
永井取締役の主な経歴
2011年4月 株式会社みずほコーポレート銀行取締役副頭取
2013年5月 新日鉄興和不動産株式会社副社長執行役員
2013年6月 同社取締役副社長
2014年6月 同社代表取締役社長
2019年4月 日鉄興和不動産株式会社取締役相談役
2019年6月 株式会社岡三証券グループ社外取締役監査等委員
2020年6月 日本水産株式会社社外取締役
2021年6月 東北電力株式会社取締役(現在にいたる)
2021年6月 株式会社オオバ社外取締役(現在にいたる)
これまでご縁のなかった東北・新潟からの誘い
──東北電力の社外取締役を打診された時のお気持ちと、東北・新潟地域へのイメージを教えてください。
これまで東北・新潟地域とはご縁がなかったのですが、広くて自然豊かというイメージがありますし、職場で関わった東北出身者は粘り強く、頑張り屋の方が多かった印象があります。そして何より東日本大震災と、そこからひたむきに復興する姿が、私の中での東北のイメージとして最も強いです。社外取締役にというお話をいただいたときは、こうした東北地域と関わることができるということで非常に嬉しかったですし、何かを感じ取りたいとワクワクもしました。
──東北電力や東北電力グループへの印象はどうですか。
社外取締役に就任が決まってすぐに、銀行の先輩から「これを読んでおけ」と「電力と震災」※を渡されました。そこでは創業以来脈々と続く東北電力のDNAと震災への対応が紹介されていて、地域の電力会社としての高い使命感に身が引き締まる思いがしました。震災以降さまざまなことがあって厳しい世論を受けることも増えたからでしょうか、今の東北電力グループは対外的に少し遠慮しているのかなと感じることもあります。地域を託された電力のプロとしてもっともっと自信をもっていいのではないかと感じています。
※東日本大震災を乗り越えた東北電力の姿を描いた、作家町田徹氏によるノンフィクション。2014年発売

みずほ銀行での過酷な経験。営業は「YESから入れ」をモットーに
──みずほ銀行でのご経験の中で印象に残っていることを教えてください。
今になって思い出されるのは残念ながら華々しい業務やプロジェクトではなく、社会から厳しい声をいただきながら何とか乗り越えたような出来事ですね。その中でも特に印象に残っているのは2002年にみずほ銀行合併初日に発生したシステム障害。普段の企業間の送金処理では当然お客さまの口座残高を元に処理を行いますが、システム障害で口座残高が分からない状態になりました。しかしながらお客さまからの申込通りに相手口座に送金しなければ、社会の混乱が一層悪化してしまう。こうした窮地に対して、当時、業務推進部の副部長だった私が最終手段として提案したのは、「仮払い」といって銀行が資金を立て替えて送金する方法でした。前代未聞の金額、また確実に回収できる保証もない中、覚悟を決めて実行を承認してくれた役員、そしてぎりぎりの状況の中でもやるべきことを自ら考え決して逃げることなく率先して行動してくれた部下には今でも感謝しています。
私は東北電力グループの社員が使命感を原動力に頑張っている姿にとても感銘を受けるのですが、これは自分の過去の経験と重ねてシンパシー(共感)を感じているからかもしれません。
もう一つ印象に残っているのは企業再建の現場です。倒産寸前の会社に対して、何とか支援しようとするのですが、そこには当然リストラがつきものですので、会社とは激しいやり取りがありました。
苦境を乗り越えられる会社に共通する点として私が思うのは、「現場と経営が理解しあって一枚岩になれること」、「なすべきことを具体的に決められること」、「明確な時間軸を持っていること」そして「現場が主体的に動けること」。どれも当たり前と思うかもしれませんが、いざとなると実はこれが案外難しい。お互いに必死で議論しなんとか知恵を出していこうと考えているうちに、いつの間にかお取引先と同じ船に乗りやっとの思いで乗り切っていく。今となって思えばお互いの使命感と信頼感だったのかもしれませんね。
東北電力グループのスローガン「より、そう、ちから。」にも通じるものがあるように思います。私は初めて見たときにこのシンプルなスローガンが自分の会社員人生と重なって「これだ!」と思いました。もっと早い時期にこの言葉を知りたかったですね。沢山の後輩にこの言葉を教えたと思います。ひらがなでやさしい表現なのも温かみがあってジーンときます。

