
DX推進部初となるグループ企業と合同でのイベント開催
「設備の3Dモデル化(デジタルツイン※)とDX関連技術のご紹介」と題して、東北電力DX推進部と通研電気工業の共同イベントが10月15日に東北電力大会議室で開催されました。
※現実空間の情報を取得し、それを仮想(サイバー)空間内に再現すること

開会の挨拶をするDX推進部(スマート保安)長峰 栄司 課長
会場には通研電気工業のブースが並び、カメラを通じた設備の状態変化を検出、監視するシステムや災害時に必要な情報の収集や報告を自動的に行うシステムなど、設備の維持管理に役立つシステムが展示されました。
- 各サービスのパンフレット
今回のイベント開催について、DX推進部(スマート保安)の高橋 仁喜 副長に伺いました。

高橋副長
──今回のイベント開催の経緯を教えてください。
DX推進部では関係室部のDX推進担当者の皆さんと日々議論を行う中で、部門や業務によって実に様々なニーズがあると感じています。そしてDXにつながる技術(シーズ※)を持っている会社は、実際の業務でどのように使われるのか、何を求められているのかを知りたいというニーズがあるので、今回はそこをマッチングさせる目的でイベントを開催しました。
※商品の元となるもの。種(seeds)から
──今回のイベントには様々なシステムが展示されていますが、「3Dモデル化」をメインにした理由を教えてください。
3Dモデル化は既に火力部門が実用化に向けて具体的な検討を進めている技術で、グループ企業を含めて他にどのようなニーズがあるか、重点的に取り上げたいと通研電気工業さんから提案がありました。DX推進部としても、3Dモデル化・デジタルツインの技術は考えられる用途が幅広く、実際の展示を見てもらうことで、利用者の目線で新たな使い道や強みが発見できるのではないかと期待しています。
──今後も同様のイベントを開催する予定はあるのでしょうか。
「DX新技術フォーラム2024」と題して、グループ外の企業になりますがDXに知見を持つ企業を招いて、従業員の皆さんが広く参加できるイベントを行う予定です。
DXは「よりそうnext+PLUS」でも重点的な取り組みに挙げられています。予算や技術、時間的な制約がある中でDXを推進していくためには、部門や個々の会社が単独で取り組むのではなく、東北電力グループ全体の力を結集することが重要です。DXを推進するために、今後も新しい取り組みを展開していきたいと思っています。
「デジタルツイン」期待集める3Dモデル化技術
会場のなかでもひときわ大きな注目を集めていたのが「3Dモデリングサービス」。施設や設備をそのまま3D化することができ、様々な活用が期待されています。この技術や将来への見通しについて、通研電気工業ソリューション推進事業部ソリューション技術Gの木村 亜門 さんにお話を伺いました。

木村さん
──3Dモデリングサービスについて教えてください。
施設や設備を専用のLiDAR※機器で撮影しデータ処理することで、実際の見た目とほぼ変わらない3Dモデルのデータを作成するサービスです。例えば設備工事に先立っての測量や、大型の設備の搬入、搬出に際してのルート検討、VR機器を装着しての安全研修などへの活用が期待されています。
※Light Detection and Rangingの略。レーザー光を発射し、その光が物体に当たって反射して戻ってくるまでの時間を測定することで距離を測定する技術。
昨年は東北電力からの委託事業、今年度は委託事業と並行して自社事業として本サービスの検証を進めています。3Dモデリングサービスを使用できる様々な現場でのヒアリングを通じて、とてもニーズが高い技術であることが分かり、今回のイベント開催につながりました。

3Dデータ化された仙台火力発電所の内部
──3Dモデル化のための撮影時間はどのくらいかかるのでしょうか。
対象となる建物や設備の構造や大きさによって変わりますが、仙台火力発電所の1Fと中2Fを撮影した例で言いますと、1カ所5分ほどの撮影を約100カ所、日数にして3日ほどかけて撮影し点群を取得しました。点群の取得はLiDARから発射されたレーザーが物体に当たって跳ね返ってくることによって行うため、物体の背面や、物体の後ろに隠れているものの点群は別の角度から改めて取得する必要があり、設備や建物の形状を完全に再現するためには様々な角度からの撮影が必要になります。

