東通原子力発電所の防護設備の性能試験等の未実施及び不適切な試験記録等作成について

 東通原子力発電所の防護設備の試験・点検において、長期にわたり不適切な取り扱いが行われていたことが確認されました。事案の詳細や発生した要因、再発防止対策についてお伝えします。

事案の概要

 東北電力東通原子力発電所では、敷地内への侵入防止用の監視装置に係る保守点検と性能試験を実施していますが、東北電力社員が性能試験と保守点検(警報表示機能確認)について、求められる試験・点検の一部もしくは全てを実施していない状態で、実施済みとして記録するなど、長期にわたり不適切な取り扱いが行われていたことが確認されました。

 本事案は、2025年6月13日に判明し、これまで原子力規制庁による原子力規制検査が継続されていました。
 検査の終了に伴い、11月20日の原子力規制委員会において、その結果が報告され、「重要度評価:緑(上から4番目)」「深刻度評価:SLⅢ(上から3番目)」との評価が決定されました。
 東北電力では根本的な原因の分析を踏まえた改善措置活動の計画を策定し、2026年2月末までに原子力規制庁に報告することが求められています。

 なお、女川原子力発電所においては、同様の不適切な取り扱いは確認されていません。

 

事案の詳細

事案の経緯

 2025年6月12日、東通原子力発電所において、原子力規制庁による核物質防護に係る日常検査が実施された際に、2024年度の立入制限区域の性能試験に係る記録の多くが、「2025年3月25日」となっていることについて、当該性能試験の作業状況と記録の根拠について問い合わせを受けました。
 担当者に事実関係を確認したところ、「回数を省略して実施した」との回答があり、翌6月13日に警報発報履歴と照合したところ、発報回数が不足していたことから、防護設備の性能試験に係る記録作成に不適切な取り扱いがあったことが判明しました。また、過去の性能試験記録の調査を行う中で、保守点検(警報表示機能確認)の記録にも不適切な取り扱いがあることを確認しました。なお、防護設備の健全性や機能については、日常点検や定期点検(年1回)により、問題がないことを確認しています。
 本事案を確認して以降、速やかに性能試験および保守点検(警報表示機能確認)を改めて実施し、防護システムとして求められる性能・機能に問題がないことを確認するとともに、2025年7月9日~11日の原子力規制庁による臨時検査において、改めて実施した試験・点検が適切に行われ、防護システムとして求められる性能・機能に問題がないことを確認いただきました。
 また、事案確認および直接的な原因の分析を進め、必要な再発防止対策を立案し、その内容について2025年9月24日に原子力規制庁に確認いただきました。再発防止対策については、2025年9月30日までに全て実施しています。
 2025年11月20日、原子力規制委員会に本事案に係る原子力規制検査の結果が報告され、「重要度評価:緑」「深刻度評価:SLⅢ」との評価が決定し、東北電力に通知されました。

 

不適切な取り扱いの内容・期間

 東北電力にて、過去の試験・点検記録を確認した結果、性能試験については古いもので2018年度以降、保守点検(警報表示機能確認)については2013年度以降、それぞれ事案が判明した直近の試験・点検までの期間において、不適切な取り扱いを確認しました。(10事案)

 

分類 不適切な取り扱いの概要 期間

性能試験

性能試験の一部しか実施していない状態で、全て実施したこととして記録を作成した。 2018年度~2024年度
性能試験を全く実施していない状態で、協力企業の保守点検実施日に合わせて、全て実施したことにして記録を作成した。 2018年度~2024年度
追加で設置したセンサーの性能試験計画への反映漏れにより、当該センサーの性能試験が実施されず、記録も作成していなかった。 2019年度~2024年度
性能試験計画に基づき実施すべきセンサーの性能試験について、一部実施が漏れ、記録も作成していなかった。 2018年度~2024年度
毎年実施すべきセンサーの性能試験について、一部実施が漏れ、記録も作成していなかった。 2020年度~2024年度

保守点検

(警報表示

機能確認)

警報表示機能確認の一部もしくはすべてを実施していない状態で、全て実施したことにして記録を作成した。

2022年度~2025年度
立入制限区域のセンサーの警報表示機能確認について、業務分担変更の際に、担当を外れたと勘違いしたため実施しておらず、記録も作成していなかった。 2024年度~2025年度
防護区域のセンサーの警報表示機能確認について、業務分担変更の際に、担当を外れたと勘違いしたため実施しておらず、記録も作成していなかった。 2024年度~2025年度
新規設置した立入制限区域のセンサーの警報表示機能確認について、機器の仕様を誤認したため実施すべき頻度で実施しておらず、記録も作成していなかった。 2019年度~2025年度
当社から協力企業に発注する際、追加で設置したセンサーの具体的な点検対象機器を明示しなかったことから、当該センサーの警報表示機能確認が実施されておらず、記録も作成されていなかった。 2013年度~2021年度

