
メディア対応の極意 [5]対応は冷静に~緊急記者会見
企業が、新聞やテレビなどのマスメディアを介して情報を発信するのは、より多くのステークホルダーに活動への理解を深めてもらうためです。ステークホルダーへの情報の媒介役を担う記者とのコミュニケーションをどのように進めていけば良いのか。メディア対応の在り方(マスメディア編)について、ジャーナリストの大平宗氏に解説いただきます。(5/5)
【寄稿者】大平 宗 氏
ジャーナリスト。経済・エネルギー、企業・団体などの危機管理(メディア戦略)をフィールドに活動。東北電力「原子力の安全と信頼に関する顧問会議」委員、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)アドバイザー、復興庁参与、厚生労働省参与、高度技術社会推進協会理事などを歴任。ペンネームは河原雄三。
[5]対応は冷静に~緊急記者会見
事故・トラブル、不祥事などが発生すると、急きょ記者会見を実施すべきかどうか、の判断を迫られます。大きく報道されることが確実視される〝重大事案〟の場合、①自社へのダメージを最小限に抑える、②2次クライシス(危機の連鎖)を防ぐ、③社会に好感・納得感を与える–ために記者会見を可及的速やかに実施する必要があります。
このケースでは、ふだんよりも大勢の記者やTV局のカメラクルーが詰めかけ、TVカメラのライトや一眼レフカメラのフラッシュの放列が会場の緊張感を高めていきます。難しいことかもしれませんが、決して熱くならず冷静に対応することが求められます。

■予想可能なメディアの関心事
メディアは何に関心があり、それに対しどう答えるべきか。質疑応答で報道陣がヒートアップし、大荒れの展開となる事態を回避するには、時間的な余裕があまりない場合でも、広報部門の意見も踏まえ「想定問答」をしっかりと作成しておくことです。
事故やトラブルなどをめぐるメディアの関心事は、①事実関係、②原因究明、③責任、④未然防止、⑤補償、⑥対策、⑦引責・処分–などの点に集約できます。
事案の説明を行った後の質疑応答では、まず事実関係の確認に質問が集中。報道陣は原因究明と責任の所在にも矛先を向け、未然防止、つまり「なぜ防げなかったのか?」と、企業の対応に不備があったかどうかについて厳しく追及してきます。
被害が発生、あるいは発生が予想される場合には、被害者への補償の問題にどう対処するのか。当面の対策や、中期的な再発防止策についても回答を迫り、場合によっては経営トップの引責・処分についても斬り込んでくる可能性があります。
このように、質問についてはある程度予測がつきます。ただ実際の記者会見では、項目ごとに順序よく質疑応答が進むわけではありません。順不同、手当たり次第に質問をぶつけ、同じ内容の質問でも言い回しを変えるなど、〝変化球〟を投げてくる記者もいます。
もっとも、報道陣もすべてに満点の回答を期待しているわけではありません。回答が得られないケースも想定していますが、先達ての民放トップのように〝ゼロ回答〟の連発では〝大炎上〟必至。答えにくい質問でも、何とか答えようとする努力を怠らないことです。
たとえば、事故やトラブルの発生直後で原因の究明が進んでいない場合、どんな体制や行程で調べようと考えているのかということや、調査完了の目処など現時点で説明できる範囲で説明する。当面の対策や再発防止策も同様、考え方や方向性を示すだけでも、更なる追及をかわすことができます。