スマートフォンを使用して簡易3Dモデル化された木村さん(右)
──3Dモデル化で難しいところを教えてください。
データの使い道や使用環境に応じてモデルを使い分けする必要があるところです。例えば取得した点群データはそのままでもデジタルツイン空間として閲覧することができますが、容量が大きく、また点の集合であるため物体(かたまり)として移動させたりすることはできません。用途によって適したモデルを構築する必要があり、そこはデータ処理の技術が必要になります。
──Biz Sync特集記事でも、東日本テクノサーベイのドローンによる点群データ取得という話がありました。基本的には同じものと考えて良いのでしょうか。
はい。実は東日本テクノサーベイとも協業して、東北電力火力部の訓練センターを材料に、ドローンで取得した点群と当社の機器で取得した点群とを比較検証しています。
──イベントを通じての感触はどうですか。
多くのグループ企業から声をいただいて、高いニーズがあることを再認識しました。
また一部会社では既にデータ化に挑戦していて、しかしデータの扱いや容量などで難しさを感じていることも分かりました。当社はこれまでの経験で培ったノウハウを生かして、多くの会社のDX推進を力強く後押ししたいと考えています。

参加者の声
イベントには東北電力、東北電力ネットワークの担当者のほか、多くのグループ企業が参加しました。
今回のイベントの感想について、参加者に伺いました。
普段は火力発電所の設備メンテナンスを行っています。デジタルツインの話は元々知っていて、教育や講習に使えそうだなと思っていました。今日の展示をみて、例えば設備の搬入や搬出の際の手順やルートの検討、クライアントへの説明にも使えるという話が魅力的でした。そういった業務は私の部門では普段から沢山あって、現在はその都度平面と断面の図面を組み合わせながら検討や説明を行っているので大きな手間がかかっているのが悩みでした。3Dモデル化技術を使うことで、社内での検討がしやすいだけでなく、クライアントに対しても見やすく分かりやすい説明ができそうだと感じました。(東北発電工業 火力部(火力企画・業務)島谷 朋宏 主査)
発電所の設備に対して設計や工事を行う際、予め現地調査を行うのですが、そこに3Dモデル化が役立ちそうだと思いました。測量のために現地に足場を組んだりする手間が省けるだけでなく、現地にある設備のすべてをモデル化するため現場での測量漏れが発生しなかったり、自由なアングルで設備を確認できるなど、業務を効率的に進めることができそうだと感じました。(東北発電工業 エンジニアリング部(設計)猪股 慎平 さん)
記者の視点から
DX戦略は東北電力グループが4月に発表した中長期ビジョン「よりそうnext+PLUS」でも特に注力する項目の1つとして挙げられています。最新のデジタル技術や保有するデータを積極的に活用して、グループ全体でDXによる変革にチャレンジしていくこととしています。
BRIDGEでは今年度に入ってから、東北電力グループのDXサービスを製品として外部に販売しているいくつかの現場にお邪魔させていただきました。その際に販売面の課題として伺ったのは「東北電力グループの業務の特殊性」。例えば東北電力グループはその業務の性質上、他の企業と比較すると高い信頼性や安定性、セキュリティを必要とします。その要求内容を満たした高価なサービスは、外部のお客さまにとってはややもすると過剰品質と捉えられてしまい、苦戦することがあるのだそうです。これは、顧客の要求水準に合わせたサービスを提供することの重要性に加え、同じグループ内であれば要求する水準とサービスが合致しやすく、多くのビジネスチャンスがあるということになります。
今回、通研電気工業が出展した5つの製品展示ブースの中には既に東北電力グループ内で導入実績があるものもあり、各社の担当者は熱い視線を注いでいました。
グループ会社それぞれが持つ力を結集して進む東北電力グループのDX。今後の展開に注目です。(佐々木達彦)
