
東北・新潟への思いを胸に、域外へ ~法人営業部「域外販売」の挑戦~
電気小売業の参入が全面的に自由化されて10年が経過しました。厳しい競争環境を勝ち抜くための東北電力グループの取り組みを、シリーズで紹介します。初回は法人営業部による「よりそうnext+PLUS」の実現に向けた「域外販売」への挑戦です。東北エリア(東北6県と新潟県)の販売電力量に占める新電力のシェアは今や2割を超え、東京エリアに次ぐ激戦区となっています。このような厳しい環境の中、東北電力では販売電力量を拡大するため、法人営業部内に広域営業グループを発足しました。東北エリア以外の、沖縄を除く全国に販売活動を行う広域営業グループ。その苦労とやりがいを取材しました。
オフィスは東京と大阪の2カ所。販売エリアは沖縄を除く「全国」
東北エリアは東京エリアに次ぐ激戦区で、販売電力量に占める新電力のシェアは今や2割超。お客さまはより安い電気料金を求めて、全国大で相見積もりを行うケースも珍しくありません。東北エリア全体の需要も横ばいまたは微減という状況で、また電気料金を値引きしなければ契約は維持できない状況では、個々のお客さまからの利益の幅は小さくならざるを得ません。
東北電力がこれまでどおりの利益を確保するには、販売電力量を拡大することが重要です。そのための施策の1つとして、東北・新潟地域だけでなく、首都圏や北海道、更には西日本地域までエリアを広げて、より多くの電気を販売するべく、法人営業部内に発足したのが広域営業グループ。2025年7月、東京を拠点に19名体制で設立され、その後11月には大阪にも拠点を追加・増員し、現在は合計26名体制で販売活動を展開しています。
- 東京オフィス(東京都千代田区、JR東京駅近く)
- 大阪オフィス(大阪府大阪市北区、JR大阪駅近く)
販売活動を行う地域は東北エリア以外の、沖縄を除く全国(以下、域外)。対象となるお客さまは東北エリアに事業所を持たない、これまで東北電力との接点のなかったお客さまです。ダイレクトメールや電話に対して反応のあったお客さまには、東京、大阪のオフィスにいる社員が直接訪問を行い、新規契約の獲得を目指します。
業務の性質上、遠方への出張も多いのが広域営業グループの特徴です。そのため、東京、大阪の両オフィスはいずれも交通の便が良い場所にあり、また出張中に立ち寄って使用することができるレンタルオフィスが北海道や福岡県などにも整備されており、機動的な販売活動が可能となっています。
東京オフィス(左)、大阪オフィス(右)はいずれも駅に直結している
東京オフィスで聞きました
域外で感じる「東北電力」のネームバリュー

法人営業部(広域営業)東京オフィス勤務 塩川 昇平 さん千葉県での営業を担当。前任地は新潟支店(法人営業) |
──広域営業グループへの異動を知った時の気持ちを教えてください。
法人営業の経験は新潟支店での3年しかなく、また広域営業グループで扱うのは東北電力として経験のない白地営業※だったということもあり、異動の発令を受けた時は「果たして自分に務まるのか」という強い不安を感じました。でもその一方で、「域外に進出する新しい組織の立ち上げに携われる」というワクワク感もありました。
※白地(しらじ)営業:接点や取引実績のない、完全に新規のお客さまに対する営業活動のこと
──東京で働くということに対してはどう思いましたか。
関東の大学に通っていたこともあり、全くゆかりがないわけではありませんが、正直に言うと「東京に勤務する」というイメージはありませんでした。でも住んでみると、関東の観光名所や妻の大好きな東京ディズニーランド(千葉県浦安市)も気軽に行けて、充実した週末を過ごしています。
- レンタカーで商談先へ移動
- 商談後、近くの食堂でランチ。行った先々の有名なお店などを楽しむこともあるという
──千葉県における販売活動の中で、東北電力の強みを感じることはありますか。
はい。広域営業グループを立ち上げた頃は、域外におけるお客さまの温度感を実体験するために、現在は外部に業務委託しているダイレクトメールの送付や電話がけといった業務を社員が直接やっていた時期がありました。その際、電話の向こうのお客さまは─もちろんお断りされることが多いのですが─私が想像していたよりも丁寧に話を聞いてくださって、「とりあえず話だけでも聞いてみよう」と思っていただける、東北電力のネームバリューの強さを認識しました。
契約先との面談では時に雑談も挟みながら、お客さまの感じる疑問や不安などに寄り添う
──塩川さんが販売活動で大事にしていることを教えてください。
まずお客さまファーストであることです。お客さまが求めているものに対して知恵を出し、全力で応えるようにしています。それからメールなどのやり取りにおけるスピード感も大事にしています。域外営業はもちろん大変さもありますが、一方で「新規契約」という形で自分の成長が実感できる業務でもあるので、今後もこれらを武器に一層頑張っていきたいです。
北海道で待ちうけていた「壁」。改めて感じる「お客さまへの感謝」

