
運転経験は「代えがたい財産」

発電部(発電管理)渡辺 誠也 さん【業務内容】2号機の当直A班の主機運転員として、三交替勤務でプラント管理業務にあたっている。定期試験やパトロールなどで系統状態や機器類の維持管理と不具合の早期発見、未然防止に努めている。また、不具合や非常時の対応に備え、日常業務や多岐にわたる教育・訓練にて、力量の維持と知識・技能の向上に継続的に努めながら発電所の安全を守っている。
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──運転業務の魅力と、業務で心がけていることを教えてください。
運転業務はミスが許されない仕事なのでもちろん大変なプレッシャーもありますが、自らの業務が東北・新潟地域へ安定した電気を供給できることにつながることが何よりの魅力です。私が運転業務で気を付けているのは、基本的なことですが、勘違いや操作誤りといったヒューマンエラーを防止することです。そのためには、指差し呼称や確認会話など、ヒューマンエラー防止ツールの徹底はもちろん、運転訓練用のシミュレータで多くの経験をして、自分の思考の「癖」を知っておくことが大事です。そのためシミュレータ訓練では発生した事象を無事に収束できたかどうかだけでなく、優先度の判断は正しかったか、あるいはより良い手順はなかったかといった視点で互いにフィードバックをしあい、運転スキルをブラッシュアップしています。
シミュレータ訓練は極めて深刻な事象を経験でき、学べることが多いと考えています。そこに加えて、実際のプラントで経験を積むということは、運転員にとっての自信につながる、代えがたい財産だと思います。
──再稼働を経て職場に起きた変化はありますか。
再稼働を経て、プラント管理業務を行うために当直の人数が増えました。プラント停止中は1班あたり4名、燃料装荷後は6名でしたが、運転中のプラントでは出向者や新入社員なども含め12名となり、幅広い年齢層の人員が集まって、良い意味で賑やかになりました。当直を「ファミリー」と表現することもあり、当直におけるコミュニケーションは非常に重要です。私は新入社員を除くと班の中で下から2番目の年次ですが、疑問や不安を感じた際は確認のためにしっかり声をあげることができ、報告・連絡・相談もしやすい、心理的安全性の高い職場だと感じています。
また、私のいるA班には電源開発から出向されている方がいます。女川が再稼働する前、私たち運転員は当社の火力発電所や別の原子力事業者の運転中のプラントで知識・技能の向上を図ってきました。私たちがそうしてもらったように、2号機の運転経験の中で「生きたノウハウ」を共有していけたらと思っています。
──運転員として、今現在取り組んでいることを教えてください。
運転員として成長するために、日々、日常業務や教育・訓練を通じて、知識・技能の向上に努めています。コミュニケーションが特に重要なことから、良好なコミュニケーションがとれる体制の構築や、若手運転員の育成に積極的に取り組んでいます。また私は自己研鑽として、資格取得にも継続的に取り組んでいます。現在は原子炉建屋の冷却や中央制御室の冷房に使われている冷凍機のことを勉強していて、「第三種冷凍機械責任者」という資格取得を目指しています。この資格は業務に直接必要というわけではありませんが、冷凍機に限らず発電所の各設備に関する理解度を上げておくことでより原子力安全に寄与し、万が一の際の対応に役立てていければと思っています。

