
設備状態の「明日を読む」異常兆候監視サービス
東北電力が火力発電所で培った技術でお客さまの設備の異常兆候を検知するサービス「ASYOMI(アスヨミ)」(以下、「ASYOMI」)。サービスの詳細や現在の状況について、担当者にお話を伺いました。
東北電力
火力部(火力DX)
伊勢 慶一 主査

──ASYOMIについて教えてください。
最新のデジタル技術を用いて、冷凍機やコンプレッサ、モーターなどの設備が持つ温度・圧力といった運転データを基に、異常兆候を早期に検知し、設備故障を未然に防ぐサービスです。具体的には、お客さまの設備の過去の運転データから、監視対象設備の正常な運転状態である“あるべき状態”を分析・見える化し、現在の運転状態と比較することで、データの差異を異常兆候として検知し、お客さまにお知らせします。

「よりそう異常兆候監視サービスASYOMI(アスヨミ)」の概要
──東北電力では既に広く使われているのでしょうか。
2020年3月から全ての火力発電所でこの手法による異常兆候監視を導入しており、運転停止や出力抑制などの大きなトラブルの減少につながっております。
──この技術をサービスとして商品化しようとしたきっかけを教えてください。
この技術は主に火力発電設備向けに開発されたものですが、様々な設備の異常兆候検知が可能です。「よりそうnext+PLUS」で示されたスマート社会の実現を目指すためにこの技術を有効に活用できないかと考えた結果、製造業を始めとする工場設備をお持ちのお客さまは我々と同じく異常の早期検知による安定運転をしたいというニーズがあると思い、火力部では初の挑戦となる火力発電技術の外部販売策として商品化を行いました。
──どのようなお客さま用途を想定していますか。
主に、自家用発電設備をお持ちのお客さまや、大きな設備を保有する製造業のお客さまにお役立ていただけるサービスと考えており、設備故障の防止による「ネガティブコストの抑制」や、設備の正常な状態と異常な状態を見える化・定量化することによる「監視業務の高度化」が可能となります。
──同様のサービスは他社にもあると思いますが、ASYOMIの強みはどのようなところですか。
火力発電所の運転を通じて長年蓄積してきたノウハウを生かして設備を把握し、異常兆候を検知できるのが強みです。我々社員は火力発電が専門なのでお客さまの様々な設備に対してはその都度勉強して臨みますが、設備の異常兆候を検知するノウハウは火力発電所の運転に通じる部分が多く、当社社員のポテンシャルを発揮できます。
なお、センサーの設置、お客さまデータを収集する仕組みや通信回線の構築などは通研電気工業さんやトークネットさんにお願いしており、企業グループの総力を結集したサービスとなっています。
──2023年4月のサービス提供開始から約1年半が経過しました。現在の状況はどうですか。
サービス提供開始時は特命チームで対応していましたが、少しずつお客さまも増えてきたことから本年7月から火力DXグループを立ち上げ、火力発電所DX施策と外販の展開を一層強化する体制としました。
これまでの法人営業部と連携した営業活動に加えて、今年度は主に関東圏のお客さまへの営業活動や展示出展によりお客さま獲得数を増やしていきます。
「スマートファクトリーJapan2024秋」へ出展
9月18日(水)~20日(金)、お台場にある東京ビッグサイトでは「スマートファクトリーJapan2024秋」という展示会が開催されました。これは製造業のDXを推進するうえで欠かすことのできない各種技術・製品の展示公開を行うもので、東北電力もASYOMIを通研電気工業と共同出展しました。

日刊工業新聞社HPより引用

展示ブース。多くのお客さまが足を止め、説明を聞いていた
東北電力
火力部(火力DX)
高橋 剛之 主査

──今回の展示内容を教えてください。
ブース内にはASYOMIの特徴を紹介するPR動画を放映するとともに、異常の初期状態を模したモーターの温度・振動などにより、ASYOMIでどのように異常を検知できるかを紹介するデモ機を展示しました。これらはすべて当社と通研電気さんとによる手作りです。
- 異常の初期状態を模したモーター(手前)とASYOMIの監視モニター(奥)
- ブースで作動展示されていたモーター。通研電気工業が3Dプリンタで制作した回転部分にネジ止めし、重心を若干偏らせることで人が検知できないレベルの異常状態を作り出す
──来場者の反応や手ごたえはどうですか。
出展者のほとんどがメーカーという中で東北電力の名前が目立つからでしょうか、興味を持ってくださる方が多いです。お客さまのニーズは「DX・DIを何とか自社工場に取り入れたい」あるいは「監視のためのセンサーを探している」など様々でした。意外なところだと「東北電力と協業して何か新しいサービスを生み出したい」というお誘いもありました。
今回は通研電気工業さんとの共同出展なので、センサーや設備に関する細かな問い合わせでもその場で対応できたのが心強かったですね。
──会場内の他の展示をご覧になってみていかがですか。
我々は発電所のDXを進めるというユーザーの立場でもあるので、ロボットによるパトロールの自動化など自社に取り込めそうな技術についても情報収集を行いました。私も色々なブースを回ってみましたが、他のブースは自然と足を止めたくなるような凝った作りになっていて、とても参考になります。比較すると我々のブースは手作り感満載ですね(笑)

ブース前で掲げる手持ち看板も手作り
──今後の予定について教えてください。
会場で名刺交換をさせていただいた方には後日コンタクトを取り、広く販売につなげていきたいと思います。
今回の経験を通じて、様々な手段でPRしていく重要性を再認識しました。今のところ他の展示会への出展の予定はありませんが、今後も認知度の向上とお客さま契約数の増加に向けて取り組んでいきます。
通研電気工業
技術本部(システム技術G)
宍戸 直哉 さん

──今回の展示会出展について、どのように受け止めていますか。
当社は、センサーの設置やお客さまデータを収集する仕組みなど開発当初から関わっており、ASYOMIとして商品化され、今回のように広く一般のお客さまにアピールできるようになったことは嬉しいですね。当社においても「東北電力グループ企業」であることをアピールすることで、東北電力さんがあげてきた実績やそれに対する信頼を通じた信用が得られているように思います。
グループ内で受注した業務が大部分を占めている当社にとって、グループ外の会社やエンドユーザーと直接話をする機会は大変貴重です。東北・新潟地域以外への進出を視野に入れた大きな第一歩だと思っています。
──今後の予定を教えてください。
今回いらっしゃったお客さまからは様々な声をいただくことができて、中には海外でこのシステムを使いたいというお話もあり、将来の展開へ向けた大きな希望を感じています。モノづくりから施工までワンストップで行えるという当社の強みを生かして、トークネットさんも含めた3社でこれからもタッグを組んでASYOMIを展開していきたいです。
ブースで放映されていたPR動画はこちら
記者の視点から
この日、同じ会場では「スマートファクトリーJapan2024秋」の他にも「JapanRobotWeek2024」「先端材料技術展2024」など計6つの展示イベントが同時開催され、数百という出展者が軒を連ねていましたが、東北電力は電力会社として唯一の出展でした。
4月に発表された今後の経営展開「よりそうnext+PLUS」では今後の事業の方向性「電気・エネルギーを中心に据えた事業の展開を通じてスマート社会の実現を目指す」としました。東北電力がこれまで「電気・エネルギー」事業で培ってきた安定供給に関わるノウハウが結実したASYOMIはまさにその方向性を具現化したような商品。今後の飛躍に一層期待です。(佐々木)

会場となった東京ビッグサイト