ナノテラス×地域企業~ものづくりフレンドリーバンク制度の活用例~

 4月に運開したNanoTerasu(以下、ナノテラス)。広く活用が進んでいますが、その中には東北・新潟地域の企業の姿もありました。

カーボンブラックの未来へ向かって

 8月2日、ナノテラスでは旭カーボン株式会社(以下、旭カーボン)が実験を行い、その様子が報道公開されました。

 

旭カーボン株式会社研究開発部 青木さん

 

 旭カーボンは新潟県新潟市に本社を置く化学工業メーカーで、カーボンブラック※1の製造や販売を行っています。

 今回行った実験は、カーボンブラックに軟X線※2を照射することでその表面性状(表面の原子などの細かな状況)を観察するというもの。一口にカーボンブラックといっても表面性状や粒子の大きさ、粒子同士のつながり具合などをはじめとする特性(物理化学特性)によって様々な種類があり、旭カーボンでは用途やニーズに応じて60種類を超えるカーボンブラックを製造しているそうです。

※1:炭素の微粒子。黒い色をしており、タイヤをはじめとする各種ゴム製品に補強材として添加されるほか、印刷用のインクなどにも利用される。

※2:X線のうち、比較的波長が長いものをいう。物質中の化学結合、電子の状態や性質・機能の起源を調べることに強みがあり、産業利用ニーズが高い。ナノテラスは、軟X線領域で世界最高水準の輝度を誇る。

 

 カーボンブラックの特性は製品になった際の様々な性能(例えばタイヤの耐摩耗性など)に影響する重要なものですが、社内の設備では表面性状について十分に観察することが出来なかったといいます。「例えば、社内の測定では同じ数値を示していても、製品になった際に異なる性能を示すことがあるんです。これは表面性状の違いによるものではないかと考えて、今回の実験を企画しました」(青木さん)

 今回旭カーボンのナノテラス利用は8時間を予定しており、実験も順調に進んでいるとのこと。「欲しいデータがちゃんと得られるか不安な部分もありましたが、期待通りのものが出ています」(青木さん)

 カーボンブラックの表面性状に対する分析が進めば、製品に狙い通りの性能を持たせられるだけでなく、将来的には、より高い性能を持った製品を生み出せるようなカーボンブラックを製造できることが期待されます。

 

測定結果をモニターで確認する様子

 

様々な企業に開かれるナノテラスへ

 (一財)光科学イノベーションセンターはナノテラスのユーザー企業の「コアリションメンバー」を1口5千万円(施設利用料は別途必要)で募集しています。企業はこれに参加することで加入から10年の間、ナノテラスを年間最大200時間利用する権利を得ることができます。

 このほか、東経連ビジネスセンターが中堅・中小企業などによるナノテラスの利活用促進を目的に運営しているのが「ものづくりフレンドリーバンク」(以下、MFB)です。1口当たり税込55万円(施設利用料は、別途必要)の小口資金を募り、光科学イノベーションセンターにコアリションメンバーとしての加入金を拠出し、MFB会員企業がNanoTerasuを共同で利用する仕組みであり、1口当たり税込55万円を拠出することで、NanoTerasuを年間2時間、10年間の利用権を得ることができるというもの。なお東北電力も東北・新潟地域の中小企業の技術力向上といったMFBの主旨に賛同し、支援を行っています。

※東北6県・新潟県の企業を対象に新規事業の成長を支援するため、(一社)東北経済連合会が域内産学官+金融に呼びかけて設立した支援団体

 

MFBとコアリションメンバーを比較した図(東経連ビジネスセンターHPより)

 

 今回実験を報道公開した旭カーボンは、このMFBの会員です。「放射光施設は自分たちとは程遠い存在だと感じていましたが、一昨年の10月に新潟市で開かれたナノテラスの説明会に参加して、そこでMFBの紹介を受けました。1口50万円と聞いて、これならうちの会社でも利用できるんじゃないかと。実際に使うにあたっては専門のコンシェルジュをはじめ多くの実験サポートがあり、不安なく使うことができました」(青木さん)

 世界最高水準の分析性能を持つナノテラスの放射光。地域企業の課題を解決する希望の光となるか、さらなる活用が期待されています。

 

ナノテラス空撮写真(一般財団法人光科学イノベーションセンター提供)

 

イイね!
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