五感で見つける小さな変化、「保修屋」としての自負

保全部(電気)石澤 尚輝 さん【業務内容】電気設備の性能を維持するための点検や補修、取替に関する業務を担当。対象は所内の電源設備やポンプ用電動機、電動弁駆動部といった設備。電源設備とは所内で使用するための電気を受電する設備や、タービンとつながっている発電機、そこで生み出された電気を送電線に送り出すための変圧器などが主要機器である。
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──保全業務の醍醐味を教えてください。
五感を使い、数値に表れないようなほんの小さな変化も見逃さないことです。
東日本大震災後の入社である私は、訓練センターやメーカー工場などでの教育を通じ、機器のさまざまな状態を感じ取るトレーニングを積みました。
こうしたトレーニングに加えて、再稼働により設備が動いている状態を経験したことで、さまざまな気づきを得られています。例えば発電機でつくられた電気を送電線へ送り出している変圧器は、稼働している時はうなるような大きな音がして、冷却ファンを回して冷やす必要があるほど本体が高温になります。そういった様子を目の当たりにすると、自分が先輩から教わってきた、運転中の音や熱などに起因する教訓が、まるで自分の身に起きたことのように理解できます。
また、2号機が稼働して以降、私が所属する保全部でも、これまでよりも一層小さな変化にも気づけるよう、個々人が感度を高めていこうとしているのを感じます。運転員から「電動機から異音がする」とか「計器の値が普段と違う」といった一報があると即座にチームの誰かが現場に向かい、同時に別の人が該当部分の図面を持ってきて、考えられる原因や取るべき対応について残りのメンバーと一緒に話し合う、そういった一連の動きが迅速に行われています。
「自分たちの発電所が生み出した電気が地域の暮らしを支えている」という実感によって、我々が持つ「保修屋」としての自負が一層強まったのだと思います。
2号機は近く定期点検を迎えます。新規制基準に適合するために追加されたガスタービン発電機などの設備は初めての定期点検ですし、発電機や変圧器も再稼働後初めての点検になります。決められた期間内で点検を完了させるのはもちろんのこと、点検を通じて新たな気づきも色々と得られると思うので、万全の準備で臨みたいと思っています。

目を向けるのは「数値の背景にあるもの」

環境・燃料部(放射線管理)高橋 佳暉 さん【業務内容】放射線管理グループにある放射線管理、化学、環境分野3つのチームのうち、化学を担当するチームに所属。主にプラント内外の水に関する成分の分析や評価といった管理業務を行っている。化学チームが管理する「水」には色々な種類があり、核分裂で発生した熱エネルギーで沸騰させタービンを回す原子炉水や、原子炉の運転に必要なポンプや熱交換器などの冷却水などが管理対象。その他、放射性液体廃棄物や、放射性気体廃棄物なども管理対象。 |
──水質を監視する意義と、業務で心がけていることを教えてください。
発電所の水の成分には金属などさまざまな成分が含まれていて、そこから「現在のプラントの状況」を知ることができます。血液検査をすることでその人の病気やその兆候を見つけられるのと同じです。
不具合や異常の兆候を早期に見つけるためには、成分の数値が基準に収まっているかだけを確認するのではなく、過去のデータと比較して増加あるいは減少しているといったトレンドを見つけること、更にその背景要因まで考えることが重要です。そこから例えば運転操作に変化が起きていないか、設備における予定外の劣化などが起きていないかなどに気づける場合があり、運転に影響を及ぼす前に対処することが可能です。我々は不具合や異常の兆候を早期に見つけ、事前に対応することを目指しています。
水試料の採取と分析
──約14年間のプラント停止と、そこからの再稼働は水質の面にも影響を及ぼしたのでしょうか。
原子炉起動の際、原子炉水には新設した配管からの塗装成分や、既設配管内側に発生した錆などが混じるため、それによる水質悪化や放射線量の増加などが懸念されました。そこで再稼働前にこれら配管の浄化を行い、実際の原子炉起動時にはほとんど水質に影響を与えない状態となりました。

