ドローンで変わる現場 ~宮下発電所水槽点検~

 測量や調査、診断事業を専門にする東日本テクノサーベイ。現在様々な場面で活躍が広がっている「ドローン」を事業の一部に取り入れています。東日本テクノサーベイのドローン技術で東北電力の点検現場はどのように変わっているのか、実際の現場からのレポートを通じてお届けします。今回の現場は10月23日に水槽点検を行った福島県三島町にある宮下発電所です。

今回の現場は宮下発電所

 福島県大沼郡三島町にある宮下発電所は、昭和21年12月に運転を開始した歴史ある水力発電所で、最大出力は94,000kWを誇ります。

 取材に行った10月23日の点検対象は第2水槽。只見川の上流にある宮下ダムから流れこんできた水を一旦ためておくもので、水槽にたまった水はその後地中を走る水圧鉄管を流れていき、発電機につながっている水車を回し、その後、放水路を経て元の只見川に戻ります。

 

 

 第2水槽は幅が30.5m、奥行きが57.6mあり、一般的な25mプールが4面すっぽりと入る広さです。水槽にたまる水の水位は近接する宮下ダムと連動しますが、ダムの水位が最大量でもあふれることのないよう、水槽はビル5階分の高さに相当する15.2mの深さを持っています。

 

第2水槽を地上から見下ろす。底ははるか遠い

 

 この巨大な水槽は主にコンクリートで作られていて、今回の点検では普段は水がたまっているため確認できない側壁や底面、内部の構造物を調査します。

 

ドローン運用の現場から

 BRIDGE取材班が水槽脇の駐車場に到着すると、先に来ていた東日本テクノサーベイのドローンチームが作業の準備を始めていました。

(ドローンチームについてはこちら)ドローンが秘めた可能性 ~東日本テクノサーベイの強みとは~|東北電力社内報 デジタルBRIDGE (tohoku-epco.co.jp)

 

 この日は前日に行った水圧鉄管の内部点検とあわせ、水圧鉄管用(暗い室内用)と水槽用(明るい屋外用)と2種類のドローンを持ち込んでいました。この時期はほとんど毎週のように点検や測量の作業があるそうで、10月にしてはやや厳しいジリジリとした日差しが照り付ける中、ドローンチームはドローンが離着陸するためのパッドや無線交信のヘッドセットなどを慣れた手つきで素早く準備していきます。

 

 

 「ドローンによる点検」という言葉から「ドローンをカメラ代わりに、送られてくる映像をその場でじっくり観察する」という作業風景をイメージしていたBRIDGE取材班ですが、丹野部長からは「点検は水槽内面の撮影動画で行います。今日の作業は点検用動画の他に持ち帰った画像をより見やすくする3Dモデルを作成するための静止画を撮影することです」との言葉が。現地では動画・静止画の撮影をメインとし、帰社後にコンピューターを使って3Dモデルを作成。その後、動画で異常の有無を確認し作成した3Dモデルで異常個所の規模や位置特定を行うのが効率的なのだそうです。

 

ドローンのカメラから送られてくる映像を確認する丹野部長

 

 3Dモデルを作成するために必要な画像は、写る範囲を少しずつ変えながら多くの枚数を撮影する必要があります。今回の水槽の場合だと数百枚ほどですが、さらに大きな設備、例えば火力発電所の煙突の場合だと数千枚に及ぶこともあるそうです。それだけの枚数を撮影する作業は想像するだけでも気が遠くなりますが、それを支援する強力な自律飛行機能が備わっているのが今回使用するドローンであるSkydio社のX10。3Dモデル化したい範囲をあらかじめ指定し、必要な設定を行うことで、ドローンが自律的に飛行しながら、3Dモデル作成に必要な画像を自ら撮影します。

 

Skydio社のX10を紹介する今野副長

 

 この日ドローンのコントローラーを持っていたのはドローンチームのリーダーである今野副長。自律飛行の設定をしている今野副長に、設定作業のポイントについて聞きました。「『ラップ率』と呼ばれる、画像と画像が重なる範囲の割合の設定が重要です。重なっている割合が高ければより精密な3Dモデルが作れますが、必要な画像の枚数が多くなるため、現場での撮影時間だけでなく帰社後のデータ処理作業にかかる時間も増えてしまいます。ラップ率は精密さを求めない3Dモデルであれば30%ぐらいでもよいのですが、今回は対象構造物がそれほど大きくないため70%にしました」。設備の規模や業務に求められる精度を踏まえ、現場で最適な数値を設定する。これを支える豊かな現場経験こそが、東日本テクノサーベイの強みと言えます。

