
【地域の魅力発信シリーズ#9】新潟県燕市「400年の金属加工技術」を深掘り!
新潟県燕市の金属加工産業は、信濃川の氾濫対策として始まった和釘づくりに源流を持ちます。その伝統技術は、資料館での保存・継承にとどまらず、世界的なブランドを生み出すものづくりの現場や、地域に根づく多様な金属加工産業へといまなお進化を続けています。さらに「道の駅 SORAIRO 国上」では、こうした地域の魅力を背景に、地元グルメに加え温泉やキャンプも楽しめる複合的な滞在拠点として、来訪者の交流と回遊を生み出しています。
今回は新潟支店部長兼新潟県央営業所長の横田 和宏さんからのご紹介です!
皆さんからの情報をもとに、地域の魅力をお届けするコーナー。第9回の情報提供者は、新潟支店部長兼新潟県央営業所長(当時)の横田 和宏さん。
<情報提供者のご紹介>
【横田さんからのコメント】
新潟県のほぼ中央に位置する燕市は、金属加工を中心とした全国でも有数のモノづくりの街ですが、今回は選りすぐりの3カ所をご紹介します。
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信濃川が金属産業の源?!
新潟平野のほぼ中央に位置する新潟県燕市。今回は、金属加工産業で有名な「燕市」にスポットを当てて、深掘りしていきます!
現在の燕市は、2006年に燕市、吉田町、分水町の1市2町が合併して誕生しました。この分水町の町名の由来となったのは、人工水路の「大河津分水(おおこうづぶんすい)」です。この水路が大正時代に完成するまで、信濃川は暴れ川と呼ばれるほど頻繁に氾濫していたそうです。洪水が起きれば田畑は流され、年貢を納めることもできませんでした。そのような状況で、困窮する農民たちの副業として推奨されたのが、和釘でした。
江戸時代、地震や火事がたびたび発生していた江戸では、建物の再建や修復に使う釘の需要が高く、農民たちは和釘づくりを通して金属を叩いて加工する技術を身に付けました。燕市の金属加工産業の源には、日本最長の川である信濃川が関わっていたのです。
産業界の熱意で設立された「燕市産業史料館」
燕市の地場産業を知るために最初に訪れたのが、1973年に設立された「燕市産業史料館」です。新潟市美術館(1985年開館)や新潟県立歴史博物館(2000年開館)と比べても、その設立時期の早さは際立っています。

日本の産業博物館の先駆けともいえる、燕市産業史料館
案内してくれた主任学芸員の桑原美花さんは、「地元の産業界の方々の熱意の表れでした。社会が大きく変化するなかで、どのようにしたら生き残ることができるのだろう――。そんな時にこそ、先人たちから学ぶことがあると考え、『よりどころ』として熱望されたのが、この史料館なのだと思います」と話します。

主任学芸員の桑原美花さん。熱意溢れる解説には、取材陣一同、引き込まれました!
本館1階には、燕市の金属加工産業の歴史や技術が、パネルや作品などを通して分かりやすく説明されていました。興味深かったのは、鎚起銅器(ついきどうき)や煙管などの製作、彫金の昔の作業場が、実際の道具とともに復元されていたことです。桑原さんが「すばらしいのは、職人は今でもこれらの道具を使って製作できるほど、技術が受け継がれていることです。職人にとって、道具は財産。その一方で、道具は消耗品でもあるため、作品よりも後世に残すことが難しい。道具をつくる職人が減っているなか、実際の道具が残っていることの意味はとても大きいと思います」と意義を説明してくれました。

復元された鎚起銅器の作業場
本館2階には湯沸や煙管などの作品が展示された「燕の金属工芸 銘品ギャラリー」、別館には燕出身の実業家である丸山清次郎が収集した煙管と矢立のコレクション、新館には金属洋食器製造の歴史がわかる「日本の金属洋食器展示室」など、緻密で精巧な匠の技に歴史を通して触れることができます。
本館2階の工芸銘品ギャラリー。作り手や時代によって、着色方法や“かたち”もさまざまで、その芸術性の高さに驚かされる
金属加工技術の多様さや奥深さを感じたところで、「自分もやってみたい!」と思われた方にぴったりなのが、「体験工房館」です。数ある体験メニューのなかで1番の人気は、純銅タンブラー鎚目入れ体験。純銅のタンブラーを金槌で叩いて鎚目を入れ、自分好みのタンブラーをつくることができます。「使い続けていると、さらに美しさが磨かれていくのが、鎚起銅器の特徴です」と桑原さん。マイタンブラーが育つ楽しみも味わえます。
- 体験工房館
- 鎚目入れ体験:純銅タンブラー鎚目入れ体験
チタンに電流を流して色を付ける「チタン製スプーン酸化発色」や「錫(すず)の小皿づくり」など豊富な金属を使った体験メニューが用意されているので、子どもから大人まで楽しむことができます。また、直接職人に教えてもらえる、期日限定の体験メニュー(要予約)もあるので、ぜひ燕の金属加工技術を体感してみてください!