東北緑化環境保全との打ち合わせ
十数年プラントが停止したことにより、自分を含めた化学担当者のうち運転経験がない人が多数派だったことから、再稼働の1年ほど前から、原子炉起動後の水質の変化や、採取・分析のポイントなどについて、ベテラン社員や数多くの現場経験を有している東北緑化環境保全(株)との勉強会を定期的に開催し、その知見を深めました。実際に再稼働するタイミングでは1時間に1回という高い頻度で各系統の水を採取・分析しましたが、水質に現れた変化は概ね想定したとおりで、「学んで備える」ことの大切さを実感しました。
なお、女川再稼働時の水質データや浄化対応については、国内外の学会での発表も実施しており、BWR再稼働一番手の貴重なデータとして、今後国内の再稼働を目指すBWRプラントにとっても有益なものになると思います。
──今後取り組んでいきたいことは何ですか。
運転の長期化を見据えた、水質管理の高度化です。
原子炉水に含まれている金属成分は多ければ問題ですが、かといって少なすぎても原子炉水中の放射能が高くなり、その結果被ばく線量が増加することが分かっています。そのため系統に極微量の鉄を注入することによる被ばく低減対策を検討しています。また、水素や亜鉛、貴金属などを添加することで配管が腐食しにくい環境を作る検討も関係グループとともに行っています。
水質の監視という「守り」の業務だけでなく、配管の寿命を積極的に延ばすという「攻め」の業務も行うことで、発電所の安定稼働にいっそう貢献していけたらと思っています。

「働きやすい環境づくり」建物も、人も

土木建築部(建築)若松 大義 さん【業務内容】新規建物の建設や既設建物の増改築、発電所内の建物およびその付属設備(給排水、消火、照明、空調など)の維持管理を所掌しているのが建築グループ。若松さんの担当は主に分電盤やコンセントといった電気設備に関連する保守業務と若手担当者への教育担当業務。また、発電所運転を円滑に継続するために建物面からのサポート(予防保全)を行っている。
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──建物管理業務で心がけていることを教えてください。
建物管理業務は通常、建物ごとに担当が割り当てられるケースが多いのですが、原子力発電所は設備が特殊なため、設備分野ごとに担当を決めており、私は電気設備の担当を務めています。また、女川原子力発電所が今後も安定した運転が継続できるよう、予防保全を心がけるとともに、広い視野で設備の点検などに取り組んでいます。例えば設備に不具合が出た際には、該当する部材や・部品のみを処理するのではなく、同時期に導入したものも検討対象として状況を確認しています。類似の不具合を連続して発生させないように配慮することで、発電所員が不便を感じる場面を少しでも減らしていけたらと思っています。
また、土木建築部は概ね3年程度で他事業所へ異動するケースが多いことから、工事に関わる知見や過去の教訓、将来的な設備更新計画などを意識的に引き継いでいく必要があります。特に新入社員や転入者にはこれらの部分を積極的に伝えていきたいと思っています。
さらに、工事や作業を通じて、発注先の施工会社をはじめとする多くの関係者と信頼関係を構築することを心がけています。日々のコミュニケーションを通じて工事が円滑に進んでいるのを見ると、自分自身の成長を感じます。
私はゼロ災リーダーでもあるので、安全作業に関する改善提案などをしやすい環境づくりという意味でも同様の視点を大事に、どんなことでも話しやすい関係性を意識して、今後もコミュニケーションの充実を図っていきます。
再稼働までの数年間は安全対策工事などにも従事し、非常にハードな業務を経験しました。厳しい状況でも職場の仲間が前向きに働けるよう、私のモットーでもある「仕事をするなら明るく楽しく!」を目指し、これまで以上に親密なコミュニケーションを心がけていきたいと思っています。

──再稼働を経て業務に起きた変化や、今後頑張りたいことを教えてください。
業務内容自体に変化はありませんが、建物に関連した設備不具合により安全運転の継続が危ぶまれることがないよう、建物点検を丁寧かつ確実に行うことに対する緊張感や責任感が増した印象です。例えば照明器具が故障した際には、照度の低下によって運転員の巡視パトロールや機器操作に影響が及ぶ時間をできる限り短くするため、迅速な対応を心がける必要があると強く認識しています。
また、停止中と稼働中では工事や作業に関わるルールも変化するため、常に最新のルールを確認しながら業務に臨むようにしています。

後編では品質保証部や地域総合事務所など、ルールやコミュニケーションを通じて発電所を支える皆さんにスポットをあて、お話を伺います。お楽しみに! |