原子力業界一体となった安全性向上の取り組み ~JANSIピアレビューが実施されました~

 東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故への反省と教訓を踏まえて、原子力業界は自主的・継続的な安全性向上に向け、一体となって取り組んでいます。そのための活動の一つとして、事業者をサポートする機関の一つであるJANSIによるピアレビューが、9月2日から18日にかけて女川原子力発電所で実施されました。

安全性を追求する原子力産業界をサポートする様々な組織

 女川原子力発電所2号機が再稼働してから、まもなく1年。「安全対策に終わりはない」との確固たる信念の下、東北電力は原子力発電所のさらなる安全性の向上に継続して取り組んでいます。

 社内の安全監視機能の充実を図ることに加えて、社外の視点も活用して原子力業界全体の安全性向上を追求するため、原子力リスク研究センター(NRRC)、原子力エネルギー協議会(ATENA)、原子力安全推進協会(JANSI)、世界原子力発電事業者協会(WANO)により事業者をサポートする仕組みが作られています。

 

原子力リスク研究センター(NRRC):電力中央研究所内に設置され、原子力発電所で発生する可能性がある事故の発生頻度と影響度合いを定量的に評価する手法(PRA)の開発などに取り組んでいます。PRAで得られる結果を用いることにより、効果の高い安全対策の検討に生かすことができます。

(参考)■原子力部門■電力中央研究所 原子力リスク研究センター(NRRC)所長との対話を実施

 

原子力エネルギー協議会(ATENA):国内外の動向を把握し、安全性に関する重要度の高い共通的な技術課題をテーマとして選定し、解決に向けた安全性向上対策を策定しています。また、原子力業界の代表として規制当局と対話し、安全性向上対策に関する論点やニーズの共有を図っています。

 

電気事業連合会「さらなる安全性の追求」より(クリックで拡大します)

 

原子力安全推進協会(JANSI):東京電力福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさないため、事業者から独立して原子力安全を牽引する組織(自主規制組織)として発足しました。JANSIでは、日本の原子力産業界における世界最高水準の安全性(エクセレンス)の追求をミッションとしており、最新のエクセレンスを把握し、それをベースとしたエクセレンスの設定と事業者に対する評価と支援のサイクルを回しています。

 

JANSIホームページより

 

世界原子力発電事業者協会(WANO):チェルノービリ原子力発電所事故を契機に、JANSIと同様に自主規制組織として発足し、世界125の国と、米国、欧州、ロシア、中国など各国の全ての商業炉460基が加盟しています。4つの地域センター(アトランタ、モスクワ、パリ、東京)が置かれ、東京センターには、日本の電力各社のほか、中国、韓国、インド、パキスタン、台湾の原子力事業者が所属しています。

(参考)■原子力部■「世界原子力発電事業者協会(WANO)隔年総会」に樋󠄀口社長が参加

 

女川原子力発電所のJANSIピアレビューの実施について

 9月2日から18日まで、女川原子力発電所でJANSIによるピアレビューが実施されました。この対応にあたった原子力部(原子力運営)の小池 都司 主査にお話を伺いました。

 

原子力部(原子力運営) 小池 都司 主査

 

──ピアレビューとはどのような取り組みですか。

 ピアレビューとは、「ピア=同業者・仲間」による「レビュー=評価」という意味です。ピアレビューでは知識・技術・運用・チームワーク・安全を追求する姿勢、リーダーシップ発揮の有無などの様々な観点について、法令遵守状況の確認に留まらず、世界最高水準(エクセレンス)と比較されます。

 私は、原子力発電所の安全性向上を推進する「パフォーマンス改善」という業務を担当しています。その中でもピアレビューは最も重要な活動です。

 原子力業界は、世界中どこの発電所で事故が起きても相互に大きな影響を受けます。例えば、福島の事故を受けて、世界中の事業者が自主的に対策を追加したり、あるいは規制が強化されたり、場合によっては原子力そのものから撤退する判断をした国や事業者もあります。国内ではJANSI、NRRC、ATENAが組織され、世界では125の国・原子炉460基が加盟してWANOという組織を構成し、相互に強く監視・評価しながら原子力安全の追求をしています。

 私たちは、これら世界中の仲間のプレッシャー(ピア・プレッシャーと呼んでいます)を受けながら、切磋琢磨しています。

 

──今回のピアレビューの概要を教えてください。

 女川原子力発電所のピアレビューでは、海外レビュアー、他電力の経営層を含む約30名のレビュアーと約20名のスタッフにより、「運転」「保修」「教育・訓練」などの全10分野が、大規模かつ徹底的に評価されました。評価項目は「原子力安全を追及するために組織が有効に機能しているか」「運転員はプラント異常時の事故シナリオに対し、適切に対応できるか」といったもので、レビュー自体の期間は3週間ですが、調整や事前観察も含めると約半年におよびます。

ピアレビューの様子

──ピアレビューではどのような評価やコメントがされたのでしょうか。

 良好事例として「運転部門管理層は再稼働にあたり2号機当直各班に発電課長経験のあるシフト・テクニカル・アドバイザー(STA)を配置し、再稼働およびその後の中間停止・起動における発電当直のヒューマンエラーゼロ達成に寄与した」「プラントの安定運転を維持するために重要な原子炉起動前後の系統水の浄化戦略を立案し、起動対応にあたっては、サンプリング・分析を高頻度で行い、適切に化学管理を遂行した」といった評価がありました。この取り組みはどちらも女川原子力発電所が13年ぶりの再稼働に向けて力を入れて策定したもので、「他の事業者の参考となるべき世界最高水準の活動である」と高く評価されたものです。

 一方で、「要改善事項」として「異常時対応における運転員が行う正確な制御に関していくつかの弱みが見られる」「作業現場において発見された作業員の安全上の良くない振る舞いや危険個所が是正されずに残っている場合がある」など、レビューを受けた全10分野のうち8分野において、計10項目の指摘がありました。

 

──今回の対象は女川原子力発電所でしたが、東通原子力発電所が対象となることもあるのでしょうか。

 東通原子力発電所については4月に、WANOによるピアレビューがありました。

WANOによる東通原子力発電所のピアレビューの様子(2025年4月)

──ピアレビューの重要性をどのように考えていますか。

 私はピアレビューを定期検診のようなものと捉えています。定期検診で所見が出れば生活習慣を改善したり、時には治療も行いながら、次の検診でその結果を確認しますよね。指摘された要改善事項に対しては、発電所と本店が連携のうえ、次のピアレビューまでに着実に改善を実施していきます。またJANSIはレビュー(評価、検診)のみならずサポート(治療)のサービスも提供する、お医者さんのような存在ですので、積極的に連携していきます。

 我々はこうした取り組みを通じて、原子力業界一体となった安全性向上に継続して取り組むと共に、特にピアレビューを改善の好機と受け止め、安全確保を最優先とした原子力発電所の安定運転に努めていきます。

 

 

 

 

イイね!
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