
今さら聞けない?DXとは
DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術により生活やビジネスに起こる変革のことを言います。経済産業省の「DX推進ガイドライン(現:デジタルガバナンス・コード2.0)」における定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
例えば個人で楽しむ音楽や映画のサブスクリプション形式のサービスが登場したことで既存のレンタルソフト事業が縮小したように、DXはビジネスモデルに大きな変化をもたらします。そのような中で、企業にはデジタル化に対応した組織になることやビジネスモデルを変革することが求められています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「業務効率化」や「コスト削減」といった従来型の改善活動に留まらず、「ビジネスモデルや企業文化・組織風土の変革」を実現することができる原動⼒となることが期待されています。
東北電力グループにおけるDX
東北電力グループが4月30日に発表した中長期ビジョン「よりそうnext+PLUS」。そこでもDX戦略は特に注力する項目の1つとして挙げられました。最新のデジタル技術や保有するデータを積極的に活用して、すべてのグループ企業、ならびにすべての事業部門でDXによる変革にチャレンジしていくこととしています。
DXを展開する具体的な方針として、当社グループではこれまでに「東北電力グループDX推進方針」および「2024年度東北電力グループDX中期計画」を策定しました。中期計画の中では変革・成長に資するものとして以下の図のとおり11の重点テーマが掲げられ、これらについてグループ大で展開していくこととしています。
これまでも一部のグループ企業や部門において、さまざまなデジタル技術を活用した施策が展開されてきましたが、それらの取り組みのなかで有効な施策については、組織の枠を超えて横断的に推進することで、より高い効果が得られるようグループ内の連携を一層強化していくこととしています。

2024年度東北電力グループDX中期計画の重点テーマ
こうした中、3月21日には日本IBMが主催する東北電力グループ限定イベント「テクノロジーの力でみずからの働き方を改革していく - きょう、あす、みらい -」が本店で開催されました。
イベントにはグループ社員約120名が参加し、その中では「テクノロジーの力でみずからの働き方を改革していく」と題したパネルディスカッションが開かれ、東北電力小山常務(4月1日より「CDO (Chief Digital / Data Officer)」就任)が登壇しました。小山常務は「担い手の高齢化や減少が顕著な東北・新潟エリアでは、事業所・現場を問わずDXの推進による効率化が不可欠。」とした上で「既存の枠組みにとらわれず他社や異業種とも共創して取り組みたい」と語り、DXに対する期待と強い意気込みを示しました。


「DX推進部」が発足。機動的にグループDXを主導する
2024年4月、東北電力に新たに「DX推進部」が設置されました。

DX推進部発足会にて
これにより、従来の情報通信部の機能がDX推進部へ移管されるとともに、東北電力グループのDX戦略、DX推進の主導・支援、DX人財育成などの機能が強化され、より機動的なDX推進が可能となっています。
DX推進部のミッションは以下の3つとなっています。
■デジタル技術とデータ活用によるグループの事業価値向上、競争力強化に向けた効率化の推進
■グループ全体でDX人財を育成し、イノベーションを生み出し続ける企業風土を醸成
■システム開発、スマート保安、セキュリティなどをICT技術でリードし、着実に推進
またDX推進部発足と合わせて、「東北電力デジラボ」が開設されました。これは社員が自由に意見を出し合い、新しいアイデアや技術を生み出し、コミュニケーションを通してDX推進を促進させる場として、本店向かいの仙台三共ビル(6階)に設けられたものです。今後、セミナーや研修をはじめ、イノベーションを生み出す共創の場として、積極的に活用していく計画としています。

メインエリア。大小の打ち合わせのほか、プレゼンにも利用可能

作業スペース

周囲を気にせず集中できるブース

カフェのように使えるスペースも備わる

実際の取り組み事例、ユーザーの声
当社グループでは様々なDXの取り組みを通じて、業務の効率化・高度化のほか、事業価値の向上や収益の拡大に資するチャレンジを行っています。
例えば水力部をはじめとする技術系部門では、ダムの保守管理業務への自動航行ドローンの導入や、設備管理業務におけるグループ大でのデータ化・高度化などが進行しています。

