
インタビュー内容
事業環境がこれまでにないスピードで大きく変化する中、それに対応すべく、あらゆる面で様々な努力を積み重ねてきました。現在、世の中のさまざまな物価が上昇し、お客さまの家計や地域企業の経営への影響も大きく、かつ収束が見えない状況下で、電気料金の値上げをお願いすることについて非常に心苦しく思っています。お客さまや地域への影響があるものの、事業継続の面、電力の安定供給の面など、いろいろな角度から熟考を重ねた上での苦渋の決断でした。

既に認識していると思いますが、今年度の収支は2,000億円の連結経常赤字、昨年度まで黒字だった規制部門の最終損益は550億円の赤字の見通しです。
逆ザヤの継続・拡大による収支悪化で会社の資金が流出し、財務基盤が大きく毀損しています。このままでは安定的な燃料調達や、電力設備の更新・修繕などへの投資を十分に行えず、電力の安定供給に支障をきたしかねません。また、将来に向けたスマ社実現事業などへの投資も出来なくなるおそれがあります。流出した資金を金融機関等からの資金調達で賄っているため、借金である有利子負債残高が増加し、「いざという時の貯金」である自己資本が低下した、危機的な状況にあります。
今回の値上げは、ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格や卸電力市場価格の高騰、円安などの一時的な要因もありますが、抜本的な要因である脱炭素に向けた再生可能エネルギーの普及拡大や電力システム改革における市場化の流れなど、電力需給構造が変化しているという点をしっかり理解する必要があります。
具体的には、市場での電力取引が増加する中で、市場価格が高騰し調達コストが増加していることや、販売電力量が減少する一方で、安定供給に必要な設備を維持するためのコスト負担が重くなること、再エネの拡大に対応するため、燃料調達も含めた火力電源の柔軟性・弾力性確保もこれまで以上に必要となることなどです。
規制料金の見直し発表時の記者会見の様子。経営効率化に関する内容など、報道機関からは多くの質問が出された
現在の会社の置かれた状況は、当社の歴史を振り返ってみても非常に厳しく、グループ一丸となって、ありとあらゆる策をこうじて乗り越えていかなければなりません。
今回の規制料金の値上げ申請にあたり、尽力された関係部門の皆さんに感謝申し上げます。そして、高圧以上の電気料金単価見直しと、低圧自由料金プランの燃料費調整制度における上限設定の廃止の対応をはじめ、お客さま対応されている販売部門の皆さんには頭が下がる思いです。
私自身、お客さまへの影響の大きさを実感するとともに、様々な機会を通じて誠実に対話を重ねていくことが非常に重要であると認識しているところです。
今回の申請内容は、約3割という値上げ幅の大きさから、販売部門ではない皆さんも地域の方々やお知り合いから聞かれる機会があるのではないでしょうか。また、今回は自由化料金の中で、オール電化住宅のお客さま向けの料金プランの見直しも行います。対象のお客さまは、燃料費調整制度における上限設定の廃止とあわせて大きな負担をお願いすることになりますので、こうしたことも踏まえた丁寧な説明が必要です。
今回の料金見直しに至った背景について、最大限織り込んでいる効率化の取り組みを含め、販売部門にとどまらず、全社をあげて繰り返し真摯に説明を尽くすとともに、お客さまのご負担の軽減につながる省エネや節電などに関するお手伝いを積極的に行っていく必要があると思います。
皆さんがお客さまからどのようなことを訴えかけられ、対応されているか、毎週の報告を確認しています。7月の公表時から、法人営業部・法人カスタマーセンター・各支店・営業所の皆さんの頑張りにより、ご理解いただくお客さまが着実に増えており、その対応について心強く思っています。
関係する皆さんには、引き続き厳しい対応をお願いすることになりますが、会社の危機を乗り越えるためにはどうしても必要な対応です。粘り強く取り組み、お客さまのご理解を得ていただくようお願いします。
当社は2021年度、2022年度と2期連続の赤字であり、3期連続の赤字は何としても回避しなければなりません。今回の電気料金の値上げにより、確かに収支は改善する見込みですが、今回の値上げは最大限の経営効率化を前提にしており、織り込んだ効率化策を着実に実施していく必要があります。
今回、料金原価には、着手済みの取り組みとして▲848億円、今後の取り組みとして▲311億円を織り込んでいます。前回改定時に十分に効率化を実施し、”しぼりきったぞうきん”のような状態のなか、さらなる効率化を織り込むことができたのは、従来の考え方に囚われない新たな発想で、デジタル技術の活用などを通じ、業務の見直し・効率化・高度化に取り組んでいただいたおかげだと評価しています。
これで終わりではなく、危機感を持って目の前の業務のカイゼンに取り組み、効率化の深掘に取り組んでいきたいと考えています。
また、電気事業の収益だけでは限りがあることから、よりそうnextに掲げるスマート社会実現事業(電気+サービス、次世代エネルギー、新領域など)の早期収益化にも着実に取り組んでいくことが重要です。
徹底した効率化を前提に、料金値上げと世界最高水準の熱効率を誇る上越火力1号の安定運転などにより、来年度は何としても黒字化し、その上で、女川2号の再稼働を予定どおり進め、更なる収益の拡大につなげていきたいと思います。
足元は厳しいですが、これまで申し上げた施策を確実に成し遂げ、V字回復を図っていきます。

並行して、将来の成長に向けた取り組みについても、スピード感を持って注力していきます。
収益の柱である電力供給事業については、「電力の価格は、市場によって決まる」という、電力市場を起点とした事業構造に変わってきているものの、当社の使命として、低廉な電気を長くご愛顧いただくことは、今後も変わるものではありません。そのために、利益の創出・最大化に取り組んでいくことが必要です。
再エネ開発についても、手綱を緩めず、適地である当社エリアを中心に200万kWの開発に向けチャレンジしていきます。
スマート社会実現事業については、もう1つの柱に育てていくために、お客さま起点で開発した商品サービスを電気と一体的に販売するなどとして、収益化を着実に進めていかなければなりません。
よりそうnextを実現し、グループの総合力で未来を拓いていくことが必要になります。
改めて、従業員の皆さんには、一人ひとりの持ち場・立場に応じた「より、そう、ちから。」の実践を期待しています。東北電力グループスローガン「より、そう、ちから。」はお客さまに“より沿う”、地域に“寄り添う”という2つの「よりそう」をお約束するものです。
お客さま・地域の皆さまに、これまで以上の付加価値をお届けするためにどのように「よりそう」ことができるのかを、一人ひとりが置かれた状況を踏まえ、主体的に考え、判断することが大切です。
電気料金の値上げをお願いしている今だからこそ、如何にすればお客さま・地域によりそうことができるのかを、販売部門にとどまらず、すべての従業員が考え、実践してほしいです。
それにより築かれるお客さま・地域との絆が、苦しい時期を乗り越え、成長していく上での大きな糧になると確信しています。
また、皆さんには、自信と誇りを持ち、前を向いて取り組んでほしいと思います。国際情勢や天災などを起因とする厳しい事業環境に無力感・やるせなさを感じることがあるかもしれませんが、東北電力グループの主力製品である電気は、今の暮らしや産業を支えるだけでなく、未来を作り出す上でも不可欠なものです。改めて、我々の商品・サービスの重要性を認識し、電気事業・関連事業に携わっていることに自信と誇りを持ってほしいのです。これが、様々な課題を乗り越えるための強い原動力となります。
この危機を乗り越えれば、東北電力グループは今よりも強い企業に進化できると考えています。私が先頭に立ち、尽力していきますので、皆さんの力を結集させて共に頑張っていきましょう。