安全文化の深化に向けて─ JR出向者&受入出向者に聞きました─

 東北電力と東北電力ネットワークは10月31日、安全文化の深化に向けてJR東日本での経験を共有し、東北電力グループ社員の気づきや行動につなげるため、JR東日本への出向者とJR東日本からの受入出向者による対談を行い、その動画を公開しています。

JR東日本への出向者とJR東日本からの受入出向者による対談

 対談ではJR東日本の事故事例や東日本大震災での避難にまつわるエピソード、事故防止活動の紹介などが行われ、安全文化の深化に必要な考え方や安全活動を行ううえで重要なポイントなどの話がありました。対談の様子を収めた映像は第1章から第4章まであり、第1章は以下の配信リンクから視聴が可能です。第2章以降は1月から順次アップロードされていく予定となっています。
鉄道×電力 ~安全の交差点~ 第1章(視聴は東北電力、東北電力ネットワーク社員のみ)

 

 

撮影風景

 

 BRIDGEでは動画の内容をより身近に感じていただくため、出演した2人にインタビューを行いました。対談に参加したのは東北電力安全保安管理室の吉田副室長(2025年7月よりJR東日本から出向中)と、東北電力ネットワーク安全・品質管理室の小玉課長(2025年6月までJR東日本へ出向)のお2人。それぞれJR東日本、東北電力ネットワークの社員ですが、JR東日本で安全に関する活動を行う部署にいたという共通点があります。

安全管理は「マネジメントそのもの」 ~安全保安管理室 吉田 篤 副室長~

 

安全保安管理室 吉田 篤 副室長

 

──JR東日本ではこれまでどのようなお仕事をされてきたのですか。

 最初は現業部門で車両のメンテナンスや乗務員業務(車掌)、輸送指令業務を担当していました。その後、本社の企画部門に移り、運輸車両部(当時の部署名)では本社指令業務を、安全企画部で安全文化の浸透に関する業務を担当しました。その際には、JR東日本グループの安全に関する5カ年計画である「安全ビジョン2013」の策定にも携わりました。

──安全保安管理室では副室長をされていますが、東北電力グループの安全管理をどのように見ていらっしゃいますか。

 2024年10月に制定された「東北電力グループ安全管理の考え方」では「現地、現物、現人」という三現主義を重視する姿勢が明確に示されています。

安全管理の考え方

 

~現場が安全の起点※~

 

安全は、私たち東北電力グループの使命を果たすための、最優先となるものです

私たちは、「東北電力グループ安全・保安方針」のもと三現主義(現地、現物、現人)を重視し、

現場に赴き、働く人の声を引き出し、必要な改善や対応を現場が自律的に行う、すなわち「現場が

安全の起点」であることを安全管理の考え方として取り組みます

※安全の問題は常に現場で起き、解決策も必ず現場にある。現場で働く人は安全の主役であり安全の起点となる。

詳細はこちら(東北電力・東北電力ネットワークのみ閲覧可能です)

 

 安全保安管理室は、東北電力グループ全体に対する安全に対する各種施策の企画や、各社で実施している取り組みの共有や水平展開といった、いわゆる「横串」の役割を担っています。その中で、この「三現主義」をしっかりと根付かせるために、さまざまな施策を展開している点がとても印象的です。

──東北電力に出向されて4カ月が経ちました。東北電力の印象はいかがですか。

 普段のお仕事でお忙しい中、何時間もかけて遠い現場を案内して、丁寧な説明をしてくださる東北電力グループの皆さんには本当に感謝しています。また、電気の安定供給のために、自然を相手に危険と隣り合わせの現場で懸命に作業をされている姿には、心から敬意を抱いています。

