デジタルBRIDGE探検隊~加治川発電所の細密点検~

 加治川発電所では今年5月~11月までの期間で細密点検を実施しており、厳冬期前までの運転再開に向けて、工事関係者が一丸となり作業を進めています。
 この細密点検に焦点をあて、高い技術が求められる「据すえ繰ぐり加工」の様子や関係者の想いなどをお伝えします。

加治川発電所で細密点検を実施

 新潟県新発田市滝谷地区にある加治川発電所は、1962年12月に運転を開始し、出力は17,000kW。管轄する新潟発電技術センター内では最も出力の大きい発電所です。

 加治川水系には3箇所の当社水力発電所(加治川・飯豊川第一・飯豊川第二発電所)があり、加治川発電所は最も上流部に位置しています。

 当社加治川ダムから最大毎秒10m3を取水し、約8kmの圧力トンネルや全長約315mの水圧鉄管などを通して、立軸のフランシス水車を回転させて発電を行っています。

 発電に使用した水は加治川に放水され下流にある発電所で再利用されています。

 

 

 加治川発電所では、水車発電機を分解し各部位の状態を詳細に確認の上、部品の修繕・取替を行う細密点検が行われています。現在は水車発電機の分解点検、流量調整を行う案内羽根(ガイドベーン)の取替、水車カバーの取替などが行われています。

 期間は今年5月15日~11月24日までを予定しており、延べ800名程度が従事する大規模な点検で、確認項目は数百にのぼります。現在の進捗率は約3割程度で、順調に点検が進められています。

 7月11日、新潟発電技術センターおよび新潟支店が連携し、細密点検の様子を報道機関に公開しました。新潟発電技術センターの加藤所長は、「引き続き、安全を最優先に点検を進めるとともに、工期内に終えられるよう、施工会社や修理メーカーとも連携の上、取り組んでいきたい」と述べました。

 今後、機器類の点検を進め、工場で修理した水車部品などを発電所に搬入の上、11月上旬には水車発電機の組立を完了し、諸試験を経て、厳冬期前の運転再開を目指しています。

 

 

 

誤差0.05mm以内までの精度が求められる「据すえ繰ぐり加工」

 取材当日、水力発電所の心臓部である水車本体の据繰り加工が行われていました。

 水を効率良く使用するためには水車を収める固定部(ケーシング)と水車の可動部(ランナ)の隙間を約1mmで据付する必要があります。この間隔が広がると、水車に作用する水量が減り発電効率が低下したり、水平・垂直に据付されないと、機器同士が接触し故障につながるため、運転で生じた機器のずれをmm単位で調整する必要があります。

 据繰り加工は水車固定部の金属製の部材の取替にあたり、錆などによる取付部の凹凸を切削し水平・垂直になるよう整える重要な作業です。今回、1962年の運転開始後、約60年の歴史の中で初めてこの作業が実施されました。

 切削は専用の機械で行われ、回転式の装置先端に取り付けたチップ(刃)で平面や窪み、側面も削る必要があり、その精度は誤差0.05mm以内までと高い技術や技能が求められます。機械を一時停止させながら、作業員が目視で切削状態を確認し慎重に作業を進めていたのが印象的でした。この作業は1週間程度かけて行われます。

 据繰り加工の様子は以下の動画からご覧ください。

 

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今回の点検に携わる関係者にお話を伺いました。

新潟発電技術センター水力電気課 都澤 立樹さん

 

──今回の点検ではどのような役割(担当業務)を担いましたか

 工事設計をはじめ、今回の点検に係る一連の業務を担当しています。

 

 

──今回の点検の計画にあたりどのような課題がありましたか。その解決のためにどのように対応しましたか

 例年12月中旬には積雪により、発電所までの車両通行ができなくなるため、運転開始日の後ろ倒しができない状況の中、分解作業後の工場での部品修理や水車発電機の組立など、数カ月単位を要する工程の作業期間をいかに確保するかが課題でした。これらを解決するため、関係者と工程を調整し、当初6月中旬に予定していた着工日を5月15日に前倒しすることで、早期に分解作業を実施しました。

