
井手取締役の主な経歴
2006年 6月 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(現 株式会社NTTドコモ) 執行役員社会環境推進部長
2008年 7月 同 執行役員中国支社長
2012年 6月 同 執行役員情報セキュリティ部長
2013年 5月 らでぃっしゅぼーや株式会社(現 オイシックス・ラ・大地株式会社)代表取締役社長(2014年5月退任)
2013年 6月 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ執行役員コマース事業推進担当(2014年6月退任)
2014年 6月 日本電信電話株式会社常勤監査役(2020年6月退任)
2018年 8月 NTT株式会社監査役(2020年6月退任)
2020年 6月 住友商事株式会社社外取締役
東北・新潟地域との縁、東日本大震災の経験
──当社の取締役になられる前に、東北・新潟地域とのかかわりはありましたか。
東北地域との初めての出会いは、高校時代所属していた山岳部の夏合宿で朝日・飯豊連峰を縦走したことです。美しい山脈や咲き乱れる高山植物に魅了されました。
社会人になってからも旅行やスキーなどで東北を訪れていましたが、特に夫が仙台勤務となり一年半ほど単身赴任をしていた頃は、子供の長期休みに裏磐梯や宮城蔵王を訪れたり、スキーや温泉を満喫したりと、家族で東北を楽しんだのも良い思い出です。
またドコモでCSR推進を担当していたとき、全国の「ドコモの森」の森林整備活動を行っていたのですが、その活動で山形県の「月山の森」を訪れたりもしました。

──NTTドコモでは中国支社長をご経験されていますが、当時の思い出を教えてください。
NTTグループで勤務した43年間のうちに19回の異動を経験しましたが、その中で唯一関東圏を離れて広島に単身赴任していた中国支社長時代のことはとても印象に残っています。
中国支社の管轄エリアは中国地方の5県で、山陽、山陰それぞれに自然や特産物などの特徴がありました。また当時は今ほどではないものの度々ゲリラ豪雨の被害があり、通信の復旧に支社を挙げて全力で取り組んでいました。支社長はその地域の通信やサービスに関する最終的な責任者ですので、気象情報や事故、事件など、24時間365日にわたって様々な情報に目を光らせるようになりました。
今も東北電力のWING端末に時折現れる悪天候や災害に関係する通知を見ると、当時の緊張感を思い出します。
また、災害の話で言えば忘れられないのはやはり東日本大震災です。
地震発生当時、私は週明けに本社で開かれる支社長会議に出席するために飛行機で東京に向かっていました。羽田空港の滑走路は封鎖され、飛行機がなかなか降りられず、やっとのことで降りたら今度は電車やモノレールが止まっていて、やむを得ず空港で一晩を明かしました。その時は自分の事で精一杯でしたが、その後しばらくは毎日のように本社と支社をつないだテレビ会議で東北地域の設備の被害状況が報告され、中国支社からも応援部隊を派遣しました。応援から帰ってきた社員から現地が本当に大変な状況であることを聞き、大規模な災害やそれに伴う停電、通信途絶といったことの怖さを再認識しました。
東日本大震災の後は仕事やプライベートで度々仙台や南三陸、会津など、東北地域を訪れました。復興に向けて頑張る多くの方々と接する機会があり、その困難に負けない粘り強さに感銘を受けたのを覚えています。

電電公社からNTTへ。ワクワクするような気持ち
──電電公社(日本電信電話公社)は民営化され、NTTになりました。その過程で印象に残っていることはありますか。
民営化によって実に色々な変化がありましたが、特に印象に残っているのは1985年4月1日、民営化された初日のことです。職場に出勤すると、全社員の机の上に会社の新しいロゴとシンボルマークが入った名刺が置かれていました。それまで名刺は自己負担で作るものだったので、会社から支給されたことに感激するとともに、会社の体制が変わったことを身をもって感じました。
それまでの電電公社はどうだったかというと、逓信病院で子どもを産み、社宅があって、家族旅行は保養所、お葬式は共済会といったように「ゆりかごから墓場まで」の手厚い福利厚生制度があり、極端な話、社外の人と接しなくても生活が出来てしまう環境でした。業務においてはお客さまのことを「加入者」と呼び、電話の無駄遣いを減らすための「長電話はやめましょう」といった上から目線な標語を掲げるなど、世の中の「普通」とは大きくズレていました。電電公社の最後の総裁で、NTT最初の社長は石川島播磨重工業(現IHI)出身でしたが、その方から私たちの使っている言葉を「電電語」と名付けられ、「社会に通用しない」とも言われました。
それが民営化によって、社員は「電話を使っていただくことで利益を生む」という意識を持つようになりました。業務に関係するあらゆる価値観が変わり、競争が始まることへの不安はありましたが、その一方で事業展開の自由度が増して、「色んなことをやっていいんだ」とワクワクするような気持ちになったことを覚えています。実際、電電公社時代に電話オペレーターとして勤務していた多くの女性社員が新しい領域のビジネスにチャレンジして、テレマーケティング会社など新規事業の会社が全国に設立され、女性社長も多く誕生しました。
当時育児休職明けだった私は、不安を抱えながらもそのように大きく変化していく会社や業務の流れに何とか付いて行こうとしていたのを覚えています。そんな中で私が携わったのは電話の利用促進キャンペーン「カエルコール」(会社員が家に帰る前に「今から帰る」と電話する習慣の定着化を狙ったもの)の浸透活動でした。帰宅する家族からの電話のありがたさや安心する気持ちを込めるうえで、育児休職中の経験が役立ちました。このキャンペーンは、活動の甲斐あって広告の賞もいただきましたし、目標の一つにしていた「現代用語の基礎知識」への掲載も果たしました。

