
海外発電事業のいま
当社の海外発電事業は、事業創出部門の海外事業ユニットが担当しています。
当社はこれまで、国内で培ってきた発電事業に関する技術や経験などを活用し、海外における事業機会を追求し、現在は2つのプロジェクトに出資参画しています。
東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」を踏まえ、これらのプロジェクトへの経営関与や技術関与等を通じて、収益確保に着実に取り組んでいくほか、これまでの海外発電事業で培ったノウハウや人的ネットワークなどを、国内再生可能エネルギーの開発・参画や、スマート社会実現事業に最大限活用していくこととしています。
また、今後は当社グループのカーボンニュートラル実現に向けて、海外事業としても貢献できることがないか並行して検討していくこととしています。
今回は、その2プロジェクトの概要とそこで尽力する当社グループ従業員の姿をご紹介します。
[ギソン2石炭火力発電事業]
「ギソン2パワー社」(所在地:ベトナム社会主義共和国)が運営するギソン2石炭火力発電所(ベトナム社会主義共和国南タインホワ省、定格出力120万kW)は、2022年7月14日に営業運転を開始。
現在、 発電副部長1名(茅野利宏さん)が事業会社に常駐し、発電部の統括補佐、石炭運用管理全般等に従事。
[ランタウ・デダップ地熱発電事業]
「スプリーム・エナジー・ランタウ・デダップ社」(所在地:インドネシア共和国)が運営するランタウ・デダップ地熱発電所(インドネシア共和国南スマトラ州、定格出力9.84万kW)は、2021年12月26日に営業運転を開始。
エンジニアリング・マネージャー1名(牧英彦さん)が事業会社に常駐し、建設残工事、オペレーション&メンテナンス関連業務に従事。2023年2月より、役職はDeputy COO(事業運用副統括)として事業会社本社(ジャカルタ)で発電プラントの保守・運用を主体に品質管理や人材育成など、事業経営全般にも関与する予定。

ギソン2石炭火力発電事業の紹介と出向者へのインタビュー
1.事業目的・海外出資の意義など
本事業は、ベトナム電力公社と25年間の電力売買契約を締結することで、長期にわたる安定的な収益が期待できるとともに、当社が60年以上にわたり国内で培ってきた石炭火力発電所の建設管理や運営に係る実績・経験、石炭火力発電に係る環境技術を最大限に活用することで、発電所の安定稼働および環境負荷の低減に積極的に貢献することが目的です。
(ベトナム社会主義共和国ギソン2石炭火力発電事業の概要)
(1)事業会社:ギソン2パワー社
所 在 地:ベトナム社会主義共和国 ハノイ
設 立:2014年1月
事業内容:ベトナム電力公社(EVN)との売電契約(25年間)に基づき、発電事業を運営
出資会社:韓国電力公社(50%)、丸紅株式会社(40%)、東北電力株式会社(10%)
(2)発電所名:ギソン2 石炭火力発電所
所 在 地:ベトナム社会主義共和国 北部タインホア省 ギソン地区
定格出力:120万kW(60万kW×2基)
着 工:2019年2月
営業運転開始:2022年7月
(3)事業位置図:
2.出向者インタビュー
現地で発電副部長という重要なポジションで石炭の運用・管理・調達に携わっている出向者の茅野利宏さんに聞きます。

問.どのような業務に従事していますか。
答.2020年10月から、発電部副部長として、主に石炭運用・管理・調達計画の作成などを担当しています。
問.駐在でのやりがいは何ですか。
答.地元のスタッフは、リスクに対する考え方が十分ではなかったり、品質管理や安全について意識が低い人たちもおり、適切に管理が行われていない場合があります。そのため、彼らに指導・助言して少しずつですが、業務の改善や向上が図られ、意識が変化していくことを実感できることです。

問.今までで一番難しかった業務内容を教えて下さい。
答.各石炭供給業者との契約の制約や石炭消費計画の大幅な変更等で、石炭の調達スケジュールを調整することに大変苦労しました。また、発電所の建設から営業運転への体制の移行に伴い、業務分担等を各グループと調整することに苦労しました。
問.駐在中の出来事で印象深かったことを教えて下さい。
答.業務で特に印象に残っているのは、貯炭場への石炭の初受入に立ち会うことができたことです。
まっさらな貯炭場に石炭が積み上げられていく光景を見て、試運転に向けて気が引き締まったことを覚えています。
プライベートでは、スタッフの結婚式に招待されスピーチしたこと。社員旅行でフーコック島に行ってスタッフと懇親を深めたこと。スタッフとローカルレストランで一緒に食事したことです。

