法人営業部に聞いた!グリーンビジネスの現在地(後編)
~需要家併設蓄電池事業の「いま」~

 再生可能エネルギー由来の電気が持つ価値をお客さまに届ける「グリーンビジネス」。その中で、お客さまのニーズに応じた営業活動を展開しているのが、東北電力法人営業部のグリーンエネルギー事業室です。後編では、再生可能エネルギーのさらなる活用を支える「需要家併設蓄電池事業」に焦点を当て、事業化に向けた取り組みや今後の展望について紹介します。

需要家併設蓄電池とは?

 太陽光発電の導入拡大に伴い、電気を「つくる」だけでなく、「ためて、必要なときに使う」技術の重要性が高まっています。今回の記事でフォーカスするのは、その中心となる設備の一つで、住宅、店舗、工場、公共施設など、お客さまの施設に設置する「需要家併設蓄電池」です。

 

 需要家併設蓄電池は、太陽光発電で生じた余剰電力を昼間に蓄え、夕方や夜間などに使用することで、再生可能エネルギーの自家消費率を高めることができます。

 さらに、各地のお客さまが保有する需要家併設蓄電池などの分散型エネルギーリソースを、通信技術によって束ね、一つの発電所のように制御する「VPP」の研究・事業化も進んでいます。電気が余る時間帯には蓄電池に充電し、需給が厳しくなる時間帯には放電するなど、需給状況に応じて適切に制御することで、再生可能エネルギーの有効活用や電力系統の安定化への貢献が期待されています。

 

 需要家併設蓄電池は、お客さまにとっての省エネ、防災、脱炭素といった価値と、電力系統全体にとっての需給調整という価値を併せ持っています。今後は、蓄電池を販売するだけでなく、太陽光発電やEV、エネルギーマネジメントシステムなどと組み合わせ、設置後の制御や保守まで一体で提供するサービスへ発展していくことが期待されています。

 

 なお蓄電池には、需要家併設蓄電池以外にも、発電事業として電力系統に直接接続する大規模な「系統用蓄電池」もあり、東北電力では、2026年4月に発電カンパニー内に新設されたERAB推進室が担当しています。(後日BRIDGEで紹介する予定です!)

 

担当者に聞いてみました

 需要家併設蓄電池事業のニーズや、運用に向けた現在の状況について、法人営業部グリーンエネルギー事業室(GEP推進)の横山 達也 主査にお話を伺いました。

 

法人営業部グリーンエネルギー事業室(GEP推進)横山 達也 主査

 

──需要家併設蓄電池を希望するお客さまのニーズにはどのようなものがありますか。

 分かりやすいところだと、お客さまが所有している太陽光発電設備で発電した電気の余剰分を貯めておくことで自家消費を拡大させたり、電力需要の大きい時間帯に蓄電池から電気を放電することで電気料金の抑制を図ったり、停電時に非常用電源として活用するといったものがあります。

 

 最近のトピックとしては、再生可能エネルギーの「アワリーマッチング」への対応ニーズがあります。

 「アワリーマッチング」とは企業が店舗などで使用する電気を再生可能エネルギー由来100%とする際の考え方で、「使用した電力と、再生可能エネルギーによって発電された電力を1時間単位で一致させる」というものです。これまでの「電気を使用した時間にかかわらず、使用した電気の総量を調達することで『再エネ100%』と見なす」という考え方と比べると、より実態に即した厳格なルールであり、「24時間365日の脱炭素電力」を掲げているグローバル企業などが推進しています。

 しかし現実問題として、夜間は再生可能エネルギーの発電量が少なく、使用する電力と同量を調達するのは容易ではありません。そこで昼間の太陽光発電による余剰発電分を夜間に使用するため、需要家併設蓄電池を使用します。

──東北電力の現在の状況や、この事業における強みはどういったものでしょうか。

 先に述べた通り、需要家併設蓄電池の設置を検討しているお客さまのニーズは多様で、しかも同一のお客さまで複数のニーズが発生します。そのため、需要家併設蓄電池のご提案をする上では「設置した蓄電池をどのぐらい効果的に運用できるか、そのために最適なプログラムを提供できるか」が成約の鍵になると考えています。当社では現在、専門メーカーと協業し、充実した制御プログラムを確立するための実証実験を行っているところです。

