
機を見て敏に。需給の最適化と利益の拡大に挑む
- 栗田 脩里(くりた しゅり)さん
- 橋本 昌樹(はしもと まさき)さん
──お二人の担当業務について教えてください。
栗田さん:私は当直員として三交替勤務をしています。需給の計画をもとに卸電力市場等を通じた調達・卸売を行い、需要と供給力のバランスを取りながら、需給の最適化を図るのが主な仕事です。
橋本さん:私は日勤者として、卸電力市場取引に係る損益管理や入札方針の作成、ツールの整備などを行っています。
──需給運用センターは24時間体制なんですね。
栗田さん:当直は管理職を含めた3名を1班とした5班編成による三交替勤務で24時間体制をとっています。
橋本さん:「週間から当日にかけての需要と供給力の計画を作る」ことが当直者の業務になりますが、我々日勤者は、その前段階である月間の需給計画や燃料消費計画等を作成して、日々の運用を担っている当直者のサポートを行うことが主な役割です。
- オペレーションルーム。三交替勤務で24時間体制をとる
- オペレーションルームの隣に設けられた休憩室
──需給運用センターにはさまざまなバックボーンの社員がいると聞きました。
橋本さん:需給運用センターの運開時は中央給電指令所や旧販売推進部電力取引Gの出身者が多かったのですが、現在は色々な部門出身のメンバーが活躍しています。主な業務は需給運用や市場取引ですが、その元となる需給バランスを作成するための電源の作業調整等の業務もあり、そういった業務で各担当のバックボーンが生きるところが多くあります。
また、異動で転入されてきた方に対しては、教育を行ったり、当直時にフォロー要員を増やして一人立ちまでの期間をサポートしており、最初は発電所の名前さえ知らなかったような方も需給計画の作成や市場取引を単独で行えるレベルになります。
栗田さん:需給運用センターにくる前は法人営業部門に所属しており、高圧や特別高圧のお客さまとの契約交渉を行っていました。需給管理や市場取引に対する知識は全くありませんでしたが、周囲からのサポートを受けて、一人で業務ができるようになりました。発電所に出向き直接設備を見て教わる機会もあるため、とても勉強になります。

打ち合わせの様子。左から下妻さん(酒田共火から出向)、佐藤さん(人財部)、藏野さん(NWS部)、佐藤主任(水力部)、中嶋さん(火力部)※( )内は前所属
──事務系社員が三交替勤務をしているのは珍しいですね。
栗田さん:社内で唯一です。初めての異動、しかも三交替勤務と聞いた時はびっくりしましたが、貴重な経験ができていると感じています。三交替勤務は8日サイクルのため必ずしも土日休みとはなりませんが、平日の休みで人混みが少ない時に用事を足すことが出来たり、直日勤※など休みが多い時期もあります。
※三交替勤務の期間中は通常勤務者と比べて休日が少なくなることから、その調整のために設けられる休日の多い期間のこと。

──需給運用センターのミッションを教えてください。
栗田さん:まずは、計画された需要に対してそれに見合う供給力を確保し、「同時同量」を達成することが第一のミッションです。例えば計画外のトラブルなどで発電所が停止したり予定した出力に達しない場合は、他の発電所で余力があるところの出力を上げて対応したり、あるいは受給契約のある他の発電事業者や市場を通じて電気を調達して、需要に合わせた供給力を確保します。
橋本さん:当社の発電所の状況、社内外との卸売・調達契約、さらにはその時々の市場や燃料在庫の状況を見ながら、最も経済的な需給計画の作成や各市場への入札行動を取ることも需給運用センターのミッションです。例えば休日の晴れた日の昼間であれば市場の電気が安いので自社火力の稼働を抑えてなるべく市場から調達すること、あるいは逆に市場が高い時は自社火力の出力を上げてその電気を市場で売ったりと、実際にはもっと複雑な条件が絡むのですが、最適化のためにとる行動は時と場合に応じて様々です。
──業務のやりがいはどのようなところですか。
栗田さん:電気の値段は天気や需要、市場にいる各プレイヤーの動きなど複雑な条件によって上下します。受渡日前日にスポット市場への入札業務があるのですが、自分で予想した約定価格※で取引が成立した時は快感ですね。
※売り手と買い手の条件が一致して売買が成立した際の価格

橋本さん:私が携わっている「入札方針」は、当直者によって入札方針にバラつきが生じないようにするために作成するもので、発電所の燃料在庫、各市場の動向などを見ながら作成しています。さらに取引後、約定結果が予測と違った場合は都度フィードバックして、入札方針を練り直しています。その時点での収益拡大化に向けた作戦を示すものであり、重要な資料です。

──業務をする中で東北電力の良さを感じる部分はありますか。
橋本さん:需給運用センターは発電カンパニー関係者で毎週開催する「短期需給最適化会議」の旗振り役として、燃料部や火力部と共に最適の戦略構築を目指しています。例えば燃料の到着が遅れている、あるいは発電所が計画外に停止するといった問題があるとすぐ集まって解決策を導くことができ、風通しの良さを感じています。市場や業界の先読みに長けたTET(東北電力エナジートレーディング)の協力を得られることも強みです。
栗田さん:発電所を含め、社内関係個所との連携を深めるためのキャラバンを実施しておりますが、その際に発電所の見学もさせていただく機会も多く、設備の概要などを教わることができ、需給運用や市場取引と絡めて理解できる点は、当社独自の強みだと感じています。さらに実際の運用を通して経験を積むことで、発電設備やその運用に加えて市場取引や広域機関の計画提出ルールに詳しくなるので、この職場で培った知識やスキルを生かして、グリーンビジネスやエネルギーソリューションにおいても会社の事業拡大に貢献できる人財になれると考えています。
次々と生まれる新制度。制度理解から戦略立案、現場運用まで切れ目なく対応