問.仕事をする上でどのようなことに気を付けていますか。
答.スタッフに指示するときは、お互い母国語ではない英語でのやり取りとなるので、書面や対面で行い誤解が生じないように注意しています。特に安全面の指示は理解されているか確認を行っています。そのため、コミュニケーションを取ることを心掛けています。また、ベトナムでは日本では予想できないことがたびたび起こるので、臨機応変に対応しています。
問.現地と日本との大きな違いはありますか。ある場合、それは何ですか。
答.ギソン2発電所での業務は、Self-Operation and Maintenance(自社での運転・管理)を採用しており、東北電力の発電所の運用体制と似ているため、違和感なく仕事をしています。日本と比較して3交替勤務に従事している女性のオペレーターの人数が多いことが特徴です。また、ベトナムでは、より良い給与や仕事環境を求めて転職するのが一般的であり、良い人材を採用することもできますが、一方で教育した人材が流出する可能性もあり、プラントの安定運転には優秀な人材を継続して確保することが重要となります。

問.仕事への心構えとして、駐在前と駐在後で何か変わったことはありますか。
答.契約書を確認して業務を進める意識が強くなりました。特に石炭の調達に関連して、輸送会社、石炭供給業社のそれぞれ契約内容が異なるため、数量や発注時期などの条件が複雑になることから、都度確認しながら業務を進めています。
問.現地での生活はどうですか。
答.私の住んでいるギソンは小さな町のため、欲しいものがすぐに入手できる環境ではないので、不便な面はあります。しかし、車で片道4時間かかりますがハノイに行くと日本の製品や食料品等が調達できるので、日常生活では大きな問題はなく過ごすことができています。現場には日本人が私ひとりだけですので、ベトナムの人たちは親切に接してくれて、何かと世話をやいてくれるので助かっています。また、若いスタッフが多く活気があり、彼らのパワーに負けないようにしています。日本では考えられないことがたびたび起きますが、それも良い経験と思っています。



問.ベトナムでお勧めはなんですか。
答.食べ物:有名なフォー (Phở)やブンチャー (Bún Chả)など麺類
飲み物:果物が豊富なので生絞りフルーツジュース、ビールは安くて美味しい
場 所:フーコック島(Phu Quoc)。白砂のビーチで有名なリゾート地
お土産:コーヒー、カカオの産地なのでチョコレート、陶器のバッチャン焼(bát tràng)


問.最後に読者への一言をお願いします。
答.私が駐在した当初はコロナが流行し始めた時期であり隔離措置の規制が厳しく、人やモノの移動が制約されていました。その中で発電所の建設を進めていかなければならず、工程や品質を維持することが非常に難しかったですが、予定通りに営業運転を開始することができました。初めての駐在で、ほとんどすべてが初めての経験のため、手探りで業務を進めなければならず苦労しました。しかし、技術面は大きな違いがなかったことから、日本の発電所に勤務した経験を生かすことができました。日本で基本をしっかり身についていれば海外でも自信を持って業務を行えると思います。
駐在は、海外に長期間滞在となるため不便な生活で大変なところはありますが、地元の人たちと一緒に働き・交流することで彼らの考え方・風習・習慣を知ることができ、新しい発見があり良い刺激を受けています。

3.ギソン2石炭火力発電所および現地出向者取材時の写真です!

ランタウ・デダップ地熱発電事業の紹介と出向者へのインタビュー
1.事業目的・海外出資の意義など
本事業は、インドネシア国有電力会社と運転開始30年間の電力売買契約を締結することで、長期にわたる安定的な収益が期待できるとともに、当社が国内で40年以上にわたり培ってきた地熱発電技術の知見・経験を生かすことにより、同国における電力の安定供給に貢献します。
当社は、2022年10月14日に事業会社の発行済株式のうち、10%を追加で取得し、当社の出資比率は、これまでの10%から20%となりました。
本発電所は、9.84万kWの地熱発電設備であり、当社が所有する日本国内の地熱発電所(例:澄川地熱発電所出力:5万kW)と比べ規模が大きいことが特徴です。インドネシアでは、地熱資源が豊富なため、大規模地熱発電所(数十万kW)が多く建設されており、各地熱発電所は運転開始以降、安定稼働しています。
(インドネシア共和国ランタウ・デダップ地熱発電事業の概要)
(1)事業会社 :スプリーム・エナジー・ランタウ・デダップ社
所 在 地 :インドネシア共和国 ジャカルタ
設 立:2008年7月
事業内容 :インドネシア国有電力会社との売買契約(30年)に基づき、発電事業を運営
出資会社 :丸紅株式会社(27.4%)、株式会社INPEX(27.4%)
スプリーム・エナジー※(25.2%)、東北電力株式会社(20%)
※インドネシアの地熱資源開発、地熱発電事業者
(2)発電所名:スプリーム・エナジー・ランタウ・デダップ地熱発電所
所 在 地:インドネシア共和国 南スマトラ州 ランタウ・デダップ地区
定格出力:9.84万kW
着 工:2018年4月
営業運転開始:2021年12月
(3)事業位置図