小さなお子さんも楽しめる、チタン製スプーン酸化発色
金属加工産業の“現場”に触れる「藤次郎オープンファクトリー」
1953年創業の「藤次郎株式会社」は、世界中のシェフや料理人に愛される包丁ブランド「藤次郎」で知られています。2017年に刃物メーカーとしては国内屈指の工場見学施設「藤次郎オープンファクトリー」をオープンさせると、2019年には見学コースを拡張し、体験コーナーも増設しました。伝統継承と技術革新の両立を目指す藤田社長にお話を伺いました。

藤次郎株式会社の藤田進社長
―どのようなきっかけで創業されたのでしょうか。
当社のはじまりは農機具メーカーでした。しかし、農業は秋の稲刈りが終わると、翌年春まで仕事がありません。そこで、小さなフルーツナイフをつくることになりました。そのうち、フルーツナイフづくりの方が忙しくなってしまい、今は100%近くが包丁の製造です。当社は刃物メーカーとしては後発で、当時からステンレスを使っていました。

―商工会議所の副会頭も務めているなかで、燕の強みをどのように捉えていますか。
ステンレスやチタンなどのさまざまな金属の加工が、産地内のネットワークのなかですべて整うほど、加工技術が進んでいることです。商工会議所のつながりのなかで、例えば「包丁研磨の人手が足りない」と相談すれば、研磨の職人を紹介してもらえるなど、お互いに助け合うことができています。
―「藤次郎」のなかで、燕らしい商品を教えてください。
オールステンレスの「TOJIRO PROシリーズ」でしょうか。燕はスプーンやフォークなどの洋食器が有名で、「TOJIRO PRO」のハンドルにはナイフの技術を生かしています。刀身は高純度の鉄鉱石をステンレス鋼によって挟み込んだ割込包丁で、耐久性と切れ味を兼ね備えています。丸洗いできて衛生面にも優れている、藤次郎のスタンダードシリーズですね。
- 三徳で一番人気のTOJIRO PRO
- 直営店限定 TOJIRO PRO 2本セット
―「藤次郎オープンファクトリー」について教えてください。見学できる工場が「ナイフアトリエ」と「ナイフファクトリー」に分かれていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
当社最大の特徴は、量産品とハンドメイド品の両方に対応できることだと考えています。その現場をご覧いただけるように整備し、藤次郎刃物の量産品を「ナイフファクトリー」、ハンドメイドの包丁を「ナイフアトリエ」で製造しています。
量産品は燕地域特有のプレス技術による「抜き刃物※1」の製法、ハンドメイド品は刀鍛冶伝統の鍛造による「打ち刃物※2」の製法を用いているのですが、「打ち刃物」は20年ほど前に当社の若手社員がお隣の三条市の刃物メーカーさんから学んできたのです。
※1:材料となる板状の薄い金属板を金型によって打ち抜き成型する「プレス加工」で作られる刃物
※2:加熱した金属をハンマーなどで叩いて成形する「鍛造」の技術で作られる刃物
―意図して、ハンドメイドの包丁を始められたのですね。
お隣の三条市には、昔ながらの鍛冶屋をルーツに持ち、鉄を鍛えて包丁をつくるメーカーがたくさんありました。当社の製品は最初からステンレス包丁でしたが、包丁メーカーのルーツとなるのは、鍛冶の技術です。包丁づくりの原点を学ぶことは、これからの当社に必要だと思いました。
―あれほど間近でものづくりの現場を見ることができると、「自分も」と思う若い人たちも増えそうですね。
それが、「オープンファクトリー」の最大のメリットだと思います。実際の製造工程を見て「自分も」と思われる方も多く、予約制で受け付けているフルーツナイフをつくる体験の人気も高まっています。体験をしてみて、さらに本当につくってみたいと思われた方は、ぜひ社員に応募していただきたいですね!
―2023年には東京、2024年には大阪に「ナイフギャラリー」をオープンされました。
ナイフギャラリーのお客さまの約9割は海外のお客さまです。映画「ラストサムライ」が大ヒットした影響で、海外で日本の刃物が注目されたこともあり、私が入社したころは98%の売上が国内でしたが、現在は海外が40%を占めています。ありがたいことですが、包丁はどうしてもメンテナンスが必要です。国内外のお客さまに当社の包丁を長く切れ味良く使っていただくためにも、商品と同時にアフターサービスの大切さもお伝えできる拠点を設けたいと思っていました。
―今後の展望について教えてください。
日本刀と同じように、包丁も銘によってファンの方々がいらっしゃって、「これでいい」ということはありません。包丁自体の切れ味や耐久性、デザインなどは、随時、追求していかなければいけない部分ですし、それが面白い部分でもありますね。
コーポレートメッセージに「切れ味のもう一歩さきへ」と掲げているように、アフターメンテナンスもそうです、日本や世界の食文化を「道具」の面から支えていきたいと思っています。
燕の自然と遊びつくしたい!「道の駅 SORAIRO 国上」
金属加工技術について学んだあとは、「全国1,231駅を制覇したプロが選んだ!“道の駅大賞”」で全国第3位に選ばれた「道の駅 SORAIRO 国上」で、“燕”の魅力を駅長の林 美樹さんに伺ってみました。
アウトドア用品や金属洋食器、地元の朝採り野菜や加工品など“Made in TSUBAME”にこだわった幅広い品揃えで、見ているだけでも楽しくなります。

