
(おさらい)国際大電力会議(CIGRE)って?
CIGREは、電力システムに関する技術情報の交換や研究を目的とした非営利の国際組織で、1921年にフランスで設立されました。電力分野における国際学会の役割を担い、IEC(国際規格)やJEC(日本規格)とも密接に関係しています。日本からは電力会社やメーカーが多数参加しています。
東北電力ネットワークの送電部門は、CIGREの架空送電線路分野における国内分科会の事務局を担当しています。国内分科会委員長を中心に、送変電建設センターのメンバーが活動しています。
また、同社はCIGREで過去に紹介された電線温度を低減させる特殊な塗料に着目し、導入に向けて海外企業と共同研究を行うなど、CIGREを通じて収集した国際的な電力業界の動向や最新技術を現場や業務に生かす取り組みを進めています。
CIGRE2025はカナダのモントリオールで開催
CIGREは偶数年にパリで開催される、世界各国から数千名が参加する大規模な本大会とは別に、奇数年にいずれかの都市で開催される、本大会に次ぐ規模のシンポジウムがあります。今年のシンポジウム「CIGRE2025カナダ モントリオール大会」(以下モントリオール大会)は10月29日から11月3日まで開かれ、投稿された論文は46カ国から600編以上に及びました。モントリオール大会の会場となったモントリオール国際会議場には各分野の専門家が集まり、参加者は1,800名以上、スポンサーや展示企業は90社を超える大規模なイベントとなりました。特に架空送電線路分野では、送電線の運用、保守、建設、安全技術、AI活用、観光資源としての活用など、幅広いテーマで発表があり、最新技術や課題について活発な議論が行われました。
東北電力ネットワークからは送変電建設センター(送電)の藤井健人さんと加藤宗さんの2名が現地に参加し、論文発表と情報収集を行いました。
なお、CIGREには地域別のテクニカルミーティングもあり、9月に開かれたアジア・オセアニア地域を対象としたミーティングには仙台電力センターの尾留川万季さんが参加し、研究結果を発表しています。
(参考)送電の若手社員が国際大電力会議(CIGRE)で躍動~業務論文から世界の舞台へ~|東北電力社内報 デジタルBRIDGE (tohoku-epco.co.jp)
若手技術者部門における最優秀賞を受賞!
今回のモントリオール大会で東北電力ネットワークは「送電鉄塔用プレキャスト基礎の研究」に関する論文を投稿し、現地で発表を行いました。そしてその発表はCIGREの若手技術者の論文選考において、架空送電線路分野の最優秀賞を受賞するという快挙を達成しました。
発表を行った送変電建設センター(送電)の加藤宗さんにお話を伺いました。
──今回発表した論文の内容を教えてください。
通常は生コンクリートを現場で打設することにより構築する送電線の鉄塔基礎を、「プレキャスト」と言われる、あらかじめ工場で製作した部品を組み立てる工法の研究開発に関する論文です。送変電建設センターで継続して研究しているもので、現在は私が主担当となり進めています。
──プレキャスト工法のメリットは何ですか。
一番大きいのは、工期の短縮や施工管理の負担軽減です。
厳しい山間地の鉄塔建設を例に挙げると、現在は生コンクリートをヘリコプターで麓から現場へ運び、現場で型枠に流し込むという作業を何度も繰り返して巨大な基礎を作っていますが、品質の観点から、時間の経過によりコンクリートが固まってしまう前に作業を終わらせなくてはいけないため、一連の打設作業は遅滞なく、かつ止めずに行う必要があります。したがって打設作業の日程はヘリコプターが飛べる日に合わせて組む必要があり、天候によっては常に工程遅延のリスクと背中合わせでした。
これがプレキャストの場合だと基礎をあらかじめいくつかに分割して設計し、工場で作ったものをヘリコプターで輸送して、現地で基礎の形に組み立てるという作業になります。ヘリコプターで輸送するところは同じですが、輸送と組み立ての日程に自由度が生まれ、現場管理の労力低減が期待でき、工程遅延のリスクも抑えられます。また、コンクリートの型枠も不要で、固まるまでの養生期間も不要ですので、工期短縮の面でもメリットが大きいです。
