原子力発電所の特重施設 設置期限見直しへ ~女川2号機への影響~

 4月1日の原子力規制委員会において、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限を見直す方針が決まりました。制度見直しの内容や、女川原子力発電所2号機の運転計画への影響などついて、原子力部に話を聞きました。

制度見直しの内容と、女川原子力発電所2号機の運転計画への影響

 4月1日の原子力規制委員会において、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限を見直す方針が決まりました。これにより、女川原子力発電所2号機の特重施設の設置期限は2026年12月から2029年12月へ延長される見込みとなりました。

 この見直しは、女川2号機の運転計画だけでなく、東北電力の事業運営やエネルギーの安定供給にも関わる重要な決定です。

 そこで今回は、制度見直しの内容やその影響について、原子力部(原子力企画)の阿部 数馬 主査にお話を聞きました。

 

 

そもそも特重施設とは

 各事業者は、万一の事故の進展に応じた対策を用意する「深層防護」と、各進展段階の対策に二重・三重の厚み(多様化・多重化)を加えることを基本的な考えとして、新規制基準が求める性能を確保するよう、それぞれの原子力発電所の特性に応じた安全対策を進めています。

 特重施設もその一つです。特重施設は、原子力発電所において、テロ行為や航空機の衝突など、極めて重大な事象が発生した場合に備えるための設備で、万が一、通常の安全設備が使えなくなった場合でも、原子炉建屋から離れた場所から、原子炉の減圧や冷却操作を行うことができます。なお、特重施設は「信頼性向上のためのバックアップ対策」という位置づけであり、その設置の有無が直ちに安全性に影響を与えるものではないとされています。

 特重施設はテロ対策設備という性格上、非常に頑丈な構造が求められ、また、原子炉建屋とは別な場所に建設することから、長距離のトンネルを掘削する必要があります。そのため、工事の規模が大きく、完成までに長い期間を要します。

 

特重施設と設置期限の見直しについて

 特重施設の設置期限について、これまで国のルールでは、原子炉など本体設備の「設計及び工事計画認可※1を受けてから5年以内」とされ、期限以内に完成しなければ、それ以降は運転を停止しなければなりませんでした。

 今回の見直しでは、この設置期限についての考え方が改められ、「営業運転※2の開始から5年以内」というルールに変更される見通しです。今後、パブリックコメント(国民からの意見募集)などの手続きを経て、正式に規則が改正される予定です。

 当社としても引き続き、その動向を注視していきます。

※1原子力発電所の詳細な設計や工事方法について、国から正式な許可を受ける。

※2新規制基準適用後の最初の定期検査において、原子力規制委員会による確認が終了し、確認証の交付を受けた日から営業運転が再開となる。女川2号機の場合、2024年12月26日。

 

女川2号機への影響は

 女川2号機では、これまで2026年12月が設置期限とされており、期限内の完成を目指して工事を進めてきました。

 しかし近年、建設業界における人手不足や働き方改革による労働環境の変化などの影響を受け、工事工程の見直しが必要となり、完成予定を2028年8月に変更しています。このため、従来の制度では、2026年12月から完成までの間、運転を停止する計画でした。

 

設置期限が延びることでどう変わるのか

 女川2号機の設置期限が、2026年12月から2029年12月に見直されることで、現在実施中の定期事業者検査※3が終了し運転を再開した後は、2026年12月で停止することなく、2027年6月頃まで運転が継続できる見込みです。なお、その後、原子炉などの本体施設と特重施設をつなぐ工事など、運転停止が必要な工事を行うため、2027年7月頃から2028年8月まで、約14カ月間は運転を止める予定です。

 結果として、これまでの計画より約6カ月間、発電できる期間が延びることになります。

※3法律で定められた、原子力発電所を一定期間ごとに停止して行う検査。設備の状態を詳しく点検し、安全に運転できることを確認する。

会社・社会への影響 -原子力の重要性-

 ご承知のとおり、日本は資源に乏しく、化石燃料の多くを海外からの輸入に頼っています。このため、エネルギー資源を安定的かつ経済的に確保することは、国全体にとって非常に重要な課題です。

 昨今の国際情勢を踏まえると、エネルギー資源の安定確保はますます重要となっています。

 女川2号機の運転期間が延びることで、化石燃料の使用を抑制できたり、電力の安定供給に貢献できるだけでなく、日本のエネルギー安全保障や脱炭素社会の実現への貢献にもつながることが期待されます。

 火力発電所で使う化石燃料の削減による燃料費削減効果は、昨年度の試算となりますが、月あたり60億円程度が見込まれています。

 

なぜ、設置期限が見直されることになったのか

 「設計及び工事計画認可を受けてから5年以内」という現行ルールの約10年にわたる運用実績を検証した結果、期限内の完成は多くの原子炉において現実的に困難であったことが分かってきました。

 原子力規制委員会は、こうした状況を踏まえ、制度が実態と合っていない部分があるとして、実態に即した形でルールを見直す必要があると判断しました。

 原子力規制委員会の山中委員長も定例会見の中で「制度の実績を積んだうえでの規制の継続的改善である」と述べています。

 

 なお、これとは別な観点ですが、当社を含む原子力事業者が参加する業界団体「原子力エネルギー協議会(ATENA)」が、2025年10月、建設業界における労働環境の変化などを理由に、期限を5年から8年に延ばすよう要請しました。原子力規制委員会は、労働環境の変化は事前に想定できたものであるとして、この要請を認めませんでしたが、原子力事業者としての課題を示し、しっかりと声を上げたことは、制度の在り方を見直す議論に向けた土台づくりとして、一定の意義はあったのではないかと考えています。

 

早期完成に向けて

 女川2号機の特重施設の設置期限は、2029年12月へ延長される見込みとなりましたが、当社としては、工事工程は見直さず、2028年8月の工事完了を目標に、安全確保を最優先に、効率的かつ着実な工事の遂行に努めていきます。

 今後も、安全を大前提にしながら、安定した電力供給に貢献していきます。

 

 

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