阿部 祐企(あべ ゆうき)さん
──新制度「需給調整市場」について教えてください。
一般送配電事業者(東北・新潟は東北電力ネットワーク)がエリア内の需給バランス調整ならびに周波数調整を行うために必要な調整力※を広域的に調達するための市場です。かつては公募制をとっていたのですが、より多くの電源の参加機会確保や調達コストの低減、調整力の効率的な確保などの観点から、2021年4月1日に創設されました。「調整力」と一口にいっても本市場で扱っている調整力には5つの種類(商品)があり、2021年度に開設されたのはうち1つだけで、2022年度にもう1つ、そして今年度残り3つの商品が開設され、すべての商品が揃いました。
※一般送配電事業者が、供給区域における周波数制御、需給バランス調整その他の系統安定化業務に必要となる電源等の能力をいう。当社では主に火力発電所や揚水発電所が該当する。

調整力の種類と市場の開設時期(第63回電⼒・ガス基本政策小委員会資料6より⼀部修正・抜粋)
──需給調整市場に対し、需給運用センターではどのような対応を行っていますか。
東北電力として需給調整市場に出すことができる電源や出力を見極め、応札を行うことです。前提として、発電カンパニーとしての卸売先需要があり、それを供給力で満たす必要があります。そのうえで需要を上回って更に発電できる力(余力)となる分について、需給調整市場に出すことになります。
供出にあたっては、実際に調整力を提供できる状態にあったか、また、一般送配電事業者の運転指令に応動できたかの事後検証がありますので、適切な対応を心がけています。
一方で、この市場のみならず卸電力市場もありますので、「収益最大化」「稼ぐ」という点ではそちらの市場で売れる見込みがあった場合には卸電力市場への供出についてもあわせて検討します。

──市場での取引ということになれば、応札量が少ないなどの理由で一般送配電事業者が需給調整市場で調整力を調達しきれないことも考えられます。そのような場合はどうなるのでしょうか。
本市場を介した取引とは別に余力活用契約という別の契約があり、その契約にもとづきエリアで必要な予備力、調整力を確保することになっております。東北電力は発電事業者としてこちらの契約も結んでいます。
当社は可能な限り本市場へ調整力を供出するよう努めていますが、全国的にはこの市場への応札不足が発生しています。この問題については国の審議会で現在議論されているところです。
──新制度「容量市場」について教えてください。
発電事業者はこれまで卸電力取引市場を通じて、「作った電気の量(kWh)」に対する報酬を得ることができました。しかしこの市場が抱えていた問題点として発電事業者は可変費※1しか回収することができず、そのため固定費※2がかさみがちな経年火力発電所などの廃止が全国的に相次いでいます。これが将来における供給力(kW)確保に対する危機感につながり、それを解決するために開設されたのが容量市場です。これは電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)が算定した「4年後に必要となる供給力」を発電事業者から調達するための市場です。発電事業者は発電ユニット単位で入札(金額は1kWあたりの固定費)を行い、その価格が安い順に落札される仕組みで、4年後の供給力が最適なコストで確保されることが期待されています。
※1:燃料費など、発電量に比例して発生する費用
※2:建設費や維持管理費など、発電量に関わらず発生する費用

従前からある卸電力市場(左)と新設された容量市場(右)。卸電力市場は作った電気の量(kWh)、容量市場は供給力(kW)を扱う点で異なっている。(広域機関作成資料より抜粋)
──容量市場へ入札して落札されるとどのようなメリットがあるのでしょうか。また気を付けなければならないことは。
発電事業者として入札し落札された電源は「容量確保契約金額」を得ることができます。一方、当社は小売電気事業者の立場でもあるため、「容量拠出金」の支払いも発生しますが、東北エリアの大半は東北電力が発電し東北電力が販売していることから、ほぼ相殺されるものとなっています。そこで注意すべき点としては、「容量確保契約金額」はあくまでも「供給力(kW)を提供できること」に対する報酬ですので、その機能を失った時、例えば電源が計画外に長期停止した場合などはこの契約金が減額されてしまう、すなわち東北電力としては純粋な損失となってしまうことです。そうならないように、設備トラブルが予見される場合は、発電所側での適切かつ迅速なメンテナンスを行っていただき、契約金への影響を回避することが重要です。また落札した電源には、広域予備率※が低下した場合に供給力を提供する義務が課せられます。こちらも適切な対応をとらないとペナルティが課せられますので、通知を見逃さず対応することも重要です。
※電力の広域的な運用において、エリア単位での予備率管理ではなく、地域間連系線を最大限活用した広域ブロック単位での予備率管理を行う仕組み。

広域機関HPより。当社は小売電気事業者(黄緑)でもあり発電事業者(水色)でもあるため、支払と受取の両方が発生する。
──新制度へ対応する中での、需給運用センターでのやりがいを教えてください。
業界では新しい制度が次々に生まれ、時には価格の乱高下もありますし、成熟していない市場もあります。運用していても前例のないことばかりで、セオリーも刻々と変化していく世界です。
そのような環境ですので、新しい制度や知見が示された時はその本質を自分たちで読み解くことが重要です。この職場ではそこから市場の価格や燃料の状況、あらゆる視点から東北電力としての最適化のためにはどのように対応すればよいのかを考え、チームで検討し、さらに実際の運用ルールを整備して実際に動かすという一連の流れの全てでプレイヤーとなります。責任やプレッシャーはありますが、自分の知識や考え、読みが「稼ぐ」ことに直結しうる、大変にやりがいのある仕事だと考えています。
