
制度見直しの背景・目的・方向性
先日、今後の経営展開として「よりそうnext+PLUS」が発表されました。経営基盤強化に向けて特に注力していく取り組みとして「CN(カーボンニュートラル)戦略」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」と並んで挙げられているのが「人財戦略」。
今回の見直しは「多様な人財が年齢や性別にかかわりなく、持てる力を最大限発揮し、働きがいを実感しながら活躍し続ける(人財next)」人事・賃金制度の構築を目指して行われたものです。
これは、事業環境の目まぐるしい変化に柔軟に対応しながら中長期ビジョンを実現し、持続的に企業価値を創造していくためには、若手からベテランまですべての従業員が成長への原動力を高めることが必要だという考えに立ったものです。
現状の人事・賃金制度は総合力の発揮や長期的な人財育成などにメリットがあり、電力供給事業に適していますが、前述のような状況を踏まえ、現行制度の良いところは生かしつつ、より多様性や働きがいを重視して、会社も、個人も、一緒に成長し続けられるような制度にする必要があり、今回の見直しに至っています。
新しい人事・賃金制度。何が変わるのか?
今回見直しされたポイントは大きく以下の3点です。順を追って解説します。
(1)多様性を生かし、成長を促す人事制度の構築
(2)役割・成果発揮と挑戦を促す評価・処遇制度の導入
(3)高齢者層雇用の見直し
【留意点】
■見直し内容は多岐にわたっています。
本記事での紹介は抜粋となりますので、詳細や各施策の実施時期についてはH.A.N.D.S.をご確認ください。
(1)多様性を生かし、成長を促す人事制度の構築
①等級構成の見直し
これまでの「C1→C2→E1→E2→M1(S1)→M2(S2)…」という職能等級構成を「C→E→M(S)」または「C→E→P(後述)」とし、大くくり化しました。合わせて各等級ごとのランク数が少なくなったことにより、若年層の早期育成や昇進機会の早期化などが図られています。
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等級構成の比較図。従来C2等級3ランクまであった在任年数による自動昇ランク制度はC等級6ランク(従来のC1等級6ランク相当)までとなる
②社員キャリアの複線化
「プロフェッショナルコース(Pコース)」が新設されました。
これはマネジメントコース(従来どおり管理職となるコース)とは異なり、専門性を高めて貢献していくことで、働きがいや成長・挑戦意欲の向上を図り、活躍を促進するために設けられたコースです。
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マネジメントコースとプロフェッショナルコースの関係図
また、本人の選択により勤務する地域を限定することが可能な「勤務地域限定コース(Lコース)」が新設されました。現行の「エリア勤務制度」では、育児や介護、治療といった事由がある場合に限り、勤務地を限定することが可能となっておりました。新設される「Lコース」のうち「レギュラータイプ」では、事由が無くても勤務地を限定することを可能としました。
③高度専門人材の処遇
高度専門スキル獲得に向けたモチベーション向上や自己啓発を含めた成長の加速化を目的として、「法的必置職位※1に就くの従業員」や「市場価値の高い専門スキル※2を持ち、特定の業務に従事している従業員」に対して、「スキル加算手当」を支給するものです。
※1:電気主任技術者、ボイラー・タービン主任技術者、ダム水路主任技術者
※2:トレーディング、IT導入開発・セキュリティ、スタートアップ、弁護士等に関する専門スキルなど
(2)役割・成果発揮と挑戦を促す評価・処遇制度の導入
①役割給の導入
管理職階層において、これまで以上に役割発揮と処遇を連動させることで、働きがいの実感を高めるとともに、さらなる自律的な役割発揮を促進することを目的に、「管理職手当」「専門指導職手当」「職能給」が廃止され、新たに役割や職務に応じた「役割給」が導入されます。
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役割が明確である管理職階層は、年功的要素の強い職能給を廃止し、役割変更や昇格・昇ランクによってのみ昇給する仕組みとなる
②ライフ・サポート手当の見直し
共働き世帯の増加等、制度設立当時からの変化を踏まえ、ライフ・サポート手当の支払対象となる扶養家族のうち、配偶者が対象外となる他、子女3人目以降の手当額が増額されます。配偶者の就労状況による賃金への影響がなくなり、その原資が職能ランクへ移行されることにより(③職能ランク給の見直し参照)、仕事と処遇の連動性が高まるとともに、子女3人目以降の手当額を増額していることから、子育て支援にもつながります。
③職能ランク給の見直し
等級構成の再編を踏まえて、職能ランク給の支払月額が見直されます。見直しにあたっては、ライフ・サポート手当の配偶者分を廃止した原資を移行することで、昇格・昇ランク時の昇給額が増額され、これまで以上に能力の向上が処遇に反映されます。
④昇給制度の見直し
毎年、算定することで変動していた業績昇給額をテーブル化し、E等級、C等級それぞれの評価区分の組み合わせごとに、業績昇給額を固定して明確化します。
⑤業績評価における評価区分の拡大
