発電メンテナンスの未来を拓く ~東北発電工業の挑戦~

 東北発電工業では発電メンテナンス事業の将来を見据え、2020年から東北電力と協働して「発電メンテナンス事業再構築プロジェクト」を進めています。同社が東北電力グループにおける発電メンテナンス事業の中核会社として挑んでいるプロジェクトの歩みと現在の状況についてご紹介します。

「発電メンテナンス事業の将来を支えるために」発電メンテナンス事業再構築プロジェクト

 東北発電工業が東北電力と協働で2020年に発足させた「発電メンテナンス事業再構築プロジェクト」(以下再構築PJ)。これは東北発電工業が東北電力グループにおける発電メンテナンス事業の中核会社として、発電事業の価値の最大化や競争力強化、一般市場での収益拡大、新たなビジネスモデルの構築などを目指すプロジェクトです。

 

再構築PJのこれまでのあゆみ

 再構築PJでは課題を抽出するため、まずは現場実態を観察することからスタートしました。その結果、現在の現場作業では一部の熟練者に頼る場面が多く技術継承や人材育成が進んでおらず、労働災害や品質不適合の発生がみられた他、工事書類の作成に多くの時間がかけられており、このままでは将来にわたって安全や品質を維持・向上すること、また生産性を継続的に向上させることが難しいことが判明しました。

 現場観察から抽出されたこれらの課題に対する打ち手として、再構築PJ検討チームは、「東発定検ノート」と名付けられたタブレット端末やクラウドカメラ※を活用した工程管理、フロアマネジメントなどの様々な取り組みからなる改善施策「新たな現場施工管理マネジメント(現場作業の見える化・標準化によるPDCAの更なる強化)」を仮説として設定しました。

 この仮説に基づき火力発電所および水力発電所の代表地点で施策を運用し、2024年度にかけて検証されました。

※撮影した映像をインターネット上に保存するカメラのこと

 

 これら施策は検証の結果、社内の理解浸透に向けたフォローや運用ルールの整理など細かな課題はあるものの、現場作業の効率化や安全・品質の向上、現場技術の継承、社員の業務時間の削減に効果がある取り組みであることが認められました。

 

 

(関係者の声)

  • 発電メンテナンス事業を取り巻く東北電力グループとしての課題に対して、目的・目標・⼿段を明確にし、東北電⼒・東北発電工業の⽴場を超えて解決策や将来の方向性を議論・検討でき有意義なものとなった。

  • 従業員の減少と⾼齢化が進む中で技術継承が課題となっており、ベテランが培ってきた技術や肌感覚で判断してきたノウハウをPJ施策でデーターベース化することで若⼿へ確実に継承できるものとなった。

  • 現場を改善し、新しいことに挑戦していくには、時にこれまで現場で築き上げてきたやり方を変えていく必要がある。そのためには、現場の理解を得るための⼤きなパワーが必要となるが、現場の理解が深まることで、改善への道が進んでいくと感じた。

 

 改善施策「新たな現場施工管理マネジメント」に対する5年をかけた仮説検証を先導し、「新たな現場施工管理マネジメント」の効果を明らかにした再構築PJ検討チームは2024年度をもって予定通り解散。「新たな現場施工管理マネジメント」の実行主体は東北発電工業社内の各主管部門に移り、2025年度以降は東北電力とも連携して課題の改善に取り組みつつ、施策の展開先を火力発電所は全地点、水力発電所は東北電力の会津若松支社管内に展開することとしています。

 

 再構築PJ検討チームが解散にあたって最後に示した提言は以下の3つでした。

  • 再構築PJ施策を定着させるために、本社によるフォロー活動を行うこと
  • 工程短縮と時間外上限規制を両立した工期の最適化について東北発電工業と東北電力の両社で検討・整理していくこと
  • 現場作業改革に向けた創意工夫を促すため、協力会社を含む貢献度に見合った対価(契約方法・労務単価見直し)について両社で検討・整理していくこと

 

 今後の着実な実行が期待されています。

 