 

 

要因と再発防止対策

 本事案について東北電力では、主に以下の4つの直接的な要因があったものと考えており、それぞれの要因に対応した対策の内容について、2025年9月24日に原子力規制庁に確認いただきました。
 また、これら対策については、2025年9月30日までに全て実施しています。

 

4つの要因 主な対策

①管理職による業務管理の不足

  • 管理職による、担当者が行う業務に対しての業務量の確認や業務・進捗管理などが不十分であり、担当者任せとなっていた

■管理職の関与強化、業務管理の充実

  • 性能試験の実施体制強化および業務管理プロセスの改善
  • 核物質防護課員に対する現場観察による実施状況確認の強化

■核セキュリティ文化の理解深化

  • 核物質防護業務に係る発電所幹部や管理職に対して、核セキュリティの脅威に係る認識強化に向けた事例教育の実施
  • 核セキュリティ文化の醸成に向けた核物質防護課員との対話活動の強化

②担当者への教育訓練の不足

  • 担当者が、性能試験や保守点検に求められている要求事項について、知識が不十分であった
  • 担当者が、これら要求事項の遵守に対する重要性について認識が不足していた

■教育の充実

  • 核物質防護業務における性能試験・警報表示機能確認に関する技術継承と教育の強化
  • 要求事項遵守・業務品質確保の重要性に係る意識向上に向けた事例教育の強化

③核物質防護設備に係る試験や点検計画管理の不足

  • 対象機器や試験・点検項目が不明確であるなど、試験・点検計画の管理に不足があった

■点検計画の充実

  • 核物質防護設備一覧表の作成による試験・点検項目の明確化
  • 性能試験・保守点検計画の策定や、設備更新などの管理プロセスの改善

④性能試験などの手順の不明確さ

  • 性能試験の実施内容や記録作成について、手順が不明確な部分があった

■適正に記録を作成するための手順の明確化

  • 適正に記録を作成するための手順の明確化

 

さいごに

 東北電力は社長をトップとした全社体制のもと、事案確認および直接的な原因の分析を進め、必要な再発防止対策を既に講じています。
 今回の評価・通知内容も踏まえたうえで、背景要因を含めた根本的な原因の分析および更なる改善策の検討を進め、第三者の評価も取り入れながら、実効性の高い改善措置計画を策定し、確実に実行していくことで、このような事案を二度と発生させないよう再発防止を徹底していくこととしています。

 

用語解説

核物質防護

 核物質が盗まれたり、不正に持ち出されたりすることを防ぐための取り組みです。原子力施設や核物質の輸送中に起こりうる妨害や破壊行為を未然に防ぎ、核拡散や核物質の悪用を防ぐために必要不可欠な措置です。
 原子炉等規制法などに従って核物質の防護措置を講じることが義務づけられています。例えば、防護区域などの設定や監視、防護設備・機器の設置、施設への出入管理などがあります。
 防護措置に係る情報は、テロリストなどに悪用されないよう厳格に管理する必要があります。

 

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保守点検と性能試験

 性能試験と保守点検の違いは、性能確認か機能確認かの違いとなります。
 保守点検のうち日常点検と定期点検では、機器や設備の健全性・機能を確認します。警報表示機能確認は、センサーを動作させて警報の表示機能を確認します。
 性能試験は、防護システムとしての性能を確認します。

 

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重要度評価・深刻度評価

 原子力規制庁は、検査指摘事項と判断されるようなパフォーマンスの劣化を確認した場合、個別事案毎に「重要度評価」と「深刻度評価」を行います。
 重要度の評価は、検査指摘事項が原子力安全に及ぼす影響について、影響が大きい順から「赤」「黄」「白」「緑」の4段階に色付けされて評価されます。
 深刻度(SL:SeverityLevel)の評価は、検査指摘事項が、原子力安全または核物質防護に及ぼす影響について、影響が大きい順から「SLⅠ」「SLⅡ」「SLⅢ」「SLⅣ」の4段階で評価され、評価レベルなどに応じた規制措置が行われます。

 

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