知っとこ 託送料金制度改革 第1回
~総括原価方式からレベニューキャップ制度へ~

2023年4月からスタートする新しい託送料金制度「レベニューキャップ制度」をシリーズで解説していきます。 今回は「なぜ託送料金制度改革が行われるのか」についてです。

動画で解説! 「なぜ託送料金制度を改革するの?」

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電力システム改革のおさらい

 本題に入る前にまずはおさらいです。

 電力システム改革によって、2016年4月、電力の小売りは全面自由化しました。一方、送配電事業は多様な発電事業からの電気を受け入れ、全ての事業者が送配電網を共同利用することから、これまでの「地域独占」と、送配電網の利用料金である託送料金には「総括原価方式による料金規制」が維持されることになりました。

地域独占の意義と料金規制の必要性

 送配電事業は、膨大な電力設備を建設・運用するために巨額な投資が必要で、その投資を託送料金の中から長期的に回収していく設備産業です。競争による効率化効果よりも、同じエリアに複数の事業者がいることで、二重投資が発生する社会的損失のほうが大きいと判断され、地域独占が残ることとなりました。一方で、独占による弊害を回避するため料金の規制が維持され、効率的な設備形成も担保しています。

 

総括原価方式のメリット・デメリット

 そもそもこの「総括原価方式」は、電気を安定的に供給するために必要であると見込まれる費用に、資金調達に必要なコストである適正な利潤を加えた額を総原価として、電力需要の見通しを踏まえてその原価が回収できるように託送料金を設定する方式です。「総括原価方式」は全面自由化以前の小売料金にも採用されていました。詳細はBRIGDE2012年6月号をご覧ください。

 この総括原価方式は、「公益事業」と「設備産業」という電気事業の特質から考えると、理にかなったものでした。総原価を基に国から認可を得る必要があるため、独占が認められた事業者が不当に高い料金を設定することを防いでいます。また、投資回収の見通しがつくことから、中長期的な視点で必要な設備形成が行えるといったメリットがあります。こうしたメリットは、電力需要が急激に伸びた戦後復興や高度経済成長を、安定供給を通じて支え続けることにつながりました。

 一方、効率化努力により一定以上の利益が出ると、料金の値下げが求められるため、効率化にブレーキをかける発想が生まれやすいのではと、国から疑問が呈されたこともあります。

 また、社会情勢が変化すると、追加でコストをかけて取り組まなければならない事象も発生します。こうした追加コストについては、値上げ認可申請を行うことで料金に織り込むことが可能ではありましたが、国による審査を経る点から事業者が機動的に対応することが難しいといった面がありました。

 

送配電事業者が、必要な投資を着実に実施できるように

 近年、送配電事業を取り巻く環境は大きく変わってきました。再生可能エネルギーの主力電源化に向けた電力系統の増強や、激甚化する自然災害を踏まえたレジリエンスの強化に加え、高経年化に伴う設備更新などが喫緊の課題となっています。さらには、太陽光・電気自動車・デマンドレスポンスなどの多数の分散型リソースの制御に向けたデジタル化など、未来に対する必要な投資が求められています。

 

 一方で、人口減少などにより電力需要が不透明化しており、託送収入が減少する可能性も指摘されています。先ほど紹介した高度経済成長期のように、将来の電力需要の増加が見通せるのであれば、設備の新増設に伴う投資の増加分は、増える料金収入の中で吸収できました。しかしながら、これからは電力需要が不透明、つまり収入が不透明の中で、社会にとって必要な投資を行っていかなければならないのです。

 こうしたことから、送配電事業者が安定供給に向けて必要な投資を着実に実施できるように、託送料金制度の改革が行われることとなったのです。 

 

 次回は新しい託送料金制度「レベニューキャップ」について解説します。

 

 

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東北電力ネットワーク 総務部(広報・地域交流)斎藤

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