「S(抜群だった)」の上に「S+(特筆した成果をあげた)」が追加されます。あわせて「M(期待通りだった)」の下に「M’(期待を下回った)」が追加されます。これにより評価区分が2つ増え、「S+、S、A、G、M、M’、F」の7段階となります。
なお、「S+」と「M’」における業績昇給や退職給付評価ポイント上の取り扱いはそれぞれ「S」および「M」と同一です。
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⑥賞与配分構成の見直し
賞与に占める年功的・生活給的要素の割合は縮小され、能力給である職能ランク給および評価額の割合が拡大されます。
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⑦評価項目の見直し
業績評価シートにおいてこれまで「行動・取り組み姿勢」項目内の一部要素だった「チャレンジ」が単独項目に格上げされ、それに伴い配点も増加しています。
また、職能評価シートにおいてこれまで「課題対応力」項目内の一部要素だった「変革力」が単独項目に格上げされ、それに伴いM、S等級では配点が増加しています。
いずれも「チャレンジ」や「変革力」といった、中長期ビジョン実現のために重要な項目への取り組みがより重点的に評価される構成に見直されています。
※見直しに伴う移行措置
2024年9月末時点における制度移行前の基準労働賃金(職能給、職能ランク給、管理職手当、専門指導職手当、ライフ・サポート手当(S手当)および職能加算額)の合計額が、制度移行後(2024年10月時点)の基準労働賃金の合計額を上回る場合は、その差額を2029年9月30日まで「移行措置額」として支給します。
この移行措置額は、2024年10月1日以降、職能給、職能ランク給、役割給が、異動・職能評価・業績昇給・賃金改定等により昇給する場合、昇給前の移行措置額から昇給額を差し引いた額とし、昇給額が移行措置額を上回る場合には移行措置額を解消します。
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(3)高齢者層雇用の見直し
①再雇用の上限年齢の見直し
2033年度までに再雇用の上限年齢が現在の65歳から70歳まで段階的に引き上げられます。
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制度見直し前後の年齢によって極端な不公平感が生じないよう、上限年齢の引き上げは2年に1歳ずつ段階的に行われる(黄色箇所が退職するタイミング)
②「EXスタッフ」の新設
これまで認められていなかった「管理監督的業務」への従事が可能で、実際に管理監督的業務に就く場合は職位に応じた役割給(職務区分c~fの中で社員と同額)を支給するなど、再雇用者により一層の活躍を期待する雇用タイプとなっています。
③「Eスタッフ」の新設
「EXスタッフ」に対するもう一つの選択肢として今回新設されるのが「Eスタッフ」。
事由を問わず日数限定や短縮勤務といった働き方が選択でき、弾力的な勤務形態の中で、当社での仕事以外の時間を利用し、新たな自己実現や生きがいを創出することも期待できる勤務タイプとなっています。
以上、非常に多岐にわたる内容の見直しが行われます。
見直し内容に共通するのは、以前からの慣習的・画一的な雇用形態から脱却し、様々なスキルやバックボーンを持つ従業員がそれぞれの希望にあった働き方を自由に選択できるような環境整備が進められているということです。
また、賃金については、役割発揮や、仕事と処遇の連動性の向上を通じて、さらなる働きがいや挑戦意欲の向上を目的とした見直しとなっており、社内で果たしている役割や貢献度合い、成果の比重が高まりつつあります。
もう一つの大きな変化~社内サイドジョブ・チャレンジ制度(社内副業制度)~
東北電力および東北電力ネットワークは、2023年度から「社内サイドジョブ・チャレンジ制度(社内副業制度)」を導入しています。この制度は他の電力会社でも導入が進んでおり、東北電力グループ内では既にトインクスで導入実績のあるものです。
募集対象となる業務は、経営上の重要性が高く、緊急性のある特定課題の解決などを目的とした業務や、応募者のキャリア形成やスキルアップを目的とした業務。これらの業務に対して希望者は所属長と対話のうえ応募し、合格すれば所定労働時間の1~2割※で1年間を上限とした従事が可能となります。
※所定労働時間1割の場合・・・週4時間、月16時間程度

社内サイドジョブ・チャレンジ制度の詳細
(制度利用の流れ)
ニーズがある部門・室部は人財部へ連絡のうえ求人票と業務紹介資料を作成し人財部へ公募依頼を行います。その後、タレントパレットシステムを使用して募集(標準3週間程度)と応募が行われ、応募者の選考は公募箇所である部門・室部が主体となって実施します。最終的な合否決定は人財部長が行い、その後必要な手続きを経て副業開始となります。
本制度の目的は、多様な業務経験によりスキルアップや成長の機会を創出すること、やりがい・働きがいを実感できる社風を更に醸成すること。同じ社内公募制度でも「キャリアデザイン・チャレンジ制度」では異動により完全に業務が変化するのに対して、本制度では異動することなく、現在の職場に所属しながら業務時間の一部のみで従事するため、興味のある業務に対する適性有無の確認などにも適しています。
実際に社内サイドジョブ・チャレンジ制度を利用している方とその関係者にお話を伺いました。
