「よりそうnext+PLUS」解説&関係者インタビュー
~②財務基盤編~

 4月30日に社外公表された今後の経営展開「よりそうnext+PLUS」。2030年代の「ありたい姿」の実現に向けた「進め方」が具体的に示されました。方針①「事業展開」と方針②「経営基盤」を深掘りした前回の「全体像・事業展開編」に続き、今回は「財務基盤編」。これだけは押さえておくべき!というポイントや、私たちが意識すべきこと、その他気になる点を深掘り解説します。

方針③「財務基盤」~「ありたい姿」実現に向けて新たな財務目標を設定~

 「よりそうnext+PLUS」では東北電力グループが定量的に目指す姿として、2026年度と2030年度をターゲットとした新たな財務目標を設定しました。【図1】

 

図1:新たな財務目標

 

 今回、新たな財務目標の設定に至った背景は以下のとおりです。

 2020年の「よりそうnext」策定後、2度の福島県沖地震やウクライナ危機に伴う燃料価格の高騰は当社グループの収支・財務に深刻な打撃を与えました。その結果、当社グループは2021年度、2022年度と2年連続で大幅な赤字となり、財務基盤も大きく毀損しました。

 その後、電気料金の見直しや経営効率化にグループ一丸となって取り組んだことにより、2023年度は黒字回復を果たし、2024年度も一定の利益を確保できる見通しとなりました。しかし、未だ財務基盤は脆弱であり、地震などの大規模災害や国際情勢の変化による燃料価格等の急変などの事業リスクに対して十分な備えがあるとは言えません。

 そのため、まずは利益を積み上げ、事業リスクが顕在化しても耐えられるよう、財務基盤の早期回復を図っていく必要があります。

 また「よりそうnext」策定以降、カーボンニュートラル(CN)潮流の加速やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展など、当社の事業展開に大きな影響を及ぼす事業環境の変化も生じています。当社グループはこうした変化に対応するため、引き続き多くの投資を行う必要があります。そこで、こうした投資を確実に行えるよう、しっかりとキャッシュを創出して、中長期的には「利益・投資・成長の好循環」を実現していかなければなりません。【図2】

 

図2:当社の財務状況

 

 今回の新たな財務目標はこうした財務状況を踏まえて設定されたものです。そしてこの目標達成に向け、電気・エネルギーを中心に据えた5つの領域、11の事業区分など、前回の「全体像・事業展開編」でご紹介したような事業展開の方向性が示されています。

 

気になるところを直撃!関係者インタビュー

 財務目標についても、気になるポイントがたくさん・・・。グループ戦略部門(戦略企画ユニット)の下村主任に、「素朴な疑問」にお答えいただきました。

 

 

──財務目標について、「自己資本比率」「経常利益」「ROIC」の3つの指標を新たに掲げることとしたのはどのような背景でしょうか。

 2020年の「よりそうnext」策定時は、キャッシュ創出力の向上にフォーカスし「連結キャッシュ利益」を目標指標と設定しました。これは、東日本大震災以降徐々に自己資本比率が回復する中、上越1号機建設工事や女川2号機安全対策工事の本格化、第二連系線などに代表されるNW系統工事など、電気事業での投資が多く予定されていたことに加え、更に成長事業への投資の増加が見込まれていたことが背景にあります。

 その後、福島県沖地震やウクライナ危機などの影響により当社の財務は急激に悪化し、2022年度末の連結自己資本比率が10.5%まで低下するなど、自然災害等の事業リスクへの耐性が低下したことから、今回の「よりそうnext+PLUS」策定では財務基盤の早期回復を喫緊の財務課題としました。

 また先を見据えると、事業環境の変化に対応しながらスマート社会を実現するためには、今後も引き続き投資が多く必要であり、資産の増加傾向が続くという状況も見えてきました。

 こうした財務課題の変化に対応し、そして将来の成長につなげていくため、「よりそうnext+PLUS」では新たな財務目標として「自己資本比率」「経常利益」「ROIC」という3つの指標を設定しました。

 

──連結自己資本比率の目標について、「2026年度に20%程度、2030年度に25%以上」という水準に設定したのは、どのような背景があるのでしょうか。

 まず2026年度の20%については、事業リスクに備えるという観点から、東日本大震災やウクライナ危機の際に、連結自己資本比率がおよそ10%も低下したことを踏まえて、仮に今後大規模な自然災害など不測の事態があっても事業運営に最低限必要と言われる自己資本比率10%を下回らないよう、目標として設定しました。2026年度までということで、非常に短期間で取り組まなければならずハードルが高いようにも感じるかもしれませんが、近年自然災害等が増加していることもあり、この水準はなるべく早く達成しなければいけないと思っています。

 

 

 また、2030年度の25%以上については、2026年度の20%から更なる上積みを図り事業リスクへの耐性を高めながら、当社として適切な自己資本比率を目指すという観点で目標を設定しました。「適切な」自己資本比率というと不思議な感じがするかもしれませんが、自己資本比率は高ければ高いほど良い(無借金経営が良い)というものでは必ずしもありません。比較的低金利な中で、安定供給維持や成長への投資をしながら効率的に事業を続けていくためには、一定程度の借金も必要になってきます。この自己資本と借金の“ちょうどよくバランスする”水準が、現状ではだいたい25~30%と見ています。