さらに生コンクリートを固める場所が現場から工場へと移ることで現場負担が軽くなるだけでなくコンクリートの品質も一層安定しますし、部品の1つ1つが重くならないように設計を工夫すれば、より小型のヘリコプターで運ぶことも可能なので、機体のスケジュール調整も容易になります。
──プレキャスト工法の課題は何ですか。
従来のコンクリート打設による構築と違い、一体成型ではないため、部材同士の結合部が鉄塔の荷重に耐えられるかなどはよく検証する必要があります。
また、従来はコンクリート打設前に行っていた基礎の水平位置、高さなどの据付寸法の調整がプレキャストではできないため、新たに低コストかつ容易な調整方法を検討する必要があります。
──発表はいかがでしたか。
施工力不足への対応や工期短縮といったニーズは他国も同様のようで、各国の技術者から技術的な質問を多く受けました。また、発表後にはインドからの参加者に囲まれて質問を受けるなど、国際的にも注目を受ける研究内容であることを実感しました。
- 発表を行った大ホール
- 発表する加藤さん
──若手技術者の最優秀賞を受賞されましたが、受賞はいつ知ったのでしょうか。
発表は会議の夜に開かれたパーティーで行われました。事前連絡はとくになかったため驚きました。
──どういった点が評価されたのでしょうか。
事務局からの明確なフィードバックなどはなかったので、評価されたポイントなどは分かっていません。
基礎のプレキャスト化は他社でも研究がありますが、強度の問題をクリアするために部材を現場で溶接したり、生コンクリートを使って結合したりしているようです。当社では現場負担の軽減を第一に考え、生コンクリートを一切使用しない方法を目指しているので、そういった独自性や、あるいは現場へ「より、そう」姿勢が評価されたのかもしれません。
──カナダでの滞在はいかがでしたか。
モントリオールは北米東部のケベック州に位置し、公用語がフランス語という特徴を持つ都市です。特に「北米のパリ」とも呼ばれる歴史を感じる街並みが綺麗で、私も会議の空き時間を活用してノートルダム大聖堂などを見学しました。
7泊8日の滞在中、食べ物は基本的にパンと肉がメインで最後まで慣れませんでした。結局我慢できなくなり、現地のアジアンフードショップで高級なインスタント味噌汁を買ったりしました(笑)
──CIGRE参加を振り返っていかがですか。
論文の発表はもちろんいい経験になりましたし、他の発表も聴講しましたが、鉄塔の基礎ひとつとってもお国柄といいますか、気候や地質などによって形状が様々あり、興味深かったです。また会議には日本の他の一般送配電事業者やメーカーなども参加していて、そういった方たちとの交流もいい刺激になりました。
CIGREでの発表はハードルが高いと思われがちですが、興味のある方にはぜひ手を挙げて頂きたいです。
CIGRE事務局より
|
【送変電建設センター(送電)藤井 健人 さんからのメッセージ】
国際的な競争力がますます求められる中、電力業界でもグローバルな技術動向の把握や海外との情報交換・連携が重要になっています。CIGREは国際的な技術団体ですが、堅苦しさはなく、比較的自由な雰囲気を持った団体です。また最新技術の収集はもちろん、当社の技術を海外にアピールする場としても意義があると感じています。 現在、当社のCIGRE架空送電線路国内分科会事務局では、2028年パリ大会での論文発表に向けた募集を行っています。日頃の業務で技術開発に取り組まれている方は、送変電建設センターまで、ぜひお気軽にご連絡ください! |
【CIGREについてもっと知りたい方はこちらの記事もどうぞ!】
架空送電線分野の国際会議 「CIGRE2023仙台大会」を開催しました|東北電力社内報 デジタルBRIDGE (tohoku-epco.co.jp)
「CIGRE2023仙台大会の企画・運営」の社長賞受賞を受け、送電若手技術者座談会を実施!|東北電力社内報 デジタルBRIDGE (tohoku-epco.co.jp)







