
入賞作品で振り返る、中学生が見つめてきた東北・新潟の50年
「心豊かな成長」というコンクールの願いに応えるように、これまでに延べ約2万4千校から約72万編の作品が寄せられました。応募作品には中学生の目線から見たその時々の「時代」や周囲とのつながり、自らの思いや決意が描かれてきました。
これまでの入賞作品の一部を通じて、コンクールの50年を振り返ります。
地域とのつながり
第3回(1977年)の最優秀賞作品、秋田県田沢湖町立玉川中学校1年田中一さんの「ぼくの体にもマタギの血が」の舞台となった集落は現在ダムの底に沈んでいます。この作品で田中さんはクラスの仲間とあと数年でなくなってしまう自分たちの集落の歴史を調べ、その中で出会ったマタギとの会話を通じて自分たちのルーツがマタギであることを心に刻み、玉川を離れても「勇かんなマタギの血」と共に新しい土地で頑張っていくという決意を固めています。各地で行われていた治水事業のためにふるさとを離れざるを得なかった人々の思いに触れることができる作品です。
第13回(1987年)の最優秀賞作品、青森県八戸市立大館中学校3年永洞真希子さんの「夜店」は、家族ぐるみで営んでいた仕事をきっかけに感じたふるさとへの愛着がテーマの作品です。普段朝市で果物や野菜を売っている祖母の店がお盆の8月12日だけ特別に行う夜間の営業を手伝う中で、永洞さんは次から次へとやってくるお客さんをさばく苦労と、お店に来るお客さんの楽しそうな姿や八戸訛りの言葉に心が和んだことを、ユーモラスかつ温かみのある文章で振り返っています。
家族の仕事、家族の愛情
作品のモチーフとして多く見られた「家族の仕事」。仕事を通して、自分に対する家族の愛情を知るきっかけとなっていました。
第20回(1994年)の最優秀賞作品、青森県南郷村立中沢中学校3年坂本友美さんの「『おやじ』の自転車屋」は地元で自転車整備業を営む父親の話です。周囲の父親が「大概がお勤め」であるなかいつも油にまみれている自らの父親を周囲に対して恥ずかしく思っていた坂本さん。そんな彼女が、父親が娘と仲良くしてくれていることへの感謝から、同じ学校に通う友人の自転車を無料で点検していることを知って気持ちが変化し、ラストでは「日本一の自転車屋」と爽やかに胸を張る姿は心を打ちます。
第33回(2007年)の最優秀賞作品、山形県東根市立第一中学校2年青山周平さんの作品「僕の朝」でつづられているのは亡くなった祖父への思いです。青山さんは祖父が使っていた部屋と一緒に愛用品の目覚まし時計を譲り受けたことを機に祖父と同じ午前四時に起き、果物農家だった祖父の形見であるさくらんぼ畑へ出ます。そこで青山さんは「主のいないさくらんぼの木」が芽吹いているのを見つけ、自分自身と重ね合わせます。早朝のひんやりした風景に祖父の愛情を感じる様子を、しっとりとした文章で描いています。
体験と成長
体験を通じた自らの成長というテーマも、多くの作品に見られました。
東日本大震災のあった2011年の第37回の優秀賞作品、青森県十和田市立甲東中学校3年小村帆乃香さんの作品「踊りと共に歩む」には震災による大きな影響が記されています。日本舞踊の家元の家に生まれ3歳から踊りを始めた小村さんは母の厳しい教えや震災を経て生まれた新たな公演を通じて、これまでとは異なる気持ちで踊りと向き合うようになり、中学卒業後は本格的に踊りに取り組むという決意を固めます。踊りを極める大変さと、踊りを通じて人々を励ます充実感がやさしく表現されています。
第46回(2020年)の最優秀賞作品、山形県南陽市立赤湯中学校3年佐藤充朗さんの作品「命と向き合う」のテーマは人間と動物の共生。サギの駆除活動に参加した佐藤さんは散弾銃で撃たれながらも巣へ餌を持ち帰ろうとする親鳥の姿や、一方で希少種のサギがその駆除を免れる様子を目にして人間の都合による駆除への葛藤を覚え、人とサギが共存できる方法を探ろうとします。暴れるサギの首を自らの手で折るシーンは真に迫る筆致で、佐藤さんが感じた衝撃や苦悶の強さを感じることができます。
コンクールの果たしてきた意義
これまで東北・新潟の中学生の思いが込められた沢山の作品に支えられ、コンクールは50年という長い期間にわたり、途絶えることなく続いてきました。
コンクールが果たす意義について、第50回(2024年)の最優秀賞受賞校である秋田県五城目町立五城目第一中学校の志田裕子校長は「自分が経験したことや出会った出来事、またそこから抱いた思いや考え、それらを丁寧に言葉に紡いでいくことは、自分の気持ちを整理することにつながる。同時に主観的な心から少し離れた位置で、自分自身やその出来事を俯瞰して見つめ直すこともでき、自分自身についてより深く理解することにもつながる。『書く』という作業は大変時間のかかることだが、中学生には自分の思いを自分らしい言葉で紡いでいくことを大切にしてほしい。コンクールは中学生にとってこれからの社会へ羽ばたいていく大きな一歩になってくれると思う」と述べています。
「感謝の気持ちを込めて」特別企画を実施