具体的な取り組み

再構築PJで実施された取り組みの一部をご紹介します。

■工程ダイアグラム

 工事進捗と工程の関連性を見える化したダイアグラム。これまで進捗管理は「バーチャート工程表」、工程の詳細や全体フローは「施工要領書」と分けて管理していたが、これを一元化したもの。各工程の前後関係や複雑な作業動線を分かりやすくした。

 

 

(現場の声)

  • 従来のバーチャート工程表と比較すると工程ダイアグラムは作業の関連性などが把握できることから技術継承に期待できる。

 

■フロアマネジメント

 スペースの活用や管理をしやすく改良した、分解部品などの配置図面。これまで工事単位で作成していたものを更に細分化し日単位とすることで、仮置きなどの途中経過が見えるようになりスペースの有効活用が可能となった。また書き込みを追加できる仕様のため、安全や品質に関係する事項の共有にも役立つ。

 

 

 またタービンフロアなどに仮置きしておく車室やローターといった大型部品の配置については、これまで熟練者の経験で置き場所を決めていたのを、部品に見立てたブロックを使用した事前検討で決定する。ムリ・ムラ・ムダをなくした配置が可能となり、工程や人員の効率化が可能となる。

 

 

(現場の声)

  • これまで以上に詳細にエリア調整を行うことができた。また、フロア状況の見える化を図ることで作業員に対し、明確に分解部品配置場所を指示することができた。

 

■工事書類のクラウド運用

 工事書類をクラウド化しペーパーレスとしたもの。外出先からの確認や編集ができるようになり業務が効率化できた他、書類の紛失も防げる。

 

 

(現場の声)

  • 発電技術センターへの⼯事連絡書(作業日報)作成と提出が⼤幅に業務負担減となった。今までは、Excelで作成印刷してPDF化し、メールやコラボサイトへの登録あるいはFAXで送信というプロセスがあったが、GEMBA Note※を共有化していることにより作成後は電話⼀本の連絡で済んだ。(現場代理人)※作業現場のIT化をサポートする汎用アプリケーション。「手書き書類・帳票・記録類のデジタル化」「リアルタイム情報共有」などの機能を有する
  • 作業予実表や作業安全⼿順シートを容易に入力(作成)できることによって時間外の削減ができた。(協⼒会社)

 

■施工要領書の電子化

 作業の手順やポイントなどを記載した施工要領書を紙ベースから電子化(タブレット端末で使用)したもの。合わせて様式を見直すことで現場での写真挿入やメモ追記がしやすくなり、社内におけるノウハウの共有がしやすくなる。

 

■ステーション工法

 火力発電所の燃焼器のような同種大量の設備を分解メンテナンスする際に、「分解」「手入れ」「検査」「組立」といった一連の作業を行うための専用区画(ステーション)を準備し、そこに設備を1セットずつ順番に持ち込んで流れ作業のように連続実施する方法。全セットを対象に同時に作業していた従来の方法(店広げ方式)から仮置き作業や運搬に係る時間が削減され、大幅に効率化できる。

 

 

(現場の声)

  • 火力発電所のメンテナンスは50年以上携わっているが、この工法は革命的だと感じた。昔の「国による直接検査」に端を発している従来のやり方に対する変革の起点になる。この工法を広く実現するには東北電力の理解が不可欠。ぜひ埋没させないようにしてほしい。(小森キャリアパートナー)

 

ある現場のホワイトボード。ステーション工法を見出すまでには多くの模索があった

 

 

報告会を実施

 再構築PJは3月4日、報告会を開催しました。

 報告会では東北発電工業社内関係者のほか東北電力からも火力部や水力部の関係者が参加し、これまでの成果や今後への提言が発表されました。(発表資料はこちら)

 

 

 参加した再構築PJ関係者からは以下のような振り返りがありました。

  • 再構築PJメンバーの熱量は高く、施策も非常に効果があるものだった。総合エンジニアリング事業のレベルアップをけん引していきたい。
  • 新しいやり方を現場に浸透させるには小さな成功の積み重ねが必要だと感じた。
  • 現場はまだまだ改善の余地がある。「総合エンジニアリングのプロフェッショナル集団」としてこれまでのやり方にとらわれずに改革を進めていきたい。