自動航行ドローン「エアロボウイング」実証実験飛行の様子
さらに、昨年度全社に展開したデータ分析ツール(Power BI)を用いた「各種データの活用」も進められています。その効果やDXによるマインドの変化について、関係者にお話を伺いました。
燃料部(燃料企画・運用)森古主任(写真左)・柳谷さん(写真右)

──業務の概要について教えてください。
為替相場と発電に使用している各種燃料(石油、石炭、天然ガス、液化天然ガス)の市況価格の動向を取りまとめた「燃料関係市況動向」という報告書の作成です。毎週作成し、役員や関係者に報告しています。
──業務の難点を教えてください。
印刷することを前提にエクセルで作成していたので、グラフの体裁の微調整などに手間がかかっていました。配布方法も3種類(メール、H.A.N.D.Sお知らせ、燃料部ポータルサイト)あり、特にポータルサイトへの掲載は作業が複雑で、作業途中でクラッシュするなどのトラブルもありました。
──Power BIによるダッシュボード化でどのような効果がありましたか。
まず、グラフそのものが変わりました。これまでは書類(PDFデータ)でしたので表示する対象や期間は作成者が決めていましたが、ダッシュボードではユーザーが見たいものを自由に選択できるので、個別のニーズに合った情報を提供できるようになりました。
そして業務削減効果も非常に大きいものでした。グラフの更新はダッシュボードの元となるデータを追加登録するだけで完了するので、細かい体裁調整の手間がなくなりました。合わせて配布方法も見直し、指定URLへアクセスして閲覧する形を基本として個別の送付やアップロードも最小限とした結果、作成1回あたりの所要時間は約8割減少しました。更に、完成したグラフは後から別の資料などで二次利用する機会が多くあるのですが、その際にもスムーズに元データの取得ができるようになり、作成業務以外でも削減効果が表れています。
-Power-BI.png)
「燃料関係市況動向」のダッシュボード。表示する対象や期間を自由に選択できる

DX推進部による燃料部PowerBI勉強会の様子
──すごい効果ですね。業務を行うマインドには何か変化はありましたか。
業務に対するスリム化の意識が強くなりました。燃料関係市況動向は重要な経営情報ということもあって、これまではとにかく様々な手段でたくさんの相手に配付していました。今は「見たい人が見たい時に見たい情報を手軽に得られるような環境を整備すれば、配付は最小限でいいんじゃないか」というマインドになっています。
この他、社内では生成AIの活用も進められています。
生成AIはチャットボットの設置や写真素材の整理、QAの作成など多くの業務への適用が期待されています。当社グループでは各室部から活用ニーズを集約し、必要に応じてPoC(Proof of Concept:実証実験)を行うなどして、スピーディーに実用化を目指しています。
この中で既に成果を上げているのが、生成AIによる議事録の自動作成業務です。実際に社長定例会見の議事録作成では音声データの文字起こしや文章校正において、高い確度での変換を実現しています。
その効果や課題について、関係者にお話を伺いました。
ソーシャルコミュニケーション部門(経営広報ユニット) 佐藤主任

──業務の概要について教えてください。
社長会見の内容(発表+記者との質疑応答)について、会見後に資料を作成する業務です。文字起こし後、文章の体裁を整え、要約を行ったうえで、関係個所へ報告します。当日中に報告する必要があります。
──業務の難点を教えてください。
文字起こし自体は難しい業務ではないのですが、社長会見終了後のスタートとなり、時間外の対応となりがちです。会見直後はマスコミからの問い合わせの電話などが入り対応に追われることが多いため、作業に専念できる人員の確保にも課題がありました。

