BRIDGE探検隊
~上越火力発電所1号機“初”の定期点検に密着~

 世界最高水準の熱効率を誇り、経済性と環境性、高い運用性を兼ね備えた上越火力発電所。2022年に営業運転を開始して以来初めてとなる定期点検が、今年3月から実施されています。今回、定期点検の様子が報道機関に公開され、その現場にBRIDGE探検隊が潜入!巨大なガスタービンローターを車室に納める様子や、担当者の想いなどをお届けします。

営業運転開始以降、初めての定期点検を実施

 2022年12月に営業運転を開始した上越火力発電所1号機(発電出力:57.2万kW、発電方式:ガスコンバインドサイクル発電)は、東北電力において最も南に位置する火力発電所です。最先端技術を有したガスタービンを導入し、世界最高(2023年1月時点)の熱効率「63.6%」を達成。燃料消費量とCO2排出量を削減し、高い経済性と環境負荷低減の両立を図っています。
 また、従来型の火力発電所と比較し、起動時間が短いことに加え、電力需要や再生可能エネルギーの出力変動に対する調整が迅速かつ柔軟にできることから、電力系統の安定化に重要な役割を担っています。

 

上越火力発電所の外観

 

 定期点検は、設備トラブルの未然防止など設備の安定運転を目的に、発電所内の様々な機器を分解して点検・修理を行うものです。上越火力発電所1号機では、営業運転開始以降“初”となる定期点検を3月16日から6月28日の期間で実施しています。従事する作業員は1日最大420人、延べ約3万人。初回点検のため、ガスタービン、蒸気タービン、および排熱回収ボイラーなど、すべての機器を同時に点検する大掛かりな作業となっています。

 

低圧蒸気タービンローター

ガスタービンローター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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点検は屋外のジャバラ式テントでも行われている

 

 3月中旬から始まった定期点検は各機器の分解点検からはじまり、現在は確認を終えたガスタービンを据え付ける作業や電気設備の点検作業などが実施されています。取材日の5月10日時点で「進捗率約50%」と順調に進んでおり、報道機関の取材に応じた鈴木所長からは「今回は全ての機器の分解・点検を行っている。安全最優先のもと、万全の体制で夏の電力供給に臨みたい」と、力強いコメントがありました。

 

初めての定期点検は佳境を迎えている

報道陣の質問に答える上越火力発電所 鈴木所長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガスタービンローター納めの様子などを動画でご紹介!

 取材日当日、世界最高水準の高効率発電を後押しした全長約13m、直径約3.5mの最新鋭のガスタービンローターを車室に納める作業が行われました。
 ガスタービンローターは1分間に約3,000回転の速さで発電機を回す重要な機器です。翼端と車室との間隔が広いとエネルギーが逃げてしまい、狭いと互いが接触するリスクがあるため、ローターと車室が適正な間隔となるよう100分の1㎜単位で調整し、据え付け作業を行う必要があります。

 

据え付け作業開始前の現場の様子

 

 据え付け作業開始前、作業手順などを示したホワイトボード前で発電所員および協力企業の社員約20名が入念にミーティングを行い、最後は指差し呼称で安全確保を図りました。

 

ミーティングの様子

 

 そして、いよいよ据え付け作業開始。重さ約110tのガスタービンローターがゆっくりと吊り上げられる様子を作業員が真剣に見つめます。現場の緊張感が高まる中、作業員同士で声がけをしながら慎重に作業を実施し、約20分をかけて車室まで移動させます。その後、各部の寸法を計測しながら約1時間かけて据え付けを完了させました。

 

吊り上げられたガスタービンローターを見つめる

 

 

全長13mものガスタービンローターが据え付けられる圧巻の作業の様子を、タイムラプスで撮影しました!ぜひご覧ください!

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担当者の想いに迫る! 上越火力発電所 発電技術G 天野 高延 主任

担当業務:請負会社への工事発注や定期点検の計画および工程管理など

出身:福島県南相馬市

自身のキャリア:2010年入社、東新潟火力発電所(コンバインド技術G)配属。その後、東北発電工業(株)へ出向し、ガスタービンの分解点検の業務に従事するなど、キャリアをとおして10年以上にわたりガスタービンの定期点検に携わる。

 

上越火力発電所発電技術 天野高延主任

 

──これまで順調に定期点検が進んでいると伺っています。天野主任の役割の中で工夫していることなどがあれば教えてください。

 協力企業の社員を含め、しっかりとコミュニケーションをとることを意識しています。実際に手を動かして作業を行う人のほとんどが協力企業の社員になるため、遅延なく作業工程を進めるためには、意思の疎通が最も重要だと考えています。そのため、仕事中に限らず、休憩の時間やプライベートの場でも積極的にコミュニケーションをとり、「お互いが困った時に腹を割って話し合い、そして助け合える」関係の構築に日々努めています。

 

 

──今回、上越火力発電所としては“初めて”の定期点検になりますが、通常の定期点検と比較し、違いはありますか。

 私の10年以上のキャリアの中でも初回点検に携わるのは初めての経験です。これまで携わってきた定期点検とは「過去の実績がない」という点で大きく異なり、先輩方が作成した手順書やマニュアルなどが何もありません。加えて、上越火力発電所1号機は最新鋭のガスタービンを搭載しているため、他の発電所では扱っていない部品などもあります。それらの部品を「何が、どれくらい必要なのか」図面を見ながら発注する必要があり、毎日、試行錯誤しながら業務を進めています。

 

 

──天野主任が前例になるということですね。

 そうですね。誰も正解を知らない難しさを感じる場面は多々ありますが、「自分が作った道筋を後輩たちが通っていく」ということを意識して、職場の皆さんや関係者の方々に協力いただきながら業務を行っています。先輩方のように、自分がしっかり土台を作っていきたいです。

 

──今後も定期点検が続きますが、意気込みをお聞かせください。

 5月末から6月にかけて、機器の組立作業や試運転が同時並行で行われます。この時期は現場の緊張感が増す時期であると同時に、作業に焦りが出る時期でもあります。まずは安全第一で作業を進め、無事故無災害で今後の点検を完遂させたいです。その上で、 6月28日に必ず給電運用が開始できるよう、関係者とのコミュニケーションをより意識して工程管理を行っていきたいです。

 

 

体験後記

 妙高山や火打山などの美しい山々と日本海に囲まれた自然豊かな土地に位置する上越火力発電所。職場ではフリーアドレスを導入しており、自然光が入るオープンスペースで社員同士のコミュニケーションが生まれやすい環境を創出していました。実際に発電所内を歩いていると、社員や作業員がすれ違う際に「ご安全に!」の声がけが至るところで行われており、作業による騒音で声がけが難しいエリアでも、サムズアップのジェスチャー(親指を立てる動作)でコミュニケーションをとる社員の姿が印象的でした。

 天野主任からは「世界トップレベルの高効率発電を維持し、安定運転に努めていきたい」と意気込みがあったように、現地社員におけるノウハウの蓄積と継承が、更なる安定供給の実現に繋がることを実感しました。加えて、日常の運転管理においては、ロボットやスマートグラスなどを活用した精度の高い設備点検や、ウエラブルカメラを活用したベテラン社員による遠方支援など、ICTやDXの導入により、効率化と品質確保の向上に積極的に取り組んでいることも取材の中で伺いました。日々挑戦を続ける上越火力発電所から今後も目が離せません。

 

上越火力発電所から眺める火打山

イイね!
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