小売規制料金の値上げ申請について

 11月24日、東北電力は、経済産業大臣に小売規制料金値上げの申請をしました。前回改定した2013年2月以来、9年ぶりとなります。また、各種算定諸元を見直したことから、低圧自由料金についてもあわせて見直すこととしたものです(低圧自由料金については、別記事をご覧ください)。
 規制料金については、今後、国の料金制度専門会合で審議・査定された上で、値上げ幅などが確定となりますが、お客さまや地域への影響は非常に大きく、社会的関心が高まることが予想され、今後様々な場面でお客さまからお問い合わせをいただくことが考えられますので、概要を解説いたします。

全体像

 当社は、2013年9月の電気料金改定以降、電力小売全面自由化による販売競争の激化や再生可能エネルギーの普及・拡大などに伴う電力需給構造の変化など、経営環境が激変する中においても、徹底した経営効率化を進め、継続してコスト競争力の強化を図りながら電力の安定供給に努めてきました。

 

 そのような中、2021年2月および2022年3月に発生した福島県沖を震源とする地震により、火力発電所などにおいて甚大な設備被害に見舞われるとともに、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、燃料価格や卸電力取引市場の価格が高騰していることなどから、2022年度の連結決算において、2年連続の純損失となる見通しであり、自己資本比率も東日本大震災直後を下回る水準まで低下する見込みです。

 このままでは安定的な燃料調達や、電力設備の更新・修繕などへの投資を十分に行うことができず、電力の安定供給に影響を及ぼしかねない非常に厳しい状況にあります。

 

 こうした状況を踏まえ、当社では、既に自由化部門のお客さまの電気料金について、本年11月以降、「高圧以上の電気料金単価見直し」および「低圧自由料金プランの燃料費調整制度における上限設定の廃止」を実施しましたが、規制部門のお客さまの電気料金については、その性質に鑑み、可能な限り現行の水準を維持するよう努めてきました。

 しかしながら、今年6月以降は、燃料価格が燃料費調整制度の回収上限を超過する水準で推移・拡大し、その超過分を当社が負担する、いわゆる「逆ザヤ」の状態が続いています。

 

 また、電力需給構造の変化により、現行の電気料金収入では固定費の回収を賄いきれない状況も継続しています。これにより、自由化部門および規制部門ごとの部門別収支において、2021年度までは黒字を維持してきた規制部門についても、当年度の最終損益が550億円程度の赤字に転落する見通しとなっています。

 

 このため、大変苦渋の決断でしたが、規制料金についても、最大限の経営効率化の実施を前提に、2023年4月1日から、平均32.94%の電気料金の値上げを申請しました。今回の申請内容につきましては、今後,国の電気料金審査専門員会で審議・査定されることになります。

 

 あわせて、規制料金と平仄を合わせる形で、低圧自由料金の単価等を見直すこととしました(見直しの内容につきましては、別記事をご覧ください)。

 

 引き続き、徹底した経営効率化に取り組み、お客さまに安定的に電力をお届けするとともに、少しでもお客さまのご負担軽減につながるよう、電気の効率的なご利用方法などのご提案に取り組むこととしています。

 

【補足】

  • 料金単価に含まれる託送料金について、新たな託送料金制度(レベニューキャップ制度)導入に伴い、見直しに向けた託送供給等約款の認可・申請が予定されている。
  • 小売規制料金の認可までに新たな託送供給等約款が認可される場合は、小売規制料金が変動する可能性がある(今回は、認可を受けた現行の託送供給等約款に基づき、送配電関連費を算定)。
  • さらに、国の「電気・ガス価格激変緩和対策」により、23年2月分から9月分まで、燃料費調整単価から低圧7円、高圧3.5円、10月分は低圧3.5円、高圧1.8円が差し引かれる(11月分以降は未定)。

 

 内容が多岐にわたることから、「経営状況」「申請原価」「規制料金」に分けて、次の章からポイントおよびQAで説明していきます。

 

 

経営状況

「経営状況」のポイント

  • 再エネ導入拡大による火力発電所稼働率減のなか火力設備を維持する必要あり、販売競争激化による小売販売電力量減
  • 2021年・2022年の福島県沖地震で火力発電所など甚大な設備被害。復旧費用、代替電力の調達費用の発生
  • ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格や卸電力取引市場の価格の高騰、円安進行による電力調達コストの大幅増
  • 低圧規制部門の燃料費調整制度の上限価格超過(22年6月以降)。「逆ザヤ」が発生
  • 連結決算が2年連続の赤字(2022年度は2,000億の赤字見通し)
  • 自己資本比率(個別)が震災時を下回る水準まで急激に悪化
  • このままでは安定的な燃料調達や、電力設備の更新・修繕などへの投資を十分に行うことができず、電力の安定供給に影響を及ぼしかねない非常に厳しい状況
  • 11月以降、「高圧以上の電気料金単価見直し」および「低圧自由料金プランの燃料費調整制度における上限設定の廃止」を実施
  • しかしながら、「逆ザヤ」も継続・拡大傾向。また、電力需給構造の変化により、現行の電気料金収入では固定費の回収を賄いきれない状況も継続。そのため、規制部門が2022年度に550億円程度の赤字に転落する見通し
  • 最大限の経営効率化の実施を前提に、規制部門の値上げを国に申請