 その後、参加した役員からは以下のような感想が述べられました。

  • DXや品質向上のみならず少子高齢化への打ち手としても評価したい。
  • 各事業所で濃淡が出ないよう、良好事例を共有する仕組みを作り、現場を盛り上げたい。
  • 現場ではメーカーが行う工事もあり、東北発電工業だけの取り組みでは定期点検の日程短縮は難しい部分もある。他の会社も巻き込んでやっていく必要がある。
  • 東北電力グループの企業にも広く紹介し、互いに刺激し合っていきたい。

 

再構築PJを振り返って

 5年をかけた検証を行い、2024年度末で解散になった再構築PJ検討チーム。これまでの取り組みを東北発電工業火力部の山田一期さんに振り返っていただきました。

 

火力部 山田 一期 さん

 

──再構築PJの話を最初に聞いたとき、どう思いましたか。

 発電所のメンテナンス事業は東北発電工業の大きな軸ですし、さらに一般市場でも利益を上げていることもあって、「発電事業の連結価値最大化」という再構築PJの目的に初めはピンとこなかったというのが本音です。しかしPJの取組みを進めるうちに、発電メンテナンス事業にはまだまだ改善できるところがあることが分かりました。

──再構築PJを進める中で苦労したところはどこですか。

 これまで何十年も続けてきた仕事のやり方を変えるには関係者の理解と協力が必要不可欠で、施策の意義の説明や、現場へのフォローに心を砕きました。また東北電力の方々をはじめとしたメンバーとの意見交換では複雑な内容に戸惑う場面もありましたが、物の見方や考え方など大変参考になりました。

──現状での成果をどのように受け止めていますか。

 再構築PJと現場が一体となって取組みを進めてきたことでPJメンバーならびに現地社員の意識に変化が起きており、これが何よりの成果だと思います。またPJ施策に限らず、デジタルツールなどを活用した改善活動が現場主体で自発的に行われるようになってきたことも大きな変化ですね。

 再構築PJで検証された施策が広く展開されることで、これから東北発電工業の現場業務は変化の時期を迎えることになります。確実に成果が得られるように、会社が一丸となって引き続きスピード感を持ちながら取り組んでいけたらと思います。

 

発電メンテナンス事業のいまと、これから

 現場の社員はこれまでの取り組みをどう感じていたのか、東北発電工業東新潟支社の平岡峻也さんにお話を伺いました。

 

東新潟支社 複合発電工事二課 平岡 峻也さん

 

──普段行っている業務を教えてください。

 ガスタービン設備のメンテナンス工事における監理、監督業務を行っています。

──普段の業務で課題に感じていたところはありますか。

 作業員の高齢化に伴い、技術継承について課題を感じていました。

 また情報共有の迅速化も課題だと感じていました。東北電力、東北発電工業および協力会社の間で情報を共有する際に、東北電力と東北発電工業の間では電子媒体で共有することが一般的ですが、東北発電工業と協力会社の間ではまだ紙媒体で共有することが多かったんです。

──再構築PJの取り組みの中で印象的だったものはどれですか。

 工事書類のクラウド運用ですね。現場へ持ち込む書類のペーパーレス化が図られ、また現場管理を行いながら書類作成が可能となり業務が効率的に実施できるようになりました。

──業務や労働環境で変わったと思う部分はありますか。

 インターネット越しに写真や資料へ図示して説明ができるようになったため、工事の打ち合わせや相談がオンラインでできるようになり、非常に便利です。協力会社の方々も再構築PJの検証に携わる中で積極的にフィードバックをくださるようになり、意識の変化が東北発電工業の周囲にも波及していることを感じています。

──再構築PJのこれからの取り組みにどのような期待をしていますか。

 今後も各現場が抱えている課題に焦点を当てた、また現場が気づきを得られるような施策の提案を期待しています。

 

イイね!
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