
熱中症を「起こさない職場」へ─東北電力 福島発電技術センター
福島県の福島市にある東北電力福島発電技術センター。社員約40名が所属し、福島県内にある水力発電所やダムの維持や管理、修繕に関わる業務を行っています。
水力発電所は人里離れた山奥に位置することが多く、現地確認や工事の立ち合いが欠かせません。特に夏季は厳しい暑さの中での作業となるため、熱中症リスクへの十分な対策を講じながら、安全を最優先に業務を遂行しています。
事業所で使用している熱中症対策グッズとして、「ファン付き作業服」や、体温や心拍数などの生体情報を測定し、熱中症の兆候を早期に検知する「ウェアラブルデバイス」などを見せてもらいました。万が一熱中症の疑いがあった際に使用するグッズもコンパクトなポーチにまとめられ、中身は充実。その他、バッテリーで駆動する移動式冷蔵庫などもありました。
- フルハーネス(墜落制止用器具)に対応したファン付き作業服
- 瞬間冷却タイプの保冷剤や冷却スプレー、経口補水液などをまとめたセット

移動式冷蔵庫は、飲み物を冷えたまま保管できるため、社員から人気だそう
福島発電技術センターで安全管理を担当する小林 誠 安全主査に、事業所の取り組みの中で特に重視している点を伺うと、「ひと言でいえば、熱中症対策を本人任せにしない『職場づくり』です」と話します。日頃から仲間の様子に気を配り、少しでも異変を感じた際にはためらわずに声を掛け、必要に応じて作業を中断する職場づくりこそが重要だと語りました。
「熱中症は、正しい知識と職場全体での行動によって、発症や重症化のリスクを大きく低減できる災害だと考えています。だからこそ、『違和感を見逃さない感度』と『迷わず行動する勇気』を備えた現場を目指しています。」
暑さが本格化する時期を前に、小林さんは熱中症予防に向けた抱負を力強く語りました。
- 熱中症アラート情報は、事業所の入り口付近に掲示している
- 福島発電技術センター 小林 誠 安全主査
暑さとは「うまく付き合う」─東北電力ネットワーク 大曲電力センター
秋田県の大仙市にある東北電力ネットワーク大曲電力センター。社員約60名が所属し、大仙市を中心とした地域にある変電設備や配電線の維持管理、発生した停電の解消などを行っています。
電力センターは地域における電気の安定供給を守る送配電事業の拠点としての役割を担っており、現場作業が多いため、気温が高くなる時期は常に熱中症リスクが付きまといます。
さらに電力センターは、台風や大雪、地震といった自然災害が発生した際、災害復旧の最前線となることから、常に万全の体制を維持するためにも、社員の安全管理はとりわけ重要です。
大曲電力センターでは、暑さが本格化する前から、社員一人ひとりが体調に合わせて暑さに身体を慣らす「暑熱順化」を呼び掛けています。ウォーキングや軽い運動、入浴など、日常生活で無理なく取り組める方法を紹介し、希望者向けのスポーツ施設利用支援なども行っています。
もちろん、暑熱順化だけに頼るのではなく、日々の体調確認やWBGTの把握、休憩時間の確保などを組み合わせて対策しています。
「Let’s Try!暑熱順化♪」キャンペーンのポスター。いずれも社員の写真を使い、目を引く内容に
大曲電力センターで安全管理を担当している佐藤 尚 安全主査に、特に熱中症の発生を警戒している時期について伺うと、「工事の休止や連続休暇によって暑熱順化がリセットされる『お盆明け』です」とのこと。大曲電力センターでは、「プレクーリング※」を取り入れた活動として、この時期に現場を訪問してアイスキャンディーの差し入れを行う「ガリッとやるべ!パトロール」を予定しているそうです。
このパトロールは、東北電力ネットワークだけでなく、東北電力グループの企業や協力会社の作業員の方々も対象としており、熱中症対策だけでなく、現場におけるコミュニケーションの活性化にも役立ちそうです。
※作業前や休憩時に体をあらかじめ冷やすことで、その後の深部体温の上昇を抑えるという考え方
- 夏季に所内に掲示するポスター。社員が熱中症対策グッズやプレクーリングを紹介している