 

ドローンを操作する今野副長(中央)とそれをサポートする小板橋さん(右)

 

 ラップ率の設定を終えると、続けてドローンの飛行範囲の設定を行います。今野副長が持つコントローラーの画面には、ドローンが自律飛行する範囲を示す格子状の直方体がカメラ映像と重なるように表示されており、コントローラーのスティックの倒れ方に応じてその大きさを変えています。「ドローンの自律飛行と言ってもいくつか種類があるんです。最もメジャーなのは地図アプリなどと連動してGPSで経路設定するタイプですが、現場は資材や事務所があって日々状況が変わることもあり、若干使いづらい部分があります。今回使用するX10は実際にドローンを飛ばして範囲指定できるので、現場での使い勝手に優れています」と今野副長。

 

 

 設定を終えて自律飛行に入ったドローンは、向きを変えながら小まめに移動し、次々と写真を撮影していきます。羽音のようなドローンのプロペラ音とカメラのシャッター音がリズミカルに響く中、コントローラーの画面に表示されている撮影地点の目標となる点が、ドローンが撮影するたびに1つずつ消えていき、撮影作業の進捗を示します。

 

水槽内部を飛行するドローン

 

 自律飛行するドローンの挙動はパイロットによる操作とは異なり、時に機体を大きく揺らしながら必要な個所を最短経路で結ぶダイナミックなもの。万が一にも衝突しないよう十分な安全マージンを取っているという説明は受けていても、時に取材班の頭上をかすめるように高速飛行するドローンには驚かずにいられませんでした。

 

ドローンのバッテリーを交換する小板橋さん

 

 ドローンはバッテリー交換を挟みながら30分ほど自律飛行を続け、予定していた個所の撮影を終えました。これで撮影完了と思いきや、今野副長はドローンを再度飛ばし、マニュアル操作で画像を撮影しています。その理由を尋ねると「実用に耐える3Dモデルを作るためには、実は自律飛行だけだと不十分な場合があります。飛行の安全マージン確保のために自律飛行の範囲はやや狭めに設定していますし、自律飛行中は風の関係などで予定していたアングルから少しずれて撮影してしまうこともあります。そういった自律飛行の欠点を補うには、マニュアル操作で撮影した追加の画像撮影が必要なんです」と教えてくれました。

 

 

 全ての撮影が終わると、ドローンチームはものの20分ほどで全ての機材の撤収を終え、帰路につきました。

 後日、詳細な点検結果の報告と共に送られてきた水槽内部の3Dデータには、まさにあの日の水槽が再現されていました。

 

水槽の3Dモデル

 

安全性の向上と精度の高い点検

 今回の点検について、福島支店(会津若松支社)会津ダム管理センター只見川ダム管理所の山崎 秀樹 土木主査と安喰 由寛 さんにお話を伺いました。

 

山崎 秀樹 土木主査(左)と安喰 由寛 さん(右)

 

──今回の点検の目的を教えてください。

 3年に1度、導水路の状況確認として断水し導水路の内部点検を実施しています。この宮下発電所は運転開始から80年が経過し、コンクリートが一部劣化している個所もあります。もし劣化したコンクリートの破片が落下した場合、導水路・水圧鉄管を通じて水車に損傷をあたえると発電が停止してしまうだけでなく、修理に莫大な費用が発生することが考えられます。そういった事態を未然に防ぐために導水路の点検を行っています。今年度は宮下発電所の2号導水路を断水し、点検の際に目の届きにくい水槽内部の撮影を東日本テクノサーベイにお願いしました。(山崎土木主査)

──ドローンが導入されたことで水槽の点検はどのように変化しましたか。

 一番大きな変化は安全性の向上です。ドローン導入以前は人による目視と写真撮影を行っていました。その際は梯子をつたって水槽の底まで降りる必要があり、酸欠や転落といった災害のリスクと隣り合わせでした。

 もう1つの変化としては、より高精度な観察ができるようになったということです。ドローンは空中から壁に接近して写真を撮影することができるので、これまで気が付かなかった細かな変状も発見することができます。また変状の発見は基本的には自分たちで行っていますが、撮影を行った東日本テクノサーベイの目でもチェックをしていただくことで、ダブルチェックも期待しています。(安喰さん)

 

次回は別の点検現場にお邪魔して、水圧鉄管の点検における実際のドローン運用の様子をお伝えします。お楽しみに!

 

イイね!
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