道の駅 SORAIRO 国上 駅長 林 美樹さん
道の駅のコンセプトは「自然と遊ぶ」。デイキャンプやキャンプフィールド、ドッグランなど、アウトドア気分が満喫できます。林駅長のおすすめは「手ぶらBBQ」。
「すべてが揃っていて、テントの下に座るだけ!燕市に本社のあるUNIFLAMEの食器を使った“そとごはん”を楽しめます。花火も楽しめるので、暑い夏は夜のBBQが気持ちいいですよ」

8月からはビアガーデンプラン登場する「手ぶらBBQ」
燕のグルメを味わえる食堂の人気第1位は、新潟の5大ラーメンのひとつで、文化庁の「100年フード」にも認定されている「燕背脂ラーメン」。そのほか、燕市食育推進プロジェクトの給食メニュー「トマ味噌カレー豚丼」も味わえます。
「売り場には、今年から常温で持ち運びできる背脂ラーメンが登場しました。地元の子どもたちが栄養士さんと考えたメニュー『トマ味噌カレー豚丼』のレトルトもあるので、ご自宅でも燕グルメを楽しめます!」と林駅長からご紹介いただきました。
- 食堂では人気店「ラーメン潤」の燕背脂ラーメンが食べられる
- 燕市の子どもたちの意見を取り入れながら、開発された「トマ味噌カレー豚丼」
敷地内には天然温泉が楽しめる源泉かけ流しの足湯や温泉施設「てまりの湯」もあり、滞在型の道の駅として高く評価されていることも納得!源泉が冷泉なので、夏の間は“ひんやり足湯”として、それ以外の季節は加熱して“あったか足湯”を楽しめるそうです。
ほんのり硫黄の香りがする「単純硫黄冷鉱泉」の天然温泉
足湯のそばにはテラスも整備されていて、ご当地フードを味わいながら、足湯に入ったりテラスでくつろいだり……。燕市産のブランド米「飛燕舞」を使用し、店内の精米機で“精米したて”、“炊きたて”、“握りたて”で提供しているおにぎりや、新潟のソウルフード「氷菓もも太郎」のシロップを使用したソフトクリーム、ペレット窯で焼き上げる本格ピザも人気があるそうです。
- 新潟といえば、お米。おにぎりの具も種類が豊富で人気がある
- 鮮やかなピンク色が映える「もも太郎」ソフトクリーム(写真右)
ものづくりの集積地である新潟県燕市。その魅力にどっぷり浸かる旅はいかがでしょう?
関連リンク
■燕市産業史料館(ホームページ)
住 所:新潟県燕市大曲4330-1
開館時間:9時~4時30分
施設内容:
〈体験工房館〉常設体験メニューと期日限定の体験メニューがあります。
※期日限定の体験メニューは事前予約制(予約メニューはこちら)
〈ミュージアムショップ〉市内の職人が製作した鎚起銅器製品や体験工房館で販売しているお土産品のほか、館内で開催する企画展の関連商品を展示・販売しています。
■藤次郎オープンファクトリー(ホームページ)

住 所:新潟県燕市吉田東栄町9番5号
工場見学:10時~17時
ショップ:10時~17時30分
備 考:土日は工場見学の一部・ナイフギャラリーのみ営業。
営業日等は最新の情報をご確認ください。
■道の駅 SORAIRO 国上(ホームページ)
住 所:新潟県燕市国上5866−1
備 考:BBQ&デイキャンプは予約制です。
< 地域の魅力に関する情報を大募集!>
今回の「地域の魅力発信シリーズ」はいかがでしたか?経営理念「地域社会の共栄」やスローガン「より、そう、ちから。」を掲げる東北電力グループ。皆さんにも思い出の場所、大事にしたい地域や文化があるのではないでしょうか。BRIDGEでは私たちの事業基盤である東北・新潟各地域の個性あふれる魅力の発信を強化していきたいと考えています。
総務・地域共創部門では、皆さまからの投稿・情報提供をお待ちしています。「我が地域の魅力を紹介したい!」という方は、おすすめスポット(観光・グルメ・伝統文化など)とエピソードを添えて、下記担当者へご連絡ください。執筆した記事を寄稿いただくことでも良いですし、必要に応じてBRIDGE取材班が現地取材に同行することも可能です!地域の魅力発信をきっかけに地域の方々とのコミュニケーションを深めてみませんか!
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