東北電力グループに思うこと、社員へのメッセージ
──当社グループの強みや、魅力的に感じる点があれば教えてください。
社員の皆さんが「社会の基盤を支える電力事業に携わっている」という使命感を強く持たれているということ、またその使命感が組織のDNAとしてしっかりと引き継がれていることです。また、これまでにお会いしてきた社員の皆さんが何事にも手を抜かない、労を惜しまない姿勢を持っていることに感心しています。
──当社取締役への就任前後で、当社に対する認識やイメージに変化はありましたか。
電力自由化や分社化のような大きな環境変化にあっても、新たな競争環境に対応し、ビジネスの変革に挑戦しようとしているところは、NTTの民営化や持株会社化のプロセスと通じるものがあると思いました。
就任前の想像と違ったのは、事業環境に影響を及ぼす要因の多さです。燃料や電力市場価格の変動、自然災害の増加やエネルギー政策の動向など実に多くのことに気を配らなければならない環境にあることを認識しました。新しいことへの挑戦も重要ですが、ここ数年はこうした経営の重要課題に対応し、事業基盤を整えることに注力せざるを得なかったのだと思います。
──情報通信業界に長く携わってきたご経験から、当社がDXを推進していく意義と、当社に期待する点について教えてください。
労働力不足が加速している現在、DXによる自動化や省力化は本業である電力の安定供給や現場業務の安全性向上に不可欠です。まずはそこにしっかりと取り組むこと、加えて東北電力グループには発注先などのビジネスパートナーに対しても支援していくことを期待しています。また、グループ内のDXだけではなく、CN、GX関連のデジタルビジネスの創出にも取り組んでいただきたいと思っています。

──「よりそうnext+PLUS」の実現のために取り組む社員にアドバイスがありましたらお願いします。
「地域とともに」というワードは東北電力グループの仕事をするようになってから頻繁に耳にするようになりました。この言葉はグループのDNAとして浸透していて、グループの目指すところであると同時にそこで働いている皆さんのやりがいや誇りの源泉になっていると感じます。とても素晴らしいと思いますし、これだけ地域への思いで一体になっている企業グループはなかなかないのではないでしょうか。
地域への強い思いを持つ皆さんは事業所の集約などが進んでいる現状と「地域とともに」という言葉の間に戸惑いを覚えるかもしれません。ただ、私が大事だと思うのは「お客さまに相談に来てもらう」ではなく「自分たちがお客さまのところに行く」という意識です。「自分たちのために提案しに来てくれた」というのはお客さまの中で強い意味を持つはずです。ぜひ色々なお客さまに対して積極的にアプローチし、電気を切り口とした付加価値の提供といった当社グループの強みを生かして出来ることを提案して欲しいです。東北電力グループと一緒に何かをするとこんなにいいことがあると地域の方にわかってもらうことが大事です。
──最後に、社員にメッセージをお願いします。
地域の課題に気づくためには、自分と異なる発想をする人とのコミュニケーションが大事です。
自分と同質の価値観に囲まれていては大きな成長は期待できません。ある種の居心地の悪さというか、何となく心がザワザワする感じ、自分とは違う価値観やものの見方に触れて意見交換をし、お互いに認め合うことが重要だと思います。
電電公社が民営化された頃を思い出すと、当時の私たちは「NTTになったら変わったね」と言われることを目標にしていました。みなさんは「電力さん、変わったね」と言われているでしょうか。どんなことにも好奇心を持って、知らない世界や異なる意見を知り、新しいアイデアに繋げて欲しいと思います。電力の安定供給という「伝統」を守りつつ、付加価値を生み出す「革新」に挑戦していきましょう。

【バックナンバーは以下リンクから】
川野邊社外取締役インタビュー ~失敗を恐れずチャレンジしよう~
永井社外取締役インタビュー~「強くてよい会社」を目指して共に頑張ろう~
植原社外取締役インタビュー ~どんな場面でも、「想像力」を大切に~