育休2カ月、同時に3人~その時現場はどうしたか~

 男性社員の育児休職取得率は年々向上していますが、1つの事業所で3人が同時に取得するのは非常にレアなケース。限られた人員の中で職場はどのように業務を進めたのか、取得者の育休を終えての想いなどを、関係者にインタビューしました。

先送りできる業務を見極めて対応

塩釜電力センター配電工事課では3名が昨年育児休職を取得しました。

 

 

 育休を取得した3名とその職場の皆さんに当時のお話を伺いました。

 

──3人の育休期間がほぼ2カ月重なっているのも特徴的ですが、なんと利彦さんと璃空さんにいたっては全く同じ日程ですね。

利彦さん:我々はそもそも子どもの出産予定日(8/4)が一緒だったんです。

璃空さん:課長には「時期をずらせないか」と言われたんですけど、こればっかりはどうしようもなくて(笑)

 

──配電工事課における普段の業務分担を教えてください。

及川さん:窓口作業や新増設調査、お客さまからの問い合わせ対応などの日々発生する業務については配電工事課を北・中・南の3チームに分けて、それぞれのチームで対応を行っています。今回の育休取得者でいうと利彦さんと阿部さんが北チームで、璃空さんは中チームに所属しています。

 

配電工事課の執務室。手前の島から北チーム・中チーム・南チーム

 

──3人が育休期間に入っている間は、どのような業務調整を行ったのでしょうか。

今野副長:最優先の対応が求められる応需工事※関係の業務やお客さま対応を遅れなく行う体制を確保するため、各チームの配電主査にはグループ内での日々の細かな業務調整の協力をお願いして、必要に応じてグループ間でも応援を行いました。今回は育休の話が出たのがちょうど定期異動の前だったので、3人が育休に入ることを踏まえた業務分担を組めたのもよかったですね。

相澤さん:業務負担の高いアセットマネジメント(経年劣化による設備取替工事)の設計業務も一時的に先送りにしたこともうまく進められた要因の一つだと思います。

※お客さま申込みに伴う低高圧の供給工事や電柱の支障移転等に関する工事など。

 

──3人が育休を取っていた期間、実際の業務ボリュームの増加はどのぐらいでしたか。

及川さん:新増設調査など期日指定でやらなければならない業務は前日のうちに翌日の件数や作業量を確認して必要な人数を割り当てるようにしていたので、回らなくなるということはありませんでした。内勤者の数も育休者の分だけ減ることになりましたが、負担が大きく増加しないよう対応すべき業務を限定することにしました。

 

──及川さんが塩釜電力センター配電工事課に異動してきたのは3名が育休に入る直前ですよね。知った時はどう思いましたか。

及川さん:正直びっくりしました(笑)すごくチャレンジングな取り組みで、業務運営がどうなることかと思いましたが、終わってみるとなんとかできたなと。

 

──停電など、万が一の場合の体制はどうだったんでしょうか。

今野副長:当直明けなどの関係もあり呼び出し対象となる人数は元々それほど多くなかったところに、さらに若手の中核3名がいないという状況は、正直言うと余裕はなく、かなりタイトでした。

 

──実際に事故はあったのでしょうか。

及川さん:はい、3フィーダー(再閉路1、永久事故2)が関係する落雷事故が発生しました。

利彦さん:そのとき私は大崎市の自宅にいたのですが、雷雲がどんどん電力センターの方に流れていったので、「事故になるのではないか」と心配したのを覚えています。

阿部さん:家で停電情報のスマートフォンアプリを開き、停電戸数を見ながら「参加できず申し訳ないなぁ」と思っていましたね。

 

──当直や指定勤務にも影響があったのではないでしょうか。

及川さん:事業所として相応の人数がいたため「人数が足りなくなって回せなくなる」ということまではさすがになかったのですが、当直や指定勤務の番が回ってくるサイクルが早くなりました。家族も気づいたみたいで「あれ?また当直?」なんて言われたり(笑)

 

──先送りした業務は復職明けに解消ということなりますが、業務のボリューム増はどのぐらいでしたか。

利彦さん:課長には「復職直後は頑張りすぎるなよ」と言われたものの、積み上げた件数を見ながら、計画的に解消していきました。それでも「ものすごく忙しい」という感じにはならなかったですね。

今野副長:結果論ですが、育休の取得が夏の時期ということもあって、業務スケジュール上案件があまり混み合わず、積み上げが極端に増えなくて済んだということもあると思います。

 

佐藤利彦さん

 

育休に思うこと

──実際に育休を取ってどうでしたか。

利彦さん:第3子にして初めて育休を取ったのですが、新生児の時に育児に携わることができたのは大きかったと思います。

璃空さん:私は今回生まれた子が第1子で、私の出身が福島、妻の出身が秋田で家が多賀城にあるためどちらの両親も頼りづらい状況でした。私が育休を取れたことで妻の精神的負担が減って良かったと思います。

阿部さん:第2子にして初めての育休でしたが、上の子(1歳)がイヤイヤ期だったので妻一人では厳しかったと思います。また育休期間を通じて「ずっと家にいる辛さ」のようなものも感じて、妻をねぎらう気持ちが強くなりました。

 

──社内における育休の取得率は年々上がってきていますが、今回は全員が初めての育休だったんですね。

阿部さん:今回は2人目だったということもありますが、以前はなかなか育休取得に踏み切れなかったところがありました。今回快く送り出していただいた周囲の方々には感謝しています。

璃空さん:課長に「育休は取らないの?」と聞いてもらったことで、取得に向けて前向きに家族と相談しやすかったです。今思うと職場にひとりだけの対象者だったら、もしかしたら少し言い出しにくかったかもしれません。3人一緒だったことでかえって言いやすかったのかも(笑)

──これから育休を取ろうとしている社員、あるいはその職場に対してメッセージはありますか。

今野副長:育休の取得者がいる場合、臨機に業務の繰り延べや調整ができるよう、裕度をもった計画・運営が可能な体制づくりが望ましいのはもちろんですが、普段から業務が属人化しないようにしておくことが何より大事だと思いますね。

相澤さん:職場に戻ってきた3人がすごくイキイキとしていたのが印象的でした。私は育休を取らなかったのですが、やはり妻から取得してほしかったと言われることもありますし、これからの人たちは是非取ってほしいと思います。

及川さん:今度は隣の配電管理課で2名が育休を取得する予定だと聞いています。育休を取ることがスタンダードになってきていると感じます。

相澤さん:先日つい「(育休は)取るんだよね?」と聞いてしまいました(笑)この流れがぜひ続いて欲しいですね。

 

 

記者の視点から

 男性社員の育休取得率に対する社会の注目度は高く、上場企業では2023年度から有価証券報告書への記載が義務付けられています。

 東北電力グループでは育休を取得しやすい雰囲気づくりに努め、「育休が当たり前の職場」を目指して取り組んでいくこととしています。しかし、そうはいっても突発的かつ待ったなしの業務対応が日々発生するのがインフラの現場。「同じ事業所で3名が同時に育休を取得した」と聞けば、果たして現場はどのような状況になったのだろうかと思いましたが、今回お話を聞いた塩釜電力センターでは思い切った割り切りで積極的にリソースを配分し、大きな混乱なく育休期間を乗り切っていました。

 

 今回取材をしていて特に印象的だったのは、育休を取らなかった先輩世代が今回の経験を通じて、「育休を受け入れる人」から「育休を積極的に勧める人」になっていたこと。育休明けの3名の輝きぶりを物語っているようでした。(佐々木)

 

 

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