
原子力発電所の再稼働に向けて大きな進歩があったこの1年
── 今年4月に原子力本部長に就任されてからの所感や今後の抱負は
今年11月に女川原子力発電所2号機の安全対策工事完了を予定しており、来年2月には再稼働を控えていますので、責任の重大さを感じているところです。
ロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー価格の高騰や円安の影響に加え、2度の福島県沖地震の影響などにより、当社グループの決算は2年連続の赤字となっています。
原子力発電は「エネルギーの安定供給」「経済効率」「CO2排出抑制などの環境適合」の観点から、日本では重要な電源として期待されています。女川2号機は沸騰水型軽水炉(以下、BWR)の再稼働一番手として、計画通りしっかりやりきることが重要だと考えています。

──「よりそうnext」にも掲げられている原子力発電所の再稼働に向けて、2022年度の取り組み状況は
昨年度を振り返ると、再稼働に向けて大きな進歩があったと感じています。
女川2号機は、今年2月に原子力規制委員会より、重大事故等発生時の体制や手順の整備など、新たに運用面で対応すべき事項を反映した「保安規定変更認可」をいただいたことで、2013年12月に申請した新規制基準に係る「原子炉設置変更許可申請」「工事計画認可申請」「保安規定変更認可申請」のいずれも許認可をいただきました。
現在行っている圧力抑制室※の耐震補強工事はこれまでに経験のない非常に難しい工事であったことから、直径約10mの圧力抑制室の実物大模型を事前に製作し、工事工法や工程を検討したほか、狭隘な内部で補強部材を溶接するための作業員の習熟訓練なども行いました。こうした入念な準備により現場での作業もスムーズに運び、計画通りに工事が進んでいることが大きな成果です。工事に携わった作業員や当社社員の皆さんに改めて感謝申し上げます。
残念なことに、今年1月に女川原子力発電所構内で交通事故による死亡災害が発生しました。二度とこのような悲しいことが起こらないように、再発防止にしっかり取り組むとともに、原子力発電所の安全だけでなく防災を含めた人の安全を確保することにも注力していきます。
東通1号機については、現在、原子力規制委員会による地震・津波の審査が行われており、基準地震動や基準津波の策定に向けて、地震動および津波の各項目に関して並行して審査をいただいている状況であり、審査は着実に進んでいます。
当社としては基準地震動や基準津波の策定について今年度の早い段階で説明したいと考えており、引き続き、審査に全力で対応してまいりたいと考えています。

※圧力抑制室
原子炉格納容器の一部で、大量の水を常時貯蔵している円環形(ドーナツ状)の構造物。格納容器内の配管が破断し、蒸気が発生して圧力が上昇した場合などに、蒸気を圧力抑制室に導き冷却することで、原子炉格納容器の圧力を下げる。また、原子炉を冷却する機能が失われた場合に、非常用の冷却水を供給する役割も果たす。
地域の皆さまに安心していただくため丁寧な説明を
──女川2号機の再稼働に向けて、今後注力していく取り組みは
まずは、作業における安全確保を最優先に、現在進めている安全対策工事をやり遂げ、来年2月の再稼働に繋げていくことが一番だと思っています。
社員が自ら行う使用前事業者検査も進められていますが、女川原子力発電所の人員だけでは足りない部分は、本店や東通原子力発電所からも応援の人員を派遣するなど、原子力部門の総力を挙げて対応しています。
また、運転停止から10年以上が経過していますので、社員の技術力向上も大切だと考えています。
女川では技術系社員の約4割が運転を経験していないことから、運転技術や保全技術を向上させるためにさまざな取り組みを行っています。
中央制御室を模擬したシミュレータによる運転員の訓練や、ポンプ・弁の分解点検、操作など保修作業員の訓練を重ねているほか、安全対策として新たに配備した設備の操作などに関する教育訓練も行うことで、技術力の向上を図っています。さらに、運転を経験している先輩社員から技能やノウハウを伝える活動も行っているところです。
運転員には、運転中のプラントにおいて設備や機器の状態を体感させることが有効と考えており、当社の火力発電所や国内の原子力発電所(PWR)のほか、当社が提携する米国サザン・ニュークリア社のハッチ原子力発電所(BWR)にも運転員を派遣しました。運転員はかなり刺激を受けたと話してくれました。
常々申し上げていることですが、発電所や本店といった組織の垣根を取り払い、意見は交わしながらも仲良く協力して仕事をすることが大事だと思っています。

──地元の方々から寄せられている声、再稼働に向けた理解活動の方向性は
住民の方の意見としては早く再稼働してほしいという方だけでなく、再稼働に不安を持っている方もいらっしゃると思います。特に不安を持っている方には、丁寧に説明していかなければならないと思っています。
新たな安全対策を講じたことで、東京電力福島第一原子力発電所で発生した事故と同様の事象が起きる確率は非常に低くなっています。万が一の事故に備え、女川2号機に設置したフィルタ付格納容器ベント装置※の効果としては、福島第一原子力発電所の事故と比較した場合、外部へ放出される放射性物質の量は約7000分の1と大幅に抑制されます。
このような安全対策の内容を地域の方に丁寧に伝えることも我々の責務だと考えており、対話活動やホームページ、各種媒体なども活用しながら、あらゆる機会を通じて、地域の皆さまに安心していただけるような分かりやすい情報発信に取り組んでいきたいと思います。
※フィルタ付格納容器ベント装置
原子炉圧力容器や原子炉格納容器の損傷防止や放射性物質の放出による環境影響を抑えるための装置。装置の機能や効果を解説した動画を「YouTube 東北電力チャンネル」で公開中(以下、YouTube動画にリンク)。
https://www.youtube.com/watch?v=k_A-xD11fO4
当社グループ一致団結して再稼働を果たす
──グループ従業員へのメッセージを
一定の前提を置いた試算では、女川2号機の再稼働により、火力発電の燃料費が減少するなど、年間400億円程度の収支の改善効果があると見込んでおり、そのような意味でも、1日でも早く再稼働することにより会社の利益向上にも貢献したいと思っています。
東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電に対して後ろ向きな発言やバッシングを受けることもありましたが、ウクライナ危機を契機に原子力発電所の重要性は高まってきていると感じています。
特に原子力発電所で働く従業員の皆さんには、我々はすごく期待されているということ、日本のエネルギーを支える仕事だという自信と誇りを持って、業務に臨んでいただきたいと思っています。
最後に、再稼働にあたっては、グループ従業員の皆さんにもぜひバックアップをいただきたいと考えており、当社グループが一致団結し、仲良く協力し合いながら、再稼働を果たしたいと思いますので、応援をよろしくお願いします。
※本インタビューは2023年6月に実施しました