──現場環境において、鉄道会社との違いを感じる部分はありますか。

 鉄道と電力、どちらも安全確保を最優先にしている点は共通しています。しかし、現場環境にはそれぞれ特徴があります。鉄道では高所作業といっても線路や架線周辺が中心で、電圧も通常は25kV程度です。一方、電力では山岳地での鉄塔建設・維持管理や、火力・原子力といった高温・高エネルギー設備の管理など、異なるリスクに対応する必要があります。

 こうした違いはありますが、両社とも『安全はすべてに優先する』という理念を共有しており、現場での安全文化を高める努力は同じです。

──東北電力で働いて驚いたことはありましたか。

 まず、連絡体制が非常に整備されていて、アドレス帳に全社員が掲載されており、簡単に連絡できることに感心しました。社長の社員番号まで確認できるのは驚きでした。

 また、規程や基準がしっかり整備されていて、業務に必要な事項が明確に定められている点も印象的です。組織として非常に統制が取れていると感じました。もちろんJR東日本にも同様の仕組みはありますが、東北電力ほど細かく整備されているわけではありません。

──東北電力グループの安全管理について、今後大事にしていくべきことは何だと思いますか。

 ひと言で言えば「数字だけにとらわれないこと」だと思います。

 例えば熱中症を例にとると、昨年度は34件の発生でしたが、今年度は気温が非常に高かったこともあり、67件と倍近くに増えました。では、これは安全管理が悪化したことを意味するのでしょうか。必ずしもそうではありません。

 私たちが目指しているのは熱中症の発生件数をゼロにすることではなく、重傷者や重篤者を出さないことです。そのため、「熱中症が起きたら、ためらわずに救急車を呼んでほしい」と繰り返しお願いしてきました。結果として、今年度は重傷者・重篤者はゼロでした。

 これは現場の皆さんが仲間の体調に気を配り、迅速に受診を促してくださったおかげだと思います。でも、もしかしたら熱中症の発生件数を気にして受診をためらってしまう方が、まだいるかもしれません。そうした方々にも行動を変えていただけるよう、様々な機会をとらえて、発信をこれからも続けていきたいと考えています。

 

 安全管理における災害の発生件数はあくまで1つの指標にすぎません。大事なのはその数字の背景にある要因や増減の理由に目を向けることです。現場のモチベーションや仕事の進め方、管理のあり方まで踏み込んで議論し、私たちが大切だと思う価値観がきちんと現場に根付いているか、三現主義で丁寧に向き合っていくことが求められます。安全管理とは単なるルールの整備やチェックによる確認ではなく、職場を適切にマネジメントすることそのものだと考えています。

 

安全管理は「仲間への思い」 ~安全・品質管理室 小玉 健 課長~

 

安全・品質管理室 小玉 健 課長

 

──JR東日本に出向されるまでのキャリアについて教えてください。

 配電部門一筋でした。入社は青森営業所の配電テクノセンター(当時)で、本社の配電部ではシステムに関係する仕事をすることが多く、トインクスへも出向経験があります。

 なのでJR東日本への出向を聞いた時も「電気やシステムに関係する業務かな?」と思っていました。

──JR東日本ではどのような業務をされていたのですか。

 本社の安全管理部門である安全企画部というところで、事故はもちろんのこと、「事象」と呼ばれる、事故に至らなかったトラブルの要因分析や再発防止をしたり、安全人材の育成や過去の事故に対する風化防止活動などを行っていました。これまで東北電力ネットワークでやってきた業務とは全くの畑違いで最初は戸惑いましたが、徐々に慣れ、時には運転台に乗せてもらったり、利用者の立場では見ることができない駅の裏側を見ることができたりと、色々と特別な経験をさせていただきました。

──企業文化など、東北電力ネットワークと違いを感じる部分はありましたか。

 物事を進める時に「大枠を先に発表して細部は実施しながら決めていく」というような、いわゆる「走りながら考える」的なスタイルが多かったことですね。組織整備ひとつとっても、目的に応じた組織編成を先に発表して、細部の業務分掌や役割分担などは運用開始後に検討する、というようなことがありました。