 

問.「電力需給構造の変化により、固定費が回収できない」とは何か。赤字なのは、燃料高騰等の一時的な要因だけではないということか。

答.前回改定時に比べて、再エネや市場からの調達が増える一方、自由化や省エネなどにより販売電力量が減少傾向になるなど、電源構成や前提となる需要が大きく変わっています。よって、今回の料金改定では、燃料価格の大幅な上昇だけでなく、脱炭素に向けた再生可能エネルギーの普及拡大や電力システム改革における市場化の流れなど、電力需給構造が変化していることも背景にあると考えています。

 具体的には、市場を介した電力取引が増加する中で、市場価格が高騰し調達コストが増加していることや、販売電力量が減少する一方で、安定供給に必要な設備を維持するためのコスト負担が必要となること、再エネの拡大に対応するため、燃料調達も含めた火力電源の柔軟性・弾力性確保も必要となることが挙げられます。こうした要因は、燃料費調整制度では調整されない費用であり、電力需給構造が変化する中で電力の安定供給を確保するため、今回の値上げをお願いさせていただくものです。

 

 ※一部内容については、7月以降の料金関係記事と重複している内容もあることから、過去記事もご参照ください。

申請原価

「申請概要」のポイント

  • 原価算定期間(2023~25年)の年平均原価は、最大限の効率化を織り込んでいるものの、前回改定時を大幅に上回る

   2兆1,636億円。そのうち、規制部門は3,494億円。現行原価からの値上げ幅は、32.94%になる

  • 原価が大幅に増加したのは、燃料費・購入電源費等の需給関連費用
  • 前提となる諸元は、前回改定時と比較して販売電力量が100億kWh以上減少する一方、燃料価格・市場価格は至近の高止まりを反映し大きく上昇。需給構造の変化に伴い、供給力の内訳も大きく変化
  • 効率化について、前回改定で織り込んだ効率化額(年1,139億円)のほか、既に着手している取り組み(848億円)に加え、さらに311億円の深掘りを今後の取り組みに織り込んでいる
  • 2024年2月以降に、女川2号機が再稼働することを織り込み。これにより、燃料費等の削減を通じ、値上げ幅の抑制(年間1,000億円程度、規制部門の改定率で5%程度の料金原価圧縮)につながる

 

 

問.今回の料金値上げの前提となる原価について教えてほしい。

答.今回の規制料金の算定にあたって、国が定める「特定小売供給約款料金算定規則」に則り、2023年度から2025年度までの3年間を「原価算定期間」としています。

 そのうえで、算定期間における会社全体の総コストに該当する総原価を算定し、その中で規制部門が占める原価をもとに、規制料金の契約種別ごとに料金単価を設定しています。

 規制部門における小売料金対象原価は、最大限の効率化を織り込んだものの、燃料価格や卸電力市場取引価格の高騰による燃料費および購入電源費の大幅な増加により、3,494億円となる見込みです。

 一方で、現行の料金水準を継続する場合の収入は2,628億円を見込んでおり、規制部門の料金については、32.94%の値上げ申請を行うこととしました。

 

 

 

問.原価算定にあたっての、販売電力量や発受電電力量などの各諸元を教えてほしい。

答.前回改定時と比較し、小売全面自由化や省エネの影響により販売電力量が100億kWh以上減少する一方、燃料価格・市場価格は至近の高止まりを反映し大きく上昇しています。

 供給力については、前回改定と比較して、需給構造の変化に伴い、FIT買取制度による再エネの受電量や能代火力3号機新設による石炭火力の発電電力量が大幅に増加している一方、石油火力やLNG火力については減少となっています。

 

 

 

問.十分な効率化は行ったのか。さらなる効率化をすべきではないか。

答.前回の料金改定時に、総額1,139億円の効率化を織り込んでおり、安全確保と安定供給を前提に、構造的なコスト低減の取り組みを加速させた結果、当該効率化を達成しています。

 今後も、厳しい収支・財務状況を改善するため、前回改定に織り込んだ効率化額のほか、既に着手している取り組み(効率化額:848億円)に加え、さらに年311億円の深掘りを今後の取り組みとして織り込んでいます。

 具体的には、電源競争力強化の取り組みによる熱効率の向上や、燃料調達の工夫、火力発電所の定検周期の長期化、競争発注拡大などによる調達価格低減の深掘り、人員の効率化などにより、安定供給に支障が生じない範囲で、引き続き徹底した効率化に取り組んでいきます。

