
国特有の安全文化フォーラム(CSSCF)とは
CSSCFは、国の文化的特性が原子力安全文化にどのような影響を与えるか、参加者全員で考えるために企画されたものです。「どのような文化にも優れた安全文化を形成するためにプラスとなる特徴があり、一方で課題となりえる特徴もある」という考えのもと、国際的な視点や文脈を議論に盛り込みながら参加者によるロールプレイ(役割演技)を行い、それぞれの文化の違いに注目した議論を行うことで国内の原子力安全文化をより良くすることを目的としています。これまでにスウェーデン、フィンランド、カナダで開催しており、4回目となる今回は日本での開催となりました。

フォーラム参加者全員によるグループ写真
当日は東北電力のほか、原子力事業者、規制当局、地方自治体、海外からの専門家を中心に約120名が参加し、二日間にわたり対話型のロールプレイやグループディスカッションが実施されました。フォーラム期間中は原子力事業者や規制当局が忌憚なく議論することを目的とした「CSSCFにおけるゴールデンルール」が掲示され、参加者全員が組織の代表としてではなく「個人」として、積極的に議論に参加できるような工夫がされました。
- NEAマグウッド事務局長による挨拶
国特有の安全文化フォーラム(CSSCF)の内容
フォーラムでは冒頭、日本文学の研究者であるロバートキャンベル氏による「日本らしさは、どこから生まれてくるのか」と題した講演が行われました。講演後、参加者は13人程度の小グループに分かれ、日本の国家、国民性、文化に関して対話を行いました。
その後行われたロールプレイでは、当日の参加者が、事業者や規制当局の役になりきり,それぞれの組織間や組織内でのやり取り、会議風景などの様々なシナリオを演じました。このシナリオは,昨年の5月・6月に実施された国内原子力事業者と規制当局のリーダー、現場作業員等のあらゆる階層による370件以上のインタビューと意見交換会(当社からは樋󠄀口社長、金澤常務、女川原子力発電所員の計25名以上が参加)の内容を基に作成されたものです。ロールプレイ終了後は、演じた中で気づいた点などについて意見交換を行いました。
フォーラムの最後には、参加組織ごとにグループを組み、今回のフォーラムで学んだこと、それを自分の組織に持ち帰り展開する方法について話し合いました。当日の詳細プログラムについては以下のリンクをご参照ください。
フォーラムのプログラム:Nuclear Energy Agency (NEA) – 国特有の安全文化フォーラム:日本 (oecd-nea.org)
- 当社からは東通原子力発電所の菅原副所長(左から2番目)と女川原子力発電所の三田主任(左から3番目)が役者としてロールプレイに参加
- 海外からのオブザーバー参加者(英国、韓国、中国、米国)によるパネルセッション
フォーラム参加者の声
女川原子力発電所 工藤発電部長
日本の原子力業界は会社や組織間に垣根があり、その理由の一つには、お互いのメンツや立場を重んじる特性が影響している可能性があります。「仁義を切る」という言葉は、仕事をする上で無視できないものです。その他にも、日本のコミュニケーションの特性として、恥を重んじる文化、本音と建前、根回し、村八分、忖度などの言葉が多くの参加者から出されたのが印象に残りました。これらの特性が、例えば規制側と被規制側を極度に分かつことに繋がってしまい、結果的に双方の技術交流を阻害し、日本の本当の意味での安全文化の醸成を困難にしていると感じています。
日本の原子力発電業界を長期的かつ安定的に運営していくためには、個々の会社内においても業界全体においても、日本のコミュニケーションの特性の良い点・悪い点をよく理解した上で、相手を思いやるという優れた特徴を組織内で効果的に生かせるよう知恵を絞り工夫する必要があると感じました。
東通原子力発電所 菅原副所長
今回のフォーラムでは、「安全を度外視する原子力発電所の所長に対し、安全について意見具申するも無視される」という技術部長の役で参加しました。ロールプレイの中とはいえ、無視されるのは嫌なものでした。安全に関しては誰の意見でも、みんなが真摯に向き合うことが重要だと再認識しました。
原子力品質保証室 倉兼主任
ロールプレイは「あなたはできるのか?」「どうしたら事故を回避できるか?」ということが問いかけられており、すべての階層の誰もが実際に直面しうるものだと感じました。私が一番考えさせられたのは、ロールプレイをもとに議論した、不確実さがある場合の意思決定プロセスの難しさと、その意思決定への組織トップの影響の大きさでした。
女川原子力発電所 三田主任
日本固有のコミュニケーションの特徴について、ロールプレイを通じて事業者と規制当局が同じ場で率直な意見を交わすことができたことは有意義であり、経営層の方針・指示の出し方次第で、現場の安全文化はいとも簡単に衰退することがよく分かりました。議論は所属や役職が明かされない中で行われましたが、終わってみるとメンバーの中に規制当局の上層部や他電力のCNO(原子力役員)がいたことも面白かったです。

右から、原子力品質保証室の倉兼主任、女川原子力発電所の三田主任、NEAマグウッド局長、女川原子力発電所の工藤発電部長、東通原子力発電所の菅原副所長、NEA室谷次長、東北電力からNEAに出向中の加藤さん
フォーラムの結果
今回のフォーラムを通じて得られた知見は、分析結果とあわせて2024年夏を目途に、最終報告書(日本語版と英語版)として発行される予定です。
過去の開催国(スウェーデン、フィンランド、カナダ)の最終報告書は以下のリンク先から御覧いただくことができます。
CSSCFの概要、過去の開催国での最終報告書:Nuclear Energy Agency (NEA) – Country-Specific Safety Culture Forum (CSSCF) (oecd-nea.org)