
日建連表彰「土木賞」とは?
一般社団法人 日本建設業連合会(以下「日建連」)では、国民生活や経済活動を支える社会基盤として、土木分野の優れたプロジェクトや構造物などを対象に「土木賞」を表彰しています。
この表彰は、完成した構造物だけでなく、事業企画から設計・施工、維持管理までのプロセス全体を対象とするもので、施工中に直面した課題をどう乗り越え、求められる品質をどのように達成したかが評価されます。過去には鉄道・道路事業者、大手ゼネコンなどの大規模かつ困難な工事が受賞しており、非常に栄誉ある賞とされています。
今回の受賞は、自然災害に備えた原子力発電所の安全性向上への取り組みや、課題克服に向けた技術的工夫・施工プロセスが高く評価された結果であり、東北電力が日建連表彰「土木賞」を受賞するのは今回が初めてとなります。

受賞関係者による記念撮影の様子

日建連表彰式の様子
(左側:尾形土木建築部長 中央:宮本日建連会長 右側:金子国土交通大臣)
日建連表彰2025「第6回土木賞」を受賞! ~受賞概要の紹介~
東日本大震災の震源地に最も近接した原子力発電所である女川原子力発電所は、震災では震度6弱の地震と高さ約13mの津波に見舞われました。発電所は深刻な被害こそ受けませんでしたが、東北電力は原子力発電所と立地地域のさらなる安全性向上のため、高さ29m、総延長800mの防潮堤を建設しました。

防潮堤概要図
【防潮堤の安全性向上への取り組みについて】
防潮堤は、東日本大震災の経験を踏まえてつくられた新しい基準に沿って、厳しい審査を経て設計・施工されており、工事の終盤では、審査での議論を反映して一部の構造を見直しました。結果として、当初の設計よりもさらに安全性が高く、より堅牢な防潮堤の設置につながりました。
設計にあたっては、東北地方太平洋沖地震などの最新の知見を反映しました。例えば、最大加速度1,000ガルの地震や、想定23.1mを超える25mの津波水位など、厳しい条件を設定。さらに「地震が起きた時」「津波が来た時」「津波と余震が重なった時」といった複数の状況を想定し、津波で流された車両が衝突した場合に相当する荷重などに耐えられるよう設計しています。
また、防潮堤の基礎地盤には盛土で構築された箇所もあります。そうした場所では地盤改良やコンクリートへの置き換えを行い、岩盤相当の強さを確保しました。水の浸入を防ぐためには、鋼製遮水壁間に止水ジョイントを設置し、さらに地下から回り込む水に対しても置換コンクリートを追加。津波が防潮堤高さ(海抜29m)で30分間滞水した場合でも、敷地内に水が浸透しないことを解析により確認しています。

左図:当初設計 右図:さらに安全性を高めるための構造変更
【工事について】
発電所の安全を早期に確保するため、膨大な施工数量を短期間かつ高精度で完了させる必要がありました。さらに、安全性を高めるための構造変更は、主要構造がほぼ完成した段階での追加施工であり、狭隘な現場で並行して各種安全対策工事を進める中での作業となったため、大きな困難を伴いました。これらの課題を克服するため、各協力会社とともにさまざまな工夫を実践しました。
―大口径鋼管杭の精密な施工―
鋼管杭(大きな鉄の柱)は、ほんの少しでもずれたり傾いたりすると、水を止める部材である鋼製遮水壁同士がぶつかって、止水ジョイントの施工ができなくなる恐れがあったことから、通常よりもはるかに厳しい精度で杭を立て込む必要がありました。専用の作業台を開発し、杭のずれをわずか1㎝以内、傾きもほとんどゼロに近い状態で施工することに成功しました。

鋼管式鉛直壁・漂流物防護工構造図

鋼管杭掘削用架台設置状況
―巨大な石を含む地盤の改良(高圧噴射攪拌工の適用)―
構造変更により既に打ち込んだ杭の下を地盤改良する必要がありました。通常よりも大きな直径(4.5mから5.5m)で改良する必要がありましたが、サッカーボールほどの大きな石を含む地盤でこの工法を使うのは前例がありませんでした。そこで、噴射の圧力や流量、時間などを変えて試験施工を行い、条件を見極めた上で、昼夜体制により工事を実施しました。施工後に試験も実施し、要求性能が確保されていることを確認しています。
- 試験施工での改良径確認状況
- 鋼管杭直下の地盤改良状況
―置換コンクリート工事と鋼製遮水壁工事の合理化―
構造変更により防潮堤の前面に大規模な掘削を伴う置換コンクリート工事と、その上部にある鋼製遮水壁に漂流物防護工を設置する工事が追加されました。これらを同時に進めることで工期を大幅に短縮しました。さらに、漂流物防護工を分割して施工できるよう工夫し、精度を保つため専用の治具を製作しました。これにより、安全性と品質を確保しながら、効率的な施工を実現しました。
- 置換コンクリート・漂流物防護工の施工状況
- 置換コンクリート打設範囲掘削状況
―石炭灰を活用した環境に優しいコンクリート―
追加の置換コンクリート工事では、約15万㎥もの大規模なコンクリートを1年で打設する必要がありました。作業の効率化と材料の安定供給を考え、自社の火力発電所で発生する石炭灰を有効利用したコンクリートを採用しました。通常は廃棄される石炭灰を約13万tも有効利用できたことで、廃棄物の削減やCO₂排出量の低減にも大きく貢献しました。
工事担当代表者からのコメント(女川原子力発電所 土木建築部 小笠原部長)
このたびは、栄誉ある「日建連土木賞」を受賞することができましたこと、たいへん光栄に存じますとともに、工事関係者を代表し、心より御礼申し上げます。
本賞は、設計者や施工者(これを支える専門工事業者などを含む)など多様な関係者を表彰対象者とし、事業企画から維持管理までの総合評価に加え、施工プロセスの視点を重視して選定されるものです。
本プロジェクトでは、東日本大震災直後から、次にいつ発生するか分からない巨大津波に備え、国の審査に先立って津波評価と構造設計を行い工事に着手しました。その後、国の審査を踏まえ、さらなる安全性向上のため追加工事を実施し、10年余りにわたり関係者一丸となって安全性の追求を続けてまいりました。
これは、震災で被災された地域の皆さまへ安心をお届けするとともに、事故なく電気を安定して送り続けるという電気事業者としての強い覚悟のもと、妥協なく取り組んできたものです。
発電所構内の限られたスペースにおいて、巨大な防潮堤を構築する工事は困難を極めました。防潮堤周辺で輻輳する安全対策工事との調整や、前例のない地盤改良など、関係者一同が知恵を絞り、諦めることなく対応を重ねてきたことが評価され、今回の受賞につながったものと考えております。本工事に関わってくださったすべての皆さまのご尽力に、心より感謝と敬意を表します。
今回の受賞を励みにして、今後も引き続き、発電所の安全向上に努めてまいります。
※土木学会「技術賞」・地盤工学会「技術業績賞」の受賞については、こちらの記事から



