という打診をしたりしています。
「よりそうnext」の実現に向けて
クラウドという仕組み自体が、より少ない労力や資源を使って、広くサービスを提供できるという点で「よりそうnext」にも掲げるスマート社会に寄与できるかなと思っています。
最初にお話しましたが、大きな定義としては、試薬は化学物質です。様々な製品に使われていて、かなり身近な素材なのですが、ちょっと怖いイメージを持たれる方も多いかもしれません。でも「こういうシステムを入れてきちんと管理しています」という体制があまねく構築されれば、安心に繋がりますよね。例えば東京工業大学のキャンパスは、東京の住宅街の中にあります。化学薬品に関わる事件などがあると、地域社会の人たちから「お宅の大学でも危ないものをいっぱい持っているんじゃないの?」という問い合わせが来るそうです。そんな時、IASOは大学から地域に向けて、安心を伝えるコミュニケーションツールとしても活用されています。弊社も掲げているSDGsに対しても、化学物質対策や大気汚染、水管環境対策の側面から貢献できると考えています。
私自身の今後の目標は、次世代のシステム開発と海外展開です。今のIASOは7代目ですが、これから数年以内に8代目の開発に携わるはずです。その時、クラウドが当たり前になっていけば、より海外展開もしやすくなると期待しています。