 着工にあたっては水圧鉄管を断水させる必要があり、土木課とも連携し、しっかりと安全を確認した上で、断水操作を行いました。

 また、計画段階から例年の融雪状況を確認するとともに、現地にも出向き、道路の融雪状況を見極めながら着工日を設定しました(5月9日時点では積雪により車両通行ができない状況でした)。

 

 

──今後も点検は続きますが、どのように対応していくか、想いをお聞かせください

 まずは安全第一を優先し、危険な作業を行わない・行わせない現場環境を作っていきたいと思います。期間の無い無理な工程となると、焦りなどで災害発生リスクも高まることから、現場状況に合わせ、的確な作業期間を確保し調整を図っていきたいと思います。

 

 

東北発電工業新潟支社 工事三課 佐藤 誠さん

 

──今回の点検ではどのような役割(担当業務)を担いましたか

 本工事では現場代理人を務めており、工程や作業工法・手順などの「施工管理」や現場の危険リスクを排除する「安全管理」、お客さまが求める仕様に確実に対応する「品質管理」などが主な役割です。

 特に、分解時に部品が抜けないなどといった、想定外の事象が発生した場合には一旦立ち止まり、立会人へ報告した上で、施工工法を再検討して実施するなど、納得の上、慎重かつ丁寧な施工となるよう努めています。

 

──点検は計画通り順調に進んでいると伺っていますが、現場代理人としてどのような点に気をつけていますか

 水力発電所は河川に直結していることから、油脂類を取り扱う作業では絶対に河川へ流出させないよう、特に慎重に取り扱いを行っています。

 また、水力発電所の多くは山間の奥まった場所に設置されていることが多く、加治川発電所も同様の立地条件であり道路が狭くカーブも多いことから、移動の際は安全運転を心がけています。今後、秋が深まっていくと夕暮れも早まります。加治川発電所は立軸機のため、階層が多く、昇降による疲労も重なることから、十分な注意が必要です。

 季節柄、熱中症、蜂刺されなどの対策も確実に行っています。

 

──今後も点検は続きますが、どのように対応していくか、想いをお聞かせください

 立会人や工事関係者等と「確認会話」などにより、「無事故・無災害・品質不適合ゼロ」で完工できるよう、しっかりコミュニケーションを図っていきたいと考えています。

 また、本工事は11月下旬までの長い期間にわたることから、自分自身の体調管理はもちろんのこと、日々、工事関係者の体調確認を確実に行っていきます。

 

 

探検後記

 山間の渓谷に位置する加治川発電所に向かう道中、信号機付(片側交互通行)のトンネルのような場所が複数ありました。調べたところ、東赤谷連続洞門と呼ばれる、雪などから道路を守るためのドーム状の構造物で、鉱山から鉄鉱石を運ぶ専用鉄道(1941年頃開通)の廃線跡が県道になった場所のようです。内部は石造りの柱が整然と立ち並び、遺跡のような雰囲気で歴史を感じました。

 この発電所までの道路は冬期間、積雪により一部通行止めになります。新潟発電技術センターの都澤さんに有事の際の対応について伺うと、「昨年冬の故障対応の際はかんじきを履き、雪上を徒歩で片道4時間かけて発電所に向かいました」と豪雪地帯での保守業務の過酷さを語ってくれました。

 導水鉄管の見学中には、大粒の雨に見舞われる場面も。まとまった雨は出水が増える一方、一定時間で規定の雨量を超えた場合も道路が通行止めになるため、都澤さんは雨量情報に注意を払っていました。発電所の周囲は携帯電話の電波がつながらず、職場との連絡は保安回線や衛星電話を活用しているそうです。

 今回の取材を通じて、自然の水の力を無駄なく電気に変える技術力に感銘を受けるとともに、電力の安定供給は人の力と想いによって支えられていることを改めて実感しました。

 

東赤谷連続洞門

 

イイね!
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