
世界トップレベルの研究施設を支える冷却水管理
ナノテラスでは太陽光の10億倍明るい光(放射光)を生成し、ナノメートル(10億分の1メートル)レベルで物質を鮮明に可視化することができます。この技術により、環境、食品、医療などのさまざまな分野で研究が可能な他、社会インフラの安全性向上や脱炭素社会の実現にも期待が寄せられています。
また、仙台市は、ナノテラスを中核に「せんだい都心再構築プロジェクト(電力ビル再開発事業含む)」や、産学官が一体となって社会的な価値を生み出していく東北大学の「サイエンスパーク」を柱として、国内外の大学・研究機関や企業の研究開発部門が集積し、新たな価値創造の場の形成を進めています。
東日本興業では運用開始1年前より、施設所有者である一般財団法人 光科学イノベーションセンターから施設管理を受託し、施設全般の管理に加え、放射光を生成する実験設備(加速器)の安定冷却に欠かせない冷却水の管理を担当しています。
冷却水設備は、線型加速器、高密度磁石、ビームライン装置など、全部で8つの独立した系統から成り立っていますが、実験装置としてはそれぞれの系統が一連の役割を果たしています。したがって、1つの系統でも適切に管理できないと、実験に影響を及ぼす原因となります。主な管理は以下のとおりです。
- 送水温度の管理:実験装置はマイクロン(100万分の1メートル)単位の精度で据付けられており、なおかつ温度変化に敏感な材料が使われているため、冷却水の送水温度は25℃±0.2℃の非常に狭い範囲で管理しています。また、この管理値内でも温度変化が緩やかになるよう求められ、自動制御による調整を行っています。
- 送水流量・送水圧力の管理:実験装置への冷却水供給は8系統それぞれの定格流量で行われています。流量のわずかな減少でも実験装置停止のリスクがあるため、リアルタイムで流量をモニタリングし、予期せぬトラブルに備えています。また、送水圧力は定格上限を超えると実験装置からの漏水や損傷のリスクがあるため、同様にリアルタイムでモニタリングしています。
- 冷却水純度の管理:冷却水は冷却効果だけでなく、一部の実験装置では絶縁効果も兼ねています。純度が低下すると、絶縁効果がなくなり漏電や機器損傷の危険性があるため、フィルター類は早めに交換するなど配慮しています。
さらに、定期的なメンテナンスを実施することで、障害の未然防止と冷却水の安定した運用を実現しています。

- 線型加速器
- 高密度磁石
これまでの経験やノウハウで実現したサービスで貢献
ナノテラスで業務を開始してから、工事期間・整備期間・運開前調整期間といったゼロからの立ち上げ業務に加え、実験装置の管理者である国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構と連携し冷却水設備の運用方法を構築してきました。
また、施設運用・建物維持管理において、これまでの経験と東日本興業ビル管理実績のノウハウを提供しながら無事に運開を迎えられたことは、大きな貢献です。
特に施設運用における法的知見の提供などは、東日本興業の特徴である不動産事業と施設管理を一体で行ってきたことで実現した“特別なサービス”で、管理主体のビル管理会社では提供できない価値であったと感じます。
世界に向けて発信するナノテラスから、私たちの生活や産業の発展、そして世界的な発明が生まれる可能性がある未来に向けて、東日本興業社員は施設管理を通して貢献できていることにやりがいを感じ、誇りを持って業務を遂行するとともに、ナノテラスにとって不可欠な存在でいられるよう、これからも努力し続けていくこととしています。
出典:一般社団法人光科学イノベーションセンター、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構