2.出向者インタビュー
現地でエンジニアリング・マネージャーという重要なポジションでマネジメントに携わっている出向者の牧英彦さんに、インタビューしました。

問.どのような業務に従事していますか。
答.2021年4月よりインドネシア共和国スマトラ島内の標高約2,000mの地点にある地熱発電所に勤務しています。同発電所は2021年12月に営業運転を開始しており、現地赴任後エンジニアリング・マネージャーとして、主にプラント試運転の立会業務に従事しました。営業運転開始後は、事業会社の取締役会に出席し、スポンサーである東北電力の代表という立場で、発電所運営体制、予算策定、保守運用方針等の協議に参画しています。

問.今までで一番難しかった業務内容を教えて下さい。
答.私自身、着任当初は地熱発電所勤務や発電所建設の経験がなく、英語も大して話せない状況でした。このため初めのうちは建設現場で皆さんの足手まといにならないよう、とにかく現場業務に慣れることで精一杯でした。そこでは自分自身の無力感も感じましたが、東北電力自体は地熱発電に関して多くの知見・ノウハウを有していますので、東北電力からの多大なるサポートを頂きながら、そしてまた、日本の家族を守ってくれる妻の支えがあったからこそ、何とか営業運転に漕ぎ着けることが出来たと考えています。
問.駐在中の出来事で印象深かったことを教えて下さい。
答.地熱発電所は、地表面より約2,000~3,000mほどの井戸を掘り、地中より蒸気を取り出し、その蒸気でタービンを回して発電する方式です。井戸を掘る作業や7kmにも及ぶ蒸気配管敷設工事にも立ち会いましたが、地中深くから取り出された高温高圧の蒸気により、初めて発電を開始したときの感動は今でも忘れることはありません。

問.仕事をする上でどのようなことに気を付けていますか。
答.建設当時のスポンサーは、インドネシアをはじめ、日本、フランスなど様々であり、そのため、各社の思惑は異なり利害対立なども頻繁に発生していました。当然、自らの主義主張を貫けば対立は避けられませんが、安易な妥協も決して有効ではありません。そこで学んだことは「For the Project」であり、どうしたらプロジェクトがより良くなるか、といった全体最適の視点で物事を考えることが他者からの理解を得るうえでとても重要であることを学びました。
問.現地と日本との大きな違いはありますか?
答.インドネシアでは、約9割の方がイスラム教徒であり、特に宗教に対しては敬意を払う必要があります。信仰上、インドネシアの方には特に親切な人が多く、私自身、少しでもそういった思いやりのある方々に近づけるよう、日々精進しているところです。
問.仕事への心構えとして駐在前と駐在後で何か変わったことはありますか。
答.海外に駐在していますと、予期せぬ様々なことが発生します。可能な限り事前に準備をしておくことの大切さと、一度起きてしまったことはまず受け止めるといった寛容さも大切だと感じています。一度起きた事実は変えることは出来ませんので、その後どう対処するか、に頭をすぐ切り替えることが大切だと思います。
問.現地での生活はどうですか。
答.私が勤務する地熱発電所は、岩手山の山頂と同レベルにあり、宿舎もそこから車で5分ほど下った標高1,600mのところにありますが、町はなく、買い物等は出来ません。駐在当初は世界的なコロナ感染が猛威を振るっていたため、約3ヵ月の発電所連続勤務とまとまった休暇取得を繰り返す生活を送り、一時帰国のタイミングで日本から100㎏を超える食料を持参するといった生活を1年以上繰り返しました。まさに山に籠ってのサバイバル生活であり、今となっては楽しい思い出です。


問.インドネシアでお勧めのものはなんですか。
答.発電所の近くには、多くのコーヒー農園があり、日本へのお土産として価格も手ごろなため、自分自身のお土産用として、また発電所を訪問された方にもお勧めしています。コーヒーが苦手な方でも、豆の袋を開封して香りを楽しむだけでもリラックス効果が期待できます。

問.読者への一言をお願いします。
答.私のモットーとして、仕事は楽しく!を日頃から心掛けています。そのためには、自分が従事する仕事については誰よりも深く知ることが大切だと思います。少し大げさですが好奇心こそが労せずして自分自身を動かす源(原動力)ではないかとも、ここスマトラ島の山中にいて感じているところです。
既に勤続24年目を迎えていますが、私には入社当時に立てた3つの小さな夢がありました。それは、発電所建設に携わること、英語でコミュニケーションが取れるようになること、そして、持ち家を持つことでした。気が付くと24年目にして夢が叶っていました。是非、皆さんにおかれましても、ご自身の夢について改めて想いを馳せて、そして実現していただければと心から願っています。

3.ランタウ・デダップ地熱発電所および現地出向者取材時の写真です!



オペレーション&メンテナンスチームとのコミュニケーションやパトロール等により運転状況をモニタリング
現地で得られた発電所の最新情報を当社へ日々共有し、当社からの技術支援に役立てている

発電所の建設工事で伐採した樹木のオフセットのために、温室で苗を育て、発電所周辺の樹木のない土地に植林を実施

現地取材時に発電所周辺の案内等、種々サポート頂いた発電所従業員の皆様と写真撮影