生かせ現場の力 めざせDX ~オール配電で作る伐採管理システム~

 配電部(配電システム)が今年5月に導入した伐採管理システム。これまで紙やExcelベースだった伐採管理業務をシステムに一元化し、業務の見える化や効率化、災害対応のスピードアップなどが期待されています。現場と本社が一体となったプロジェクトの取材から見えてきたのは、伐採業務のシステム化にかける強い思いでした。

伐採サイクルやエリアの管理を高度化。雪害対応の経験から誕生

 配電部門の業務のひとつに、樹木の伐採があります。これは配電設備に接触しているまたは接触する恐れのある樹木を、電気の安定供給を守るために伐採する業務です。災害が起きた際に緊急的に行われることもありますが、伐採業務の多くは計画的に進められています。業務の運用にあたっては樹木の成長速度や地形の状況、地権者との交渉、予算を踏まえた優先順位など多くの要素が関係し、適切な管理が求められます。

 伐採管理業務は他の多くの業務と異なり、地域における電気需要の変化やお客さまからの電気に関わる申出とあまり関係しない比較的独立した業務だったこともあり、これまでは書類やExcelをベースとした管理方法がとられてきました。

 しかし2022年12月に発生した新潟を中心とした雪害では積雪に阻まれ、設備被害の全容が把握できない状態が続く中、高さ20mを超える竹が倒れるという他地域ではあまり経験のない事象など、倒木による断線が6千カ所で発生し、これらによる停電が長期化しました。この経験を踏まえ、配電部では非常時における被害想定をより早期に行える体制を確立するため、これまで以上に精緻な伐採サイクルの管理や伐採エリアの見える化が可能な専用システムの開発を決定しました。

 

 こうした経緯で生まれた「伐採管理システム」。このシステムが他の業務システムと大きく異なる点はその開発方法と開発体制にあります。

 業務システムは通常、専用の社内サーバと回線を用いることを前提に専門の会社によって開発されることが多く、必要な機能を幅広く備えることができる半面、高額な開発費用と長期にわたる開発期間が必要となるうえ、システムの利用時間帯が限られたり、頻繁な仕様変更が難しいという課題がありました。

 伐採管理システムは他の業務システムと比較すると必要な機能が限られていたことから、開発費用の削減と開発期間の短期化をねらい、クラウド※1上で動作する既存システム(販売品)をベースとして、そこに伐採管理業務のために必要な機能を後から盛り込む形でシステム開発が行われました。また導入後のシステム保守を社員が行うことも視野に入れて、日本IBMによるサポートを受けながらローコード開発※2を基本として進められました。

 また開発体制は、配電部門の本社の担当者に加えて現地で実務を行っている電力センターの若手担当者も加えてプロジェクトチームを編成し、現場サイドの意見や要望を随時盛り込みながらの直営によるシステム開発となりました。

※1:インターネット上のデータ保存先

※2:プログラムコード作成を最低限に抑えて開発すること

 

■伐採管理システム開発チーム メンバー(順不同)■

八戸電力センター 配電工事課 舘野 敬太さん

横手電力センター 配電工事課 小川 瑠星さん

水沢電力センター 配電管理課 目時 皐貴さん

仙台電力センター 配電工事課 岩渕 俊哉さん

ユアテック(山形電力センター付出向) 佐々木 裕志さん

郡山電力センター 配電工事課 二瓶 龍司さん

新津電力センター 配電工事課 渡辺 淳さん

新津電力センター 配電工事課 大沢 昌史さん

 上記のような工夫の結果、現場業務に必要な機能はしっかりと備えつつも、仕様策定から1年弱という短期間でのリリースが実現しました。

 

「担当者の声を聞く」プロジェクト体制で、現場が必要とする機能を実装

 伐採管理システムの開発にあたった電力センターの若手担当者にお話を伺いました。

 

──システム開発へ参加が決まった時の率直な感想を教えてください。

目時さん:現場で使用する新たなシステムの開発に携われることを嬉しく思いました。その一方で伐採管理システムは業務上の重要性、職場の期待値ともに高かったため、果たして自分に務まるか不安でした。

小川さん:現場で伐採業務を担当する代表として開発に携わる以上、現場にとって使いやすいもの、また現場だけでなく工事会社にとっても分かりやすい資料が出力できるものを目指して頑張ろうという気持ちでした。

──システム開発への参加はどのようにして決まったのでしょうか?

目時さん:岩手支社からの指名でした。前任地の宮古電力センターでは支社として初めての事前伐採※を担当しました。

小川さん:私も秋田支社からの指名でした。伐採業務とカイゼン活動のリーダーをやっていたので、ありがたいことに声がかかったのかもしれません。

※県の地域振興局や他企業などと共同で計画的に伐採する取り組み。調整の手間が増えるが、作業の分担や費用の折半ができるほか、緊急時に備え普段から顔の見えるつながりが構築できるメリットがある

──普段の伐採管理業務で問題に感じていることはありましたか。

小川さん:伐採するエリアが決まると地権者や過去の交渉経緯を確認するのですが、過去の地権者交渉の記録は全て紙で保管されていて、内容を確認するのに時間がかかっていました。また伐採のための現地調査に係る工量について、工事会社に渡すために作成する書類とは別に専用の集計表(Excel)を参照する必要があり、非効率的だと感じていました。加えて工事会社に渡す書類も、標準的な様式は定めがあるのですが、事業所ごとの事情に応じて多くの独自様式が使用されていたりと、現場によってバラつきがあることに問題を感じていました。