 

 

──「ROIC」あまり見慣れない指標ですが、どういった指標なのでしょうか。また、「3.5%」という水準にはどのような意味があるのでしょうか。

 

 ROIC【Return on Invested Capital】は「投下資本利益率」と呼ばれ、出資や借入金などの事業のために調達した資金(=投下資本)を活用して、どれだけ効率的に利益を上げているか(価値を創造しているか)を測る指標です。最近では、目標として設定する企業も増えており、経済紙などで目にすることもあるかもしれません。

 当社のような電気事業者は発電所や送配電設備の建設のために多くの投資を行っており、株主からの出資金だけでなく、銀行などからの借入金も多くあります。こうして調達した資金を有効に活用しながら事業を行うため、調達資金全体に対する収益性を見ることが重要になります。特に、当社の場合、カーボンニュートラルへの対応や系統増強工事などのため今後も投下資本が増加傾向となることが見込まれており、いかに効率的にお金を使っていくかということは非常に大切です。

 「3.5%」という水準は、企業価値を向上させていけるよう、資金調達にかかるコスト(=資本コスト)を上回る水準として設定しています。「資本コスト」とは、当社に対して投資家が期待する配当や銀行などから求められる支払金利になります。ROICが資本コストを上回るということは、支払利息や株主から期待される配当を上回る利益を上げているということなので、企業価値は向上、逆にROICが資本コストを下回ると、企業価値は毀損するということになります。

 指標の説明を聞くと難しいもののようですが、ROICを改善するためには必要なことは、①利益を上げることと、②投資の効率化や取捨選択を図ることであり、特別なことを求めているわけではありません。どちらも日々の業務の延長線上にあり、DXなど新たな技術も取り入れながら、効率化や業務改善という、これまでの取り組みを積み重ねていくことが重要と考えています。

 

──キャッシュ配分について、成長への投資も重要である一方で、3兆円を超えて積み上がった有利子負債の削減も重要になってくると思いますが、このバランスはどのように考えているでしょうか。

 そのとおりで、金利の上昇も見込まれる中で利息負担が増えていくおそれもあり、有利子負債の削減については非常に重要な課題となっています。今後も一定規模の投資が必要となる中ではありますが、有利子負債をなるべく削減していかなければいけないと思っています。そのためには、利益を上げて、投資を支えるキャッシュを確保していくことが必要になります。「利益・投資・成長」の好循環を回して、2030年度に向けてさらなる利益向上を実現していくことで、有利子負債の削減にもつなげていきたいと考えています。

 

──今回新たにチャレンジングな財務目標を掲げましたが、その目標を達成した先に、何を目指すのでしょうか?

 「よりそうnext」で掲げたありたい姿や経営理念「地域社会との共栄」はこれまでと全く変わっていません。「よりそうnext+PLUS」で掲げた目標を達成することで、こういった経営理念のもとに、当社グループの成長だけでなく、地域・お客さまとの持続的な共栄にもつなげていくものと考えています。

 

 

──当社の大幅な赤字の原因はコロナ禍や自然災害、ウクライナ危機などの外部要因でした。規制料金のような硬直的な仕組みもある中で、「よりそうnext+PLUS」で掲げたありたい姿を目指していくために、社員が持つべきマインドはどのようなものでしょうか。

 コロナ禍や福島県沖地震、ウクライナ危機など1つ1つの出来事は確かに予想できない外部要因です。カーボンニュートラル潮流なども同じかもしれません。しかし、こういった事象の発生により、当社の事業は、社会・世界の動きや自然災害などと切り離せないものであるということにあらためて気づかされた面もあるのではないかな、と個人的には感じています。

 あまり大それたことは言えませんが、事業リスクや環境変化を、“外部要因だから仕方がない”ではなく、当社が置かれている事業環境として捉えて、変化に対応しながら、電力の安定供給やありたい姿を目指していくという心構えを持つことができれば良いのではないかな、と私としては思っています。

 

 

 

 下村主任、ありがとうございました。

 インタビューをまとめたポイントは以下の3つ。

  • 至近の課題は傷んだ財務基盤の回復
  • 2030年度に向けては、ありたい姿の実現のために、「利益・投資・成長」の好循環を目指していくこと
  • 目標の達成に向けて一人ひとりが効率化や業務改善といった取り組みを積み重ね、当社グループの成長だけでなく、地域・お客さまとの持続的な共栄にもつなげていくこと

 

 中長期ビジョンは「グループのありたい姿」や「それを実現する方向」を示しています。そのビジョンはグループという高い視座で語られるものですが、すべての職場、一人ひとりの日々の業務に繋がっています。ビジョンを自分ごととしてイメージするにあたって、前回と今回の記事がその補助線になれば幸いです。

 

(5月28日追記)「よりそうnext+PLUS」の解説動画が掲載されました

 グループ戦略部門による「よりそうnext+PLUS」の解説動画が掲載されました。
 TD・TN社員はこちらから(T-next)
 上記以外はこちらから(S-WING)

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