
メディア対応の極意 [3]冒頭発言は「正確」に
企業が、新聞やテレビなどのマスメディアを介して情報を発信するのは、より多くのステークホルダーに活動への理解を深めてもらうためです。ステークホルダーへの情報の媒介役を担う記者とのコミュニケーションをどのように進めていけば良いのか。メディア対応の在り方(マスメディア編)について、ジャーナリストの大平宗氏に解説いただきます。(3/5)
【寄稿者】大平 宗 氏
ジャーナリスト。経済・エネルギー、企業・団体などの危機管理(メディア戦略)をフィールドに活動。東北電力「原子力の安全と信頼に関する顧問会議」委員、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)アドバイザー、復興庁参与、厚生労働省参与、高度技術社会推進協会理事などを歴任。ペンネームは河原雄三。
[3]冒頭発言は「正確」に
ここからは記者会見本番です。冒頭、発表文など用意した文章を読み上げますが、饒舌に語ろうと無理に暗記する必要はありません。ここでは、ステークホルダーに向けて情報を正確に発信することが最優先されます。一字一句間違えないよう正確に読み上げることに専念、強調したい箇所については、記者席やTVカメラの方に視線を向け発言します。
冒頭発言を終えると、次は報道陣の質問に答えていく質疑応答です。矢継ぎ早の質問に急かされ、余裕なく答弁しているうちに目の前の記者とだけ対話している気持ちになりがちですが、情報を伝えたい相手はあくまでも記者の背後にいる読者や視聴者。企業にとってのステークホルダーです。
ニュース記事に加工された情報が、ステークホルダーに広く、正確に伝わるようにすることが記者会見の目的であり、そのためには、媒介役を担う記者が発表の狙いや内容をきちんと理解する必要があります。

■質疑応答は明快に
答弁の仕方にも工夫が必要です。ふだんの会話のように、物事が起こった順に話を進め、最後に結論へと辿り着く〝起承転結型〟は、結論を早く知りたい聞き手(記者)がもどかしさを感じ、結論への疑念など先入観を持たれてしまいかねません。質疑応答では、最初に結論(ポイント)を示してから詳細な説明を加えていくニュース原稿のように簡潔で明快な答弁が理想です。
答弁で気をつけたいことを幾つか挙げておきます。抽象的な表現や中途半端な言い方は、誤解を招きかねないので要注意です。推測や仮定に基づく発言も、記者によっては断定的な見解と受け止めかねません。事態が流動的で断定したことが言えない時には、「現時点では」「これまでの調べでは」などと前置きして発言することで、先走った報道の歯止めになります。
最も気をつけたいのが失言です。「綸言汗の如し」という格言がありますが、記者会見やインタビューでは、発言の過ちに気づいたら躊躇なく改めることが最適解です。放置すれば、一度だけでなく繰り返し報道されるリスクがありますが、会見中に訂正・撤回することで傷口を最小限にとどめることができます。
本人が気づかない時は、サポート役として控える同席者が、メモを差し入れるなど側面支援で対応する。同席者も緊張感をもって記者会見に臨む必要があります。