 

横手電力センターの伐採台帳。過去の交渉経緯が収納されている

 

目時さん:配電線事故が発生する原因のうち樹木の接触や倒木が占める割合は高く、先を見据えた精度の高い情報に基づき効果的、効率的な伐採を行うことは配電業務のいわば要だと思っています。しかし従来の書類やExcelによる管理では伐採すべきエリアは分かっても、生えている樹木の種類や太さ、あるいはスパン※単位での樹木の量や配電線との近接度合いといった細かな情報までは分かりません。伐採業務は限られたリソースの中でいかに優先順位をつけながら実施していくかということが重要なので、情報不足は大きな問題でした。

※配電線路上における電柱から次の電柱までの範囲

──システム開発業務を通じて気づいたことはありますか。

目時さん:一口に伐採業務といっても、地域による違いが大きいことです。例えば仙台であれば伐採対象が街路樹ということがあり、伐採と言うよりは剪定に近い作業になります。

小川さん:伐採対象に竹が占める割合も地域ごとの差を感じました。竹は雪が乗ることで大きくしなり、木よりも重くなってしまいます。地下茎で竹同士がつながっていて導電性もあり、年間の成長速度も速いので、特に注意が必要なんです。

──完成したシステムの中で、特に現場で役に立つと思うポイントはありますか。

小川さん:伐採案件に対して「重点伐採※」のフラグを立てられる機能ですね。国有林と保安林は特殊な申請が必要なのですが、私は前職の本荘電力センターでこれらの把握に苦労した経験を生かして、別管理しやすいようフラグを立てられる機能を追加してもらいました。フラグ機能により通常の伐採と重点伐採を簡単に区別できるようになり、別管理がしやすくなりました。重点伐採箇所の見逃しがなくなるだけでなく、工事会社に対しても以前より余裕を持って作業依頼ができるようになると思います。

※供給支障に直結しうる危険な樹木の伐採。他の伐採よりも短いスパンでの管理が必要になる

 

重点伐採のフラグ機能

 

目時さん:これまではエリア単位でしか管理できなかったものが1本単位で管理することが可能となり、予算を効果的かつ効率的に運用できるようになりました。また、伐採業務と一緒に運用することが多い耐摩耗性防護管※の管理業務に必要な機能も実装できたことも良かったと思います。

※樹木との接触を防止する目的で配電線に装着する樹脂製の管。毎年の点検が必要

──システムが完成した時の感想を教えてください。

目時さん:ヒアリングと試作を何度も繰り返して完成したシステムだったので思い入れもあり、運用開始が楽しみでした。

小川さん:システム開発は3年から5年くらいかかるものというイメージがありましたので、仕様策定からわずか1年弱という短期間で完成したことに驚きました。

──システム開発を通じて業務の効率化に対するマインドの変化はありましたか。

小川さん:今回のシステム開発を通じて、クラウドサービスを使用した既製品のシステムをベースにして開発することのメリットを強く感じました。日常業務でも同じように効率化できるものがないか、普段から考えるようになりました。

 

 

目時さん:日頃から業務に対しては効率化を意識して取り組んでいますが、より一層カイゼンマインドが強くなりました。まずは思いついたら行動に移して形にすることを意識して、周りの意見も取り入れながら最適な方法を考え、仕事が少しでもしやすくなる施策を現場から発信していきたいです。

 

 

記者の視点から

 今回の取材で強く感じたのは「本社と現場の強い信頼関係」でした。

 各県の担当者が集まるミーティングはリモートでの開催で出張が不要だったとはいえ、当直含め24時間365日の即応体制を維持する第一線事業所での業務と並行しての対応は何かと大変だったのでは?と聞くと「管理職をはじめグループの方々から業務調整をしてもらえました。『行ってこい』と背中を押していただいた感じでした。(目時さん)」という答え。また本社配電部とのやり取りについて尋ねると「(本社が)自分たちの意見にどんどん応えてくれて嬉しかったです。もちろんできること、できないことはありましたが、それでも現場の意見を尊重して開発を進めてくれたので良いシステムになったと思います。(小川さん)」とのことでした。プロジェクトに各県の担当者を入れ、現場の要望を丁寧に吸い上げながらシステム開発を進めていったことで、DXの取り組みが関係者にとって「自分ごと」になっていたことが分かりました。

 

 DXによる業務のシステム化にあたって、現場での使い勝手をどれだけ高められるかは重要なポイントです。既製品をベースとしたシンプルな開発工程を採用することで必要な期間や費用を抑えつつ、多くの現場担当者を通じて各県の事情や要望を手厚く盛り込むことで実用性の高いシステムに仕上げた今回のプロジェクト。これからの伐採管理業務について小川さんは「現在はまだ過去事例の参照などで紙に頼っている部分もありますが、これからシステムに様々なデータが蓄積されていき、伐採業務に要する時間は大幅に短縮できると思います。」と期待を述べました。伐採管理業務の今後に注目です。(佐々木達彦)

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