法人営業部(広域営業)東京オフィス勤務 中井 俊介 主査北海道での営業を担当。前任地は法人営業部(営業1) |
──広域営業グループへの異動を知った時の気持ちを教えてください。
驚きました。「販売エリア拡大に向けた体制を整備する」というのは聞いていたのですが、自分がそのメンバーとして呼ばれるとは、正直思ってもいませんでした。初めての単身赴任ということもあり戸惑いはありましたが、家族の理解もあって、新たなグループの立ち上げにポジティブに向き合うことができました。
──北海道担当とのことですが、どのぐらいの頻度で北海道に行っているのでしょうか。
多い時は月の半分以上に及びます。販売活動としては基本的に他エリアと同様で、ダイレクトメールの送付や電話がけを行い、その中で反応があったお客さまにご連絡し、北海道へ向かいます。なるべく同じ時期に多くのアポイントを入れるようにしていますが、それでも現地では空き時間が発生するため、そういった際には近くのお客さまに飛び込み営業も行っています。
北海道はいつか旅行で行きたいと思っていた土地ですが、まさか初めての北海道が仕事なんて、全く想像もしていませんでした(笑)。

──北海道での販売活動で難しさを感じるところはありますか。
常に感じるのは、地元である北海道電力の存在感の大きさです。
多くのお客さまが長期契約を結ばれていて、そもそも商談できるタイミングではなかったり、あるいは数年前に起きたロシアによるウクライナ侵攻に伴う電力価格の高騰の際に、新電力から北海道電力に契約を戻した経験から、他社への契約切り替えに消極的になっていたり…。お客さまとやり取りをしていると、さまざまな面で「地元の電力会社」と「それ以外」の間にある、壁のようなものを強く感じます。
そのため、価格面の話に入る前に、まずお客さまとの心理的な距離をどれだけ縮められるかが重要です。

──「地元電力会社の強さ」というのは、東北エリアのお客さまと東北電力の関係のようなものなのでしょうか。
近いものがあると思います。私は北海道での販売活動を通じて思ったのは「これまでの先輩たちが長い時間をかけて築いてきた、東北エリアにおけるお客さまと東北電力の強いつながりは、他の電力会社からはこんなに高い壁に見えていたんだ」ということです。同時に「かつて自分が対応してきたお客さまは、こんなにも東北電力に信頼を寄せてくれていたんだ」と、一層の感謝の気持ちを抱きました。
──北海道での販売活動の中で、東北電力の強みを感じることはありますか。
自分たちが思っている以上に、東北電力は実直で真面目だということです。お客さまとのやり取りの中でも「他の会社はここまでやってくれない」、「東北電力のお客さま対応は丁寧で誠実だ」と言われることが多いので、これが自分たちの強みなのだと思っています。

大阪オフィスで聞きました
域内での経験を域外での「強み」に

法人営業部(広域営業)大阪オフィス勤務 手塚 陸 さん関西エリアの営業を担当。前任地は宮城支店(法人営業) |
──関西エリアにおける東北電力は、どのような存在ですか。
「とりあえず話は聞いてもらえる」という感じですね。大きな工場を持つお客さまだと10社以上から相見積もりを取ることも珍しくなく、多くの電力会社から提案を受けて、「提案疲れ」のようなお客さまもいらっしゃいます。そういったお客さまでも、当社はお話を聞いてもらえることが多く、ネームバリューの強さを感じます。
もちろんお客さまによっては、「地元の企業を大事にしている」ということで、会ってもらえないことも多々ありますが…。

