
対話において重要なのは「共感」すること、認知バイアスは 全ての人に存在するもの
リスクコミュニケーションとは、あるリスクについて関係者間(ステークホルダー)で情報を共有したり、対話を通じて意思の疎通を図ることによって、リスクに関する相互理解を深めたり、信頼関係を構築していく取り組みです。
今回の研修には、講師として東北大学名誉教授の北村正晴先生と東北大学大学院教授の高橋信先生を招き、東北電力からは原子力部系列の特別管理職に加え、原子力発電所の立地県において地域対応に携わる青森・宮城支店の支店部長兼営業所長、女川・東通原子力発電所の社員など16名が参加しました。
研修前半では座学が行われました。
北村先生は、東北電力が2011年度から2021年度まで開催してきた「原子力のあり方に関する有識者会議」で座長を務め、原子力工学やリスクコミュニケーションが専門分野。「原子力対話のKSA」と題し講義を行いました。原子力コミュニケーションの担い手にとって必要な「KSA=Knowledge(知識)、Skills(スキル)、Attitudes(基本姿勢))」について説明し、対話において「共感」が最も大事なキーワードであることを力強い言葉で受講者に語りかけました。
また、原子力、リスクコミュニケーションが専門分野の高橋先生は、「リスクコミュニケーションにおける判断のバイアス」と題し講義。原子力コミュニケーションを行うにあたっての姿勢や留意点について、「全ての人の判断は認知バイアス※の影響下にある」と説明した上で、原子力に対する社会の信頼を高めていくためには、その人が持つ「専門性」や「人柄」に加えて「価値観の共有が大事」と繰り返し強調しました。
※意思決定をするときに、先入観や経験則、直感などに頼って非合理的な判断をしてしまう心理傾向のこと
北村先生・高橋先生による講義の様子
研修後半では、講義で学んだスキルを活用した実践的なグループワークに取り組みました。事前課題として受講者から集めた「お客さまなどとの対応で苦労した、原子力に関する質問や批判とその際の自身の回答」のうち、よく聞かれる代表的な質問・批判について、「自分ならどのように答えるか」「どのように相手に伝えるか」をテーマに、各グループの受講者がお客さま役・社員役・撮影者役を順番に担当し、対話ロールプレイを行いました。
例えば「女川原子力発電所2号機は事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所と同じ型の原子炉だが、大丈夫と言えるのか」などの質問や、「六ヶ所村の再処理工場の稼働が見通せない状況で原発を再稼働し使用済燃料を発生させることは無責任ではないか」などの意見に対し、受講者は自身が持つ「原子力に関する知識」と、講義で学んだ「対話の姿勢やスキル」などを組み合わせながら対話を行うとともに、グループ毎に良かった点・改善点などについて意見交換を実施。印象的だった対話事例の動画を参加者全員で共有しました。
対話ロールプレイでは、受講者全員が原子力に関する質問や批判に対し、真剣に回答しました。
リモート受講者もTeamsを通じて対話ロールプレイに参加
対話スキルの更なる向上にむけた、先生方からのアドバイス
研修の最後に、北村先生から、「対話において知識がなくてもコミュニケーションは取れる。ただし、コミュニケーションを主導する立場に立つ方は、ぜひ知識を増やす努力と、並行して対話スキルも上げていっていただきたい」と激励の言葉が贈られました。
また、高橋先生からは「対話を実践する前に、Chat GPTなどを活用した壁打ち(アイデアや課題についてAIと対話を交わすこと)を行うことは非常に有効。ぜひ試してほしい」とアドバイスがありました。
受講後のアンケート結果から、北村先生・高橋先生の講義について「『知識はなくとも話すことはできるはずである』、『会話の“間”を恐れてはいけない』という言葉が胸に刺さった」「異なる立場の人との対話におけるポイントは価値を共有すること、その実例として六ヶ所村における対話の際、それぞれ原子力に賛否はあるものの、価値感の共有(子や孫の将来について憂う気持ち)により推進派と慎重派の間に歩み寄りがあった話については非常に感銘を受けた」などの感想が寄せられました。
ソーシャルコミュニケーション部門では、今後もコミュニケーションスキル向上に資する研修や勉強会を開催していくこととしています。