 

 

 

問.原子力について、料金原価へどのように織り込んでいるのか(計画しているのか)。

答.当社の原子力ユニットについては、供給計画において稼働状況をすべて「未定」としていることから、原則として、いずれのユニットも原価算定期間中の運転を織り込まないことになりますが、女川2号機については、適合性審査に関する原子炉設置変更許可ならびに工事計画認可を受けていることなどの状況を踏まえ、今回の原価算定にあたっては2024年2月に再稼働するものとして運転計画を織り込んでいます。

 なお、東通1号機については、供給計画上、稼働を「未定」としていることに加え、現在、原子炉設置変更許可の審査に対応中の段階にあることから、今回の料金原価の算定には稼働を織り込んでいません(また、当社が受電する他社の原子力発電所も「未定」としているため、料金原価に織り込んでいない)。

 女川2号機の織り込みにより、燃料費等の削減を通じ、値上げ幅の一部抑制(今回申請した料金の燃料費水準で評価すると、年間で1,000億円程度、規制部門の改定率にして5%程度の料金原価を圧縮する効果)につながります。

 なお、安全対策工事については、共用施設分を含めて、5,700億円程度と評価しました。この工事費を前提に、原価算定期間における減価償却費を算定しています。

 

 

問.安全対策工事費5,700億円が原価に上乗せされているのか。

答.安全対策工事費5,700億円程度は、設備投資としての総額で、この金額がそのまま総原価の内数に積み上げられているものではありません。

 料金原価としては、原価算定期間における資本費(減価償却費および事業報酬(レートベースとして反映))という形で計上されます。

 

 

問.原子力の経済性をどのように考えているのか。

答.一定の前提を置いた試算ではありますが、申請した料金の燃料費水準で評価すると、女川2号機が再稼働することで不要となる火力電源の焚き減らしメリットと、再稼働により増加する減価償却費等の固定費などを総合的に評価すると、全体で約1,000億円程度の総原価低減に寄与しており、規制部門の改定率で約5%程度の値上げ率圧縮効果があります。

 原子力の再稼働により節約できる火力発電所の燃料費で評価しても経済性は十分にあると考えていますが、それ以外に、脱炭素化への寄与という点や、少資源国である我が国のエネルギー安全保障といった点からも、重要な電源であると考えています。

 

規制料金

「規制料金」のポイント

  • 一般家庭のモデルケース(従量電灯B・30A・260kWh/月)で、31.72%の値上げ。月額11,282円(値上げ額2,717円)。規制料金平均では、32.94%の値上げ。
  • 送配電設備の利用料金に該当する「託送料金」は上記金額には含んでいない。
  • 電力量料金だけでなく、近年の再生可能エネルギーの普及・拡大や販売競争の激化により、火力発電の稼働率が低下するなど、需給構造が大きく変化していることを踏まえ、固定費に相当する基本料金も値上げ。
  • 実際の値上げ幅や実施時期は、国の審査を経て決定となる。

 

 

問.規制料金の値上げ影響について教えてほしい。

答.規制料金全体では、1kWhあたり平均で14.21円(12月分燃調単価3.47円含む)、32.94%の値上げとなる見込みです。

 なお、燃料費の高騰が主な要因であるものの、近年の再生可能エネルギーの普及・拡大や販売競争の激化により、火力発電の稼働率が低下するなど、需給構造が大きく変化していることを踏まえ、固定費部分に相当する基本料金についても見直すこととし、基本料金、電力量料金をそれぞれ値上げいたします。

 

 

 

 主な契約メニューの値上げ影響は、以下の表のとおりです。

 

 

 

 従量電灯Bのご契約アンペアごとの値上げ影響(月額)です。

 

 

 

問.お客さまへの負担の大きさを考えると、値上げ幅をもっと圧縮するべきではないか。

答.電力の供給コストが電気料金の収入を上回る、いわゆる「逆ザヤ」の状態が継続しています。経営効率化に最大限努めてきたものの、このままでは、電力の安定供給に影響を及ぼしかねない非常に厳しい状況にあり、安定供給を確保するための、苦渋の決断であったことを何卒ご理解ください

 今回の総原価には、前回改定に織り込んだ効率化額のほか、既に着手している取り組み(効率化額:848億円)に加え,さらに年311億円の深掘りを今後の取り組みとして織り込んでいます。加えて、供給計画で未定としている女川2号の再稼働を2024年2月から織り込むことで、値上げ幅を抑制しています。

 

 

問.値上げまでの手続きは。

答.値上げ申請後は、経済産業大臣による申請内容の審査や、広く一般のお客さまの意見を伺う場である公聴会、関係閣僚会議などを経て認可を受けることとなっています。

 

 

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