──東北電力の名前を出して驚かれることはありますか。
はい。電話口で「仙台から来るの!?」と聞かれたことがあります。遠いというイメージを逆手にとって、「大阪にオフィスがあるので、すぐ伺えます」とお伝えすると、お客さまとしても安心されるようで、会ってもらいやすくなります。
──宮城支店時代の経験で、現在の域外営業に役立っていることはありますか。
とにかく「対面対応を重視する」ということです。
私が宮城支店で法人営業をしていた際に一番苦しかったのは、外のエリアから来た電力会社を「なんだか信用できないよね」と冷ややかな目で見ていたお客さまが、その会社と面談を重ねるうちに心を開き、だんだんとその会社を信頼するようになっていく…ということでした。今は反対の立場となったので、当時やられて苦しかったことを、逆にやっています(笑)。
新規契約顧客の1つ、温泉をテーマとした娯楽施設「スパワールド」(大阪府大阪市浪速区)。何度も面談してお客さまの信頼を獲得したという
──対面で対応することの効果は感じますか?
対面対応の効果はとても大きいです。面談を重ねると、お客さまの表情はどんどん柔らかくなり、色々な内容のお話をしてくれるようになって、そこから例えば現在契約している電力会社の提案内容や接遇態度に不満があることが分かったり、相見積もりへの参加を呼びかけていただいたり、時には指値※を示していただき、契約獲得に繋がった案件もありました。
※指値(さしね):その価格で契約することを前提として、発注側が示す希望価格
また、お客さまの中には契約の条件として「対面対応ができること」を挙げる方もいらっしゃいます。電気料金が経営に与えるインパクトは大きく、契約電力を超過しそうな場合や、世界情勢が大きく変化する局面など、契約上の扱いや料金の見通しについてタイムリーな情報を得たいというニーズがあり、そういった意味でも大阪にオフィスがあって、いつでも機動的に対応できる体制があるのは大きな強みです。
- 上司の坂上副長と大阪オフィスにて
- 通天閣をバックに立つ2人
──関西へ来て印象的だったことはありますか。
商談の中で急に「ボケ」や「イジり待ち」をするお客さまがいるというのは大阪ならではだと思います(笑)。
スパワールドとの商談。時に冗談を交えながら、和やかに進行していた
あとは商談の中で、地域性や観光名所などの話が出ることもあるので、私も東北人として、東北エリアの魅力もさりげなく伝えていけたらと思っています。
記者の視点から
今回の取材で印象的だったのは「域外における新規開拓営業の難しさ」。詳しく話を聞くうちに見えてきた、その難しさの要因の1つである「お客さまと地元電力会社との長年の関係」は、まさしく東北電力が東北エリアでこれまで築き上げてきた価値と似たもののように感じました。
しかし取材を進めるうちに、この「長年の関係」は決して崩せないものではないことも見えてきました。お客さまとの商談に同行する中で分かってきたのは、東北電力の真面目さや誠実さ、フットワークの軽さなどを高く評価してくれるお客さまがいること、そしてその評価が新規契約という形で着実に実を結んでいることでした。
域外でも輝く「東北電力らしさ」の源泉は、「攻めの営業」の価値に共感する東京、大阪両オフィスの社員が持つ、強いマインドと高いモチベーションのように思われました。
1951年の創立以来、東北電力は「東北の繁栄なくして当社の発展なし」という思いを胸に、東北6県と新潟県の発展に、電気を通じて貢献してきました。会社が総合力を発揮するうえで大きなよりどころとなっているのは、社員が持つ東北・新潟地域への思いです。
インタビューで中井主査が語った「東北電力がこれからも変わらず、地域に価値を提供し続けるために、我々はいま、その種をまいている」という言葉は、これまでと変わらない東北・新潟地域への思いを胸に、域外で厚い壁に挑む、東京、大阪両オフィスの矜持が込められているように感じました。(佐々木達彦)

域外でも「より、そう、ちから。」!