東北電力ではコンクールが節目となる50回を迎えたことを記念して、これまで応募した中学生や教育関係者への感謝の気持ちと「作文を通じて、心豊かに成長してほしい」という変わらない思いを伝えることを目的に特別企画を展開しました。
色鉛筆画家によるオリジナルアートを最優秀賞受賞者へ進呈
福島県出身の色鉛筆画家である大竹恵子さんは色鉛筆の優しい色合いを生かした心温まる作風で、故郷の風景を中心に作品を制作しています。
東北電力は大竹さんに、第50回コンクールの最優秀賞作品「僕の決断 五城目町への移住と夢へのエネルギー」を題材にしたオリジナルアートの制作を依頼し、表彰式で石塚さんへ贈呈しました。出来上がった作品について大竹さんは制作を振り返り、「今回の作文は目に見えないエネルギーをつづった、深みのある素晴らしい作品。したがって普段の作品のように具体的な場面を描くのではなく、石塚くんが傷つきエネルギーが出ない状態やお父さんの怒りといった『マイナスのエネルギー』、五城目町に移住したことで触れた『プラスのエネルギー』を抽象的な表現に挑戦した。『マイナスのエネルギー』を表現に入れることは少し迷ったが、石塚くんは勇気をもって作文に書いたのだと思うし、その経験があるからこそこれから強く優しく生きていけるのだと思う。目に見えないものを見たり感じたりしている石塚くんにぜひ伝わってほしい」と述べました。
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大竹さん制作のオリジナルアート。明るいエネルギーを表現した円は優しさの他、水車や風車といった「回ってエネルギーが生まれるもの」にもつながっている
アナウンサーによる作品朗読 26年前につづった「大人の自分に望むこと」
岩手県盛岡市出身のフリーアナウンサー名久井麻利さん。名久井さんは第24回(1998年)の応募作「大人の自分に望むこと ~将来の夢~」で佳作入選しました。作品では10年後25歳になった自分へ向け、雑誌を通して本当に長く愛せるものを紹介できる雑誌編集者になりたいこと、さらには喜びを見つけるのが上手な人、自分を幸せにする方法をたくさん知っている人になり、またその幸せを周囲に分けてあげられる人になりたいとつづりました。
※本動画はWING端末から視聴できない場合があります。ご視聴の際にはご自身のスマートフォンなどからご覧ください。
26年ぶりに自分の作文を読んだ名久井さんは「現在の仕事に通じる軸は中学生当時から変わらないことに気付いた。『将来の自分を支える心から好きなもの・ことを見つけてほしい』というメッセージを令和を生きる中学生の皆さんにも発信していきたい」と述べました。

「作文を書く中で気づいた陸上への思い」世界で活躍するマラソン選手からの応援メッセージ動画
女子マラソンで活躍する鈴木優花選手。鈴木さんは第39回(2013年)コンクールの応募作「走り抜いた夏」でバスケットボール部員でありながら長距離選手としても活動することに葛藤する自分の心と、長距離への挑戦を応援してくれるバスケットボール部員への感謝、自分を支えてくれている多くの人への感謝などをつづり、佳作入選しました。
鈴木さんは当時を振り返り「中学生という自分の将来を考える大切な時期に東北電力の中学生作文コンクールに参加することで、陸上やマラソンの道を突き進みたいという気持ちになれました。ぜひ中学生の皆さんも自分自身の育成だけでなく、生まれ育った地域の皆さんが喜ぶ成長を遂げていってほしい」と応援メッセージを送っていただきました。
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「たくさんたくさん悩んで」元乃木坂46・生駒里奈さんによるサプライズトークイベント
3月6日、第50回の最優秀賞受賞校である秋田県五城目町立五城目第一中学校において元乃木坂46・生駒里奈さんによるサプライズトークイベントを開催しました。秋田県出身でもある生駒さんは仕事をする上での原動力やふるさと秋田への思いについて「上京して分かる秋田の良さがある。私は秋田で育ったからこの性格なんだと思うし、芸能人をやることができている理由も秋田にあると思う。秋田の皆さんは私を応援してくれるし、私も秋田を守りたい」と述べました。会場に集まった中学生に対しては「子どもであるということを利用してたくさん挑戦してほしい。たくさん悩んで色々なことを勉強してほしい」とエールを送りました。卒業を控えた3年生からは「生駒ちゃんが掲げる信念を胸に高校生活を頑張っていきたい」などの声があり、生駒さんとの交流を楽しみました。
特別企画を担当した総務・地域共創部門(地域共創・広報)吉永 健二郎さんより
記念すべき50回の作文コンクールは「わたしのエネルギー」をテーマに事務局や審査員の胸を打つすばらしい作品が多数集まりました。今年も「未来を見つめる新鮮な目と感動する心を育むこと、心豊かに成長すること」を願い、第51回作文コンクールの開催に向けて企画・検討を進めています。 中学生のお子さまがいるご家庭は、ぜひおすすめしてみてください。ご応募を心よりお待ちしております! |