- 大曲電力センター 佐藤 尚 安全主査
佐藤さんに、近年の熱中症対策におけるポイントについて伺いました。
「現場の作業員との対話では、『昔とは暑さのレベルが違う』という声を頻繁に耳にします。大事なのは、暑さに対して無理に立ち向かうのではなく、適切な休憩時間の確保やこまめな作業中断など、『うまく付き合う』こと。そのためには、現場での対策に加え、風通しの良い職場環境や、余裕を持った工事日程の設定など『無理をしない、させない環境づくり』が重要だと考えています。」
屋内作業の熱中症対策─東北発電工業 佐渡事業所
熱中症の危険は屋外だけではありません。佐渡島にある東北電力ネットワークの両津火力発電所と相川火力発電所は、ディーゼルエンジンから発生する熱や、燃料を加温するための蒸気の影響などにより、機関室は湿度が高く、室温は時に40℃を超えます。
この過酷な環境の中、発電設備のメンテナンス作業を行っているのが東北発電工業です。同社佐渡事業所で安全管理を担当している小山 譲司 副課長に、室温への対策について伺いました。
「当社が作業をする場所は機関室の他、部品整備用の小部屋などがあります。スポットクーラーや送風機は以前から活用していますが、それでも作業環境は厳しく、昨年の酷暑では30分の作業に30分の休憩がワンセットというような状態でした。そこで今年度は、作業環境の大幅な向上を図ろうと、小部屋には大型クーラーを設置して、部屋ごと冷却しています。また、部屋全体を冷却するのが難しい機関室ではクーラー付きの仮設テントハウスを設置して、休憩中に体温をなるべく下げるようにしています」
- シャッターの下から出ているのが大型クーラーの吹き出し口。作業員からも好評だという
- 作業場を外から見たところ。大きな室外機が出ている

機関室内に設けられたクーラー付きの仮設テントハウス
熱中症対策では体調異常の予兆を見逃さないための工夫も重要ですが、ここでもディーゼル発電機の作業環境が立ちはだかります。両津火力発電所5~8号機では運転中のエンジンの近くで作業を行うことから、作業者は常に大きな騒音にさらされることになり、時には測定器のブザーやアラーム音が聞き取れなくなることも。「そこで今年度から、熱中症の予兆を検知するウェアラブルデバイスを導入しました。装着者の体調異常を検知すると、本人だけでなく同じグループのメンバーや現場責任者に通知されるだけでなく、SMSやメールに加え、電話でも事務所にアラートが届く仕組みです」と小山さんが紹介してくれました。
- 佐渡事業所が導入したウェアラブルデバイス
- SMSに届いたアラート
最後に小山さんは「高い室温・湿度や騒音、油のにおいなど、ディーゼル発電所の作業環境は独特の厳しさがあります。佐渡事業所では今後も試行錯誤を重ねながら、熱中症防止に取り組んでいきます」と語り、継続的な環境改善の必要性を強調しました。
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佐渡事業所 小山 譲司 副課長
記者の視点から
暑い日の現場で、何より大切なのは、働く一人ひとりの命と健康です。
発電所や送配電設備を守り、地域の皆さまに電気を安定してお届けする。その使命を果たし続けるためには、現場で働く社員の安全が大前提です。
今回取材した3事業所に共通していたのは、熱中症対策を一人ひとりの注意だけに任せないという考え方でした。
装備や飲み物などを用意するだけでなく、仲間の様子に目を配ること。異変を感じたら声を掛けること。暑さの状況に応じて作業を中断し、予定そのものを見直すこと。そして、若手社員や協力会社の作業員を含め、誰もが「無理をしない」環境を作ること。
仲間を守ることが、地域の暮らしを守ることにつながります。
設備と仕組み、そして職場風土の両面から、安全に働ける環境づくりを進めていきましょう!(佐々木達彦)
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