──逆に東北電力ネットワークと同じだと感じる部分はありましたか。

 大雨や台風が近づいてくると事前に色々と備えたり、幹部の方が交代で本社の近くに宿泊し、有事にすぐ駆け付けられる体制を敷くといった対応を取っているのを見て、生活になくてはならないものを支えている使命感は同じだと感じました。

──JR東日本の安全活動や安全管理体制はどうでしたか。

 東北電力グループでいう「地域社会との共栄」のように、JR東日本グループは経営のトッププライオリティに「安全」を掲げていて、全社を挙げて「究極の安全」を追い求めています。私は安全企画部の業務に携わる中で、JR東日本の充実した安全活動を支える手厚い組織体制があることを知りました。

 

 印象的だったのは、社内の各所に安全企画部長から認定を受けた「安全エキスパート」と呼ばれる人たちがいて、その中から課題をクリアして社長から「安全のプロ」として認定を受けた一部の方は、各支社にある安全企画ユニットの元で現場の安全活動を主導する専任職となる仕組みがあり、安全管理が1つの部門として独立した体系を持っていたことです。専任職に認定する制度は東北電力ネットワークのT-SALとも似ていますね。

(参考)■安全・品質管理室■T-SAL(東北電力ネットワーク安全先進リーダー)を認定|東北電力社内報 デジタルBRIDGE (tohoku-epco.co.jp)

 

 JR東日本では「企画」や「総務」といった業務のように、「安全」を自分の目指す道として志す人がたくさんいるんです。「安全」の道が長い人は、冗談半分で「まるあん印が付いている」などと言われていましたね。

 

JR東日本の安全管理業務の備品などにつく「まるあん」の印

──JR東日本への出向を通じて、安全に関して考え方が変わったところはありますか。

 安全の道を志す人たちを見ているうちに、安全管理という仕事における「やりがい」について、自分なりに思ったことがあります。

 安全管理は誰もが重要性を理解している一方で、どうしても「成果が見えづらくて面倒な仕事」のようにネガティブに捉えられがちです。しかし、例えば自分が「気を付けてね」と声がけをしたり、あるいは何らかのルールを制定したことで、その成果は直接は見えなくても、回り回ってどこかで起きる事故や怪我を未然に防ぎ、そこにいる仲間の平和な日常を守るかもしれない。「まるあん」のひたむきな活動を支えているのは、そういう「仲間への思い」なのではないかと思いました。

 東北電力グループにおいても、「仲間への思い」を込めた安全活動を広めていきたいと思います。

 

JR東日本を離任する際に職場の方々からいただいた「安全綱領手ぬぐい」(クリックで拡大)

 

安全保安管理室から

 今回の対談動画はもうご覧になったでしょうか?

 BRIDGEのインタビューと合わせて見ていただくことで、2人の安全にかける思いを一層身近に感じられる内容となっていますので、未視聴の方は是非ご覧ください。(動画リンクは記事前半に掲載しています)

 

 安全について、日々考えている方もいれば、普段はあまり意識しないという方もいると思います。

 安全管理をどう考えるか、たくさんの答えがあると思います。今回のインタビューで吉田副室長と小玉課長の言葉にあった「マネジメントそのもの」「仲間への思い」、いずれも多くの現場で安全を考えてきた2人ならではの言葉だと感じました。

 ぜひ皆さんも今回の記事を機に、東北電力グループの安全管理の考え方「現場が安全の起点」を踏まえて、安全管理というものについて自分なりに考えていただければ幸いです。

 

 安全保安管理室では今回の対談やこれまでの活動から、現場や職場内でのコミュニケーションが重要であると感じています。

 また,皆さんが持っている高いモチベーションが他の現場にも波及できるように、例えば各事業所が取り組んでいる安全活動や、事業所で働く皆さんの思いなどを紹介するような活動も検討しています。

 引き続きご安全に!

 

イイね!
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