①副業を募集した職場の声
DX推進部(DX推進) 池田 容子 専任課長
本間 靖朗 専任課長
- 池田専任課長
- 本間専任課長
──副業を募集したきっかけは何ですか。
DXを通じた課題解決においては、一人ひとりがDXに対する「自分ごと意識」をもってもらうことが大変重要です。様々な職場の方のリアルな視点や気づきをDX施策の企画段階から取り入れ、実施段階においては主管部とのを強力なパイプ役となって高いモチベーションでプロジェクトに参画し、後に職場の推進リーダーとして活躍できるメンバーを募りたいと考え、この制度を利用しました。(池田課長)
──実際に副業が始まって、どのような効果が出ていますか。
現場の知識や経験が豊富なメンバーがDX関連のデジタル技術を学びながらプロジェクトに入ることで課題設定の解像度が上がり、より業務実態に即した提案につながっています。また各主管部をパワフルに巻き込んでくれるので、プロジェクトの一体感も向上しています。部門横断的なプロジェクトが多いDX推進部では、この制度は非常に効果的だと感じます。副業者を出していただいた本業の職場の皆さんにはとても感謝しています。(池田課長)
──副業者に活躍してもらうために気を付けていることはありますか。
たくさん活躍してもらいたいのですが、副業に割ける時間は限られているので、定例的なミーティングは前月末までに予定を決めておく、業務調整が難しい場合は、Teams録画や資料共有、チャット等により内容を共有するなど、個々の場面で時間の有効活用を意識しています。副業者各人には、取組みたいテーマや活動を選別し、自身が関係する重要度の高い部分に限定して参加してもらうなど、プロジェクト運営の効率化も合わせて考えています。(本間課長)
──副業は1年間に限定されています。すこし先の話ですが、本業の職場に戻った副業者にはどのようなことを期待しますか。
せっかく本業の時間を割いて来てもらっているので、例えばローコード開発など獲得したスキルを用いて、自由な発想で身の回りの業務改善を助ける簡易なアプリを自ら作成し、職場の効率化に貢献できるような、現場のDXに明るい人財となって戻って欲しいと思っています。そのために副業者にはプロジェクトの参画だけでなく、DX推進部の若手メンバーや他の副業者と自由なワーキング活動を通じてコネクションを広げ、様々なイノベーションに挑戦していくことを期待しています。(本間課長)
②実際に副業をしている社員の声
水力部(水力土木)金子 克博 主任

屋内球体型ドローン(ELIOS3)を手に持つ金子主任
──副業へ応募しようと思ったのはなぜですか。
水力部門では土木業務のデジタル関係業務※を担当していたのですが、 DXに関する技術的な疑問は部門内ではなかなか解決できないという悩みがありました。そんな時にDXに関係する副業の募集があり、これなら自分の知見が広げられる、と思って応募しました。また他部門のDX施策を詳しく知ることで水力部の業務に反映できるかもしれないと思ったことに加え、逆に水力部のDX施策を社内に広く知ってもらえるかもしれないという期待もありました。
※ドローン等を活用した点検業務のDX、業務書類のデジタル化、設備書類を格納するシステムの更新など
──副業先ではどのような業務を行っていますか。
土木建築部の設備工事や点検の効率化に生成AIを使用するというプロジェクトがあるのですが、私は設備管理業務の関係者としてそこに参画しています。
加えて、設計図や工事記録を恒久的に保存するための文書管理システムの構築に取り組んでいます。水力部では100年を超えて運用する設備が珍しくなく、関係する文書の効率的な長期保管が課題となっています。
またDXに関する関係室部やグループ会社間の情報共有を図るため、DX交流会を実施したりもしています。

交流会の様子(東日本テクノサーベイによる屋内球体型ドローンのデモンストレーション)
──本業との兼ね合いはうまくいっていますか。
はい。とはいっても私の場合、水力部での本業は「DX推進部寄りの業務」、DX推進部での副業は「設備部門寄りの業務」なので、業務内容的にはやや地続きのような感じです。本業と副業は時間で区切り、メリハリを付けて業務をするようにしています。
③本業の職場の声
水力部(水力土木)清野 則和 課長

──金子さんから「副業へ応募する」と聞いた時の受け取めを教えてください。
まずは本人のスキルアップになると思い、応援しました。また、DXに関する専門的な知見や他部門の取り組み内容が金子さんを通じて部門内に展開されることへの期待もありました。
──労務管理や評価等は本業先が行うことになっていますが、どのように管理していますか。
副業を実施した日付や時間、それに取り組んだ内容について、金子さんから随時報告を受けて管理しています。もちろん副業の分だけ本業の時間が減ることにはなりますが、本業と副業の業務には共通する部分が多く、副業をすることで本業が進展するというような側面もあると思うので、前向きに受け止めています。
(人財部 竜沢 歩さんよりメッセージ)
社内サイドジョブ・チャレンジ制度は多様な人財の活躍を後押しする、中長期ビジョン実現のための重要な制度と考えています。
自分の職場のためだけでなく、他の職場や業務にチャレンジしてみたい社員の挑戦を実現する意味でも、多くの部門・室部からの積極的な募集をお待ちしております!
不明な点や不安な部分があればお気軽にご相談ください。