──銀行では法人営業に携わられていた期間が長いとお聞きしました。営業をする際のモットーなどがありましたら教えてください。
「お客さまからの要望にはYESから入れ」ということですね。「持ち帰って検討を…」となると話が終わってしまう。どうしてもYESと言えないときは「知恵を出してみます」でもいいので、とにかくNOと言わないことが大事です。そしてお客さまと同じ方向を向いて、七転八倒しながらでもとにかくお客さまの力になること。これは全て相手の言いなりになるということではなく、相手が困っているときに力を貸して、自分が困っているときは力を貸してもらう。そういった関係を目指すということですね。
東北電力の場合でいうと昨年度の料金の値上げ・値戻しは本当に大変だったと思います。こうしたつらい環境の中、現場の皆さんには本当に底力を発揮いただいたと思います。とても評価しています。ただ、現場の皆さんの中にはお客さまが離れていかないかと心配される方も少なからずおられると思います。だからこそお客さまと同じ方向をみて、電力のプロとしてもっともっと知恵を出して、お客さまに役立つ様々な提案を繰り返していってほしいと思います。
──日鉄興和不動産では代表取締役社長をされていました。社員とのコミュニケーションで心がけていたことはありますか。
社長時代は、社員が自立しながら自由闊達なコミュニケーションの中で成長してもらいたいと思い、旧態依然とした会議、報・連・相、ルーティン業務を徹底的に見直してもらいました。新本社ビルへの移転を契機に、物理的にも会議室を極力なくし、役員の個室も廃止し、社長室もガラス張りとするなどいろいろな工夫もしました。本社に在籍する社員は500人くらいでしたが思い切って社員食堂を作って、昼にはそこに行って社員の名前を一生懸命に憶えて話しかけるようにしていました。社員一人ひとりから今取り組んでいることや困りごとを直接聞くと、社内で進行しているプロジェクトの裏側や問題点が見えてきたりします。もっとも社員同士が食べているところに社長が割って入っていくものですから、なかなかいい顔はされませんでしたが(笑)
- 新本社ビルの内装
- 年度初めの挨拶にて
東北電力グループに思うこと、社員へのメッセージ
──当社グループの強みや魅力をあげていただくとしたら、どのようなところでしょうか。
まず、地域から絶大な信頼を寄せられているということです。そして、誠実に真剣に仕事に取り組む、高い志を持った人がたくさんいること。この二つには自信と誇りを持ってほしい。
さらに東北電力が特別だと思うのは「入社した時の思いや使命感」と「会社の経営理念」、そして「地域から期待されていること」がかなりの部分で一致しているということです。こういう会社は世の中にはなかなかありませんし、すごく幸せなことだと思います。
──電力業界は大きな転換期にあります。次々に制度改革が行われており、ともすればグループ内に遠心力が働きかねないと感じる時もあります。
各セクション同士がそれぞれの最適化に走ってしまった結果として全体最適が損なわれる、ということは電力業界に限らず様々なところであります。金融業界もバブル崩壊、金融制度改革、マスコミにもたたかれ、特に若い人は自信を失っていたような時期もありましたが、東北電力グループの場合もこうした国の制度改革が「グループ一丸」といった風土に悪い影響を与えないか心配しています。
私も東北電力グループの様々な現場を視察させていただくことがありますが、行為規制を始めとする各種のルールに抵触しないように社員の皆さんは繊細に気を使っていて、正直なところやりにくそうに見える時もあります。しかし組織がバラバラになってしまうと、これは競争相手にとって思う壺です。ルールの主旨や線引きは正しく理解した上で、それ以外のことはしっかりと協調して総合力を発揮するんだという意識を定着させることが重要だと思っています。

──「よりそうnext+PLUS」では東北電力グループの今後の経営展開が示されました。どのように見ておられますか。
今回大きなポイントだと私が思っているのは「利益を生み出し、それを投資することで未来の成長につなげる」ということをはっきりと明記したことです。安定供給と脱炭素を両立していく、即ち当社がその存在意義を果たすためには、まず強くなければいけません。これは必要条件です。もっとも強いだけでは不十分で、「強くてよい会社」であることも重要です。良い会社とは、お客さまや地域にしっかりとよりそえること、そして社員にとっても働いていて楽しくやりがいのある職場であることだと思います。
──最後に、社員にメッセージをお願いします。
東北電力グループに寄せられている絶大な信頼感、そしてこれに応える使命感。これらを維持し続けることは簡単なことではありませんが、それこそが東北電力グループの存在意義だといっても過言ではないと思っています。
「やるときはやる」の気概を大切に、いざという時に逃げずに力になれる人間であって欲しいです。こうして頼りになる皆さんが、それぞれに120%の力を発揮できる職場風土を築きながら、グループ一丸となって決して立ち止まることなく前進することを期待しています。「強くてよい会社」を目指して共に頑張りましょう。

【バックナンバーは以下リンクから】
川野邊社外取締役インタビュー ~失敗を恐れずチャレンジしよう~
植原社外取締役インタビュー ~どんな場面でも、「想像力」を大切に~
宮原社外取締役インタビュー ~地域に根差して、これまでも、これからも~