──生成AIを導入したことでどのような効果がありましたか?
大幅な時間短縮効果があり、かかる時間が以前の2/3になりました。また、後工程での直しも少なくなったように感じています。
実は以前にTeamsの文字起こし機能を使って自動文字起こしに挑戦したのですが、その時は誤字脱字があまりも多く活用に難しさを感じていました。生成AIは9割を超える精度で出力され、修正作業はそれほど多くありません。改行位置や文頭の調整など細かい作業も生成AIへの指示ひとつで瞬時に完了するので、助かっています。
──生成AIを活用する上での工夫や課題を教えてください。
文字起こしの精度は音声データの質(録音環境)に依存するので、なるべくクリアな音声データが取れるよう、ICレコーダーではなくマイクを使用するなどの工夫をしています。
また、本来なら文字起こしだけではなくその次の工程である要約作業も生成AIに依頼したいのですが、要約の正当性(正しく要約されているか)をチェックする手間が大きいため、現在は人力で行っています。いつかこの作業も依頼できるようになるといいですね。(編集部注:議事録作成支援については非常に高い社内ニーズがあります。DX推進部では今回の評価で使用したアプリケーションをベースに、社内データを扱える試行環境を準備しているとのことです)
DX人財の育成、サイドジョブ・チャレンジ制度の活用も
当社グループは「デジタル技術とデータで、事業運営に新しい価値を創造し、変革に勇敢に挑戦する人財」を「東北電力グループDX人財」と定義し、役割に合わせた各種研修を実施しています。2023年度は約2,800名が研修を受講しました。
また、意欲的にDXスキルの向上に取り組む従業員に対し、キャリア形成の一助とするための「DX人財認定プログラム」を、2024年3月より人財部と連携し運用開始しました。
今後は、2025年度までに全社DX推進者20名、高度データアナリスト50名、部門DX推進者350名、DXリテラシー社員2,000名の育成に取り組む予定です。

さらに「社内サイドジョブ・チャレンジ制度(社内副業制度)」を活用し、DXに関する教育や実業務への参画など、DX推進業務に興味を持って自らDXを推進したい!という意欲ある方々が精力的に活動しています。(こちらは後日別の記事でご紹介する予定です!)
(DX推進部より)
本制度にエントリーいただいた方々の職場の皆さまにおかれては、ご理解とご協力いただき感謝申し上げます。
DXのこれから
東北電力グループのDXの現在と、そしてこれからについて、DX推進部(DX推進)の早坂さんにお話を伺いました。

打ち合わせをする早坂さん(写真右)
──どのような業務をされていますか。
名前のとおり、DXの推進に向けた業務を行っています。生成AIを活用した検証環境の整備やルール構築の検討を主に行っています。
特に文書検索や音声データの文字起こしに力を入れており、現在は、社内環境で作成したプログラムの動作確認や社長記者会見などの音声データをプログラムに投入し、使用する生成AIモデルの最適化作業(ファインチューニング)を行うなど、より生成AIの精度を上げる作業を行っています。

──今後の予定を教えてください。
今後は社内業務活用に向けて、データ活用環境の整備や生成AIモデルのさらなる精度向上などの準備を進めているところです。生成AIを活用した検証作業の内製化にも取り組みたいです。
──DXを推進していて、手ごたえを感じた案件はありましたか。
SC部門に協力いただいている、社長会見の議事録ですね。約1時間の音声データが約10分程度で文字起こしできただけでなく、その精度の高さなどについても高い評価をいただきました。実際に主管部さんからの業務効率化に係る生の声を聴けたことで、DX推進への貢献に手ごたえとやりがいを感じています。
──我々の業務もDXによって様変わりしていくのでしょうか。
自動化、AI、ロボティクスなどの新しいデジタル技術の導入による業務効率化や、新しい働き方による業務変革につながると思います。一方で、デジタルスキルの向上が社員には求められており、環境変化や新技術に対応できる柔軟性と適応力も必要となります。
DX推進部では、各部門やグループにおける成長と変革に向けた取り組みを、私たちの技術や経験を生かして伴走していくことでよりスピーディな成果につなげていきたいと考えております。なんでも気軽に相談していただき、一緒にチャレンジしていきましょう!