 また当社では、需要家併設蓄電池を積極的に活用することで、設置したお客さまに収益をもたらすご提案を行うことも検討しています。具体的には、電気の卸市場での取引価格が安い時間帯の電気を貯めて(買電)おき、取引価格が高い時間帯に放出(売電)して差額を得たり、あるいは「充電」「放電」することそのものを、系統の需給の偏りを吸収する「調整力」として市場で取引し、収益化を図るといったことを考えています。継続的にお客さまに収益をもたらすためには、市場取引に関するノウハウが必要となるため、その点でも当社のこれまでの取引実績や専門性の高さといった強みが生きると考えています。

──お客さまが需要家併設蓄電池を設置することにより、東北電力グループとしてはどのような利益やメリットがあるのでしょうか。

 まずは需要家併設蓄電池の販売や設置、メンテナンスなどの契約で得られる利益や、需要家併設蓄電池の契約に合わせて電気の契約を東北電力に切り替えていただけること、さらに設置後には、先に述べたような需要家併設蓄電池の制御を行う中で、生まれた利益の一部を成果報酬として得ることも期待できます。

 また、当社で制御できる需要家併設蓄電池が増えることは、東北電力の需給管理の面からも有用です。それぞれのお客さまの需要家併設蓄電池をまとめて大きな蓄電池として運用することで、揚水発電のようにエリア全体の需給を調整する手段としても活用できると考えています。

 

 

──ソフトやシステムだけでなく、制度や取引ノウハウといった複雑な知識が必要とされる事業ですね。

 確かに求められることは多いのです。が、一人ひとりがすべて分かっている必要はなく、むしろ個々の得意分野を生かしながらプロジェクトを進めることが大事だと考えています。また、事業としてのスキームがまだ確立していないこともあり、経験年数やバックグラウンドに関係なく、どんな人でも活躍できる職場だと感じています。

 この事業を担当するメンバーの一人である萱場さんは、入社2年目の社員です。

 

2年目社員 萱場 皐葉さんの声

 

法人営業部グリーンエネルギー事業室(GEP推進)萱場 皐葉さん

 普段は、お客さまの蓄電池導入目的や活用方法を伺い、事業性評価や現地調査、関係各社との調整を通じて、ニーズに沿った最適な蓄電池の導入、運用方法を提案しています。お客さまの希望を自ら形にしていく業務はやりがいがあり、非常に充実しています。また、蓄電池実証設備の構築などにも参加しており、年齢やポジションに関係なく大きなプロジェクトに挑戦できる職場環境だと感じております。

 

──需要家併設蓄電池が増えていくと、東北6県と新潟県における系統の需給にも影響するのでしょうか。

 お客さまの需要家併設蓄電池を電力の需給状況に応じて適切に制御することで、電力需要のピークを抑えたり、再生可能エネルギーの余剰電力を有効に活用したりすることができます。こうした取り組みの積み重ねは、将来的にエリア全体の需給バランスの安定化に貢献する可能性があります。

 また、再生可能エネルギーの発電量が需要を上回る時間帯に電気を蓄え、別の時間帯に活用できるようになれば、再生可能エネルギーのさらなる有効活用にもつながると期待しています。

 

 この事業が進展することは、お客さまに安心や利益をもたらすだけでなく、系統につながる人みんなにとってメリットのあるものだと思います。

 

「お客さまのため」が「地域社会のため」につながる

今回取材したコーポレートPPA事業と需要家併設蓄電池事業には、一つの共通点がありました。

それは、お客さま一人ひとりの課題解決に取り組むことが、地域全体のエネルギー課題の解決にもつながるということです。

 

 東北電力グループは、長年培ってきた電気・エネルギー分野の知見を生かし、省エネ、防災、脱炭素といったお客さまのニーズに応えてきました。そして、その取り組みを通じて、東北6県・新潟県における再生可能エネルギーの有効活用や、電力系統の安定化にも貢献しています。

 グリーンビジネスは、お客さまと地域社会の双方に新たな価値を生み出す取り組みです。その姿は、東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」が掲げる、電気・エネルギーを中心とした事業展開を通じて地域の快適・安全・安心なくらしに貢献するという考え方とも重なります。

 

 取材を通じて印象的だったのは、部門や専門分野の垣根を越え、多様な知見を持ち寄りながら新たな事業に挑戦するグリーンエネルギー事業室の姿でした。そこには、変化する社会やお客さまのニーズに応えながら、地域の未来を支えようとする東北電力グループの確かな歩みが